日産「GT-R」の2024年モデルが登場した。一昨年あたりは「車外騒音の規制をクリアできず、2022年モデルで終焉(しゅうえん)を迎える」という噂が絶えなかったが、晴れて命脈はつながった。
世界的にも有名なスポーツカーの日本代表は今年でデビュー17年目。一般的なクルマが7~8年でフルモデルチェンジすることを考えれば、GT-Rは結構な古株だ。だがその分リファインは進んでおり、メイドインジャパンであることをファンは好意的に捉えているようだ。
2024年モデルのラインアップは、ベーシックモデルである「GT-Rピュアエディション」から、サーキット専用車のような「GT-R NISMOスペシャルエディション」まで全8モデル。車両価格帯は1375万円から2915万円と日本車離れした設定だが、それでも予約注文があっという間に終了してしまうほど人気がある。
今回試乗したモデルは「GT-RプレミアムエディションT-spec」。ミレニアムジェイドと呼ばれるスモーキーなグリーンメタリックのボディと、濃いグリーン色の革張りになっているシートとのマッチングで、シックな印象にまとめられている。クルマをカスタムして遊びたいスピード派より、分別をわきまえた紳士に似合いそうな色合いだ。
スタイルはフロントマスクですぐに2024年モデルだと分かる。バンパーと一体型だった大きなグリルは上下2つに分割され、左右に7ドットの新しいデイタイムライトを採用した。リアバンパーもワイドでエッジが立った今どきの形状に変更。デビュー以来ずっと同じ形状だったリアスポイラーも、新しいシルエットに生まれ変わった。
570psを発揮する3.8リッター、V6ツインターボエンジンは、アクセルを踏み込むとすぐに排気音が抑えられていることが分かった。これこそまさに2024年モデルの勘所である新型マフラーの効果だ。これまでの刺激的な排気音を補うため、スピーカーから音を出して盛っている点は昨今のスポーツモデルの常識ともいえるギミック。「いかにも」音を作ったと感じるモデルもあるが、GT-Rの音質はナチュラルな部類に入る。
コクピットの印象は昔から変わっていない。メーター類が液晶で表示されるのが一般的になった昨今、あえてアナログのまま。物理スイッチも色々な場所に散らばっているのだが、古さよりGT-Rらしさ、伝統工芸品のような作り込みの良さを感じさせてくれる点が、2024年モデルの美点といえるだろう。
デビュー当時では新しかったDCT(デュアルクラッチトランスミッション)を、トランスアクスル方式(ギアボックスをエンジンの直後ではなく、リアアクスルの直前に置き前後重量配分を均一に近づける)で搭載しているため、走りの面でも新鮮さは健在。山道では570psというパワーをフルに使えているという実感も味わえる。また静粛性が向上したことで、より上質に、速くなったように感じられるのも特徴といえる。
サスペンションは明らかに硬質で、まるでサイボーグを操っているようなGT-Rらしさにつながっているのだが、ダンパーが微細な領域からしっかりと仕事をしてくれているので乗り心地は不快ではない。そういった細かな感触を探りながらドライブしていると、フルモデルチェンジを繰り返すことだけが良いクルマを作る方法ではない、ということがはっきりと分かってきた。
スーパーカー並みのポテンシャルを備えながら、リアトランクにキャディバッグが2本載ることもGT-Rの伝統的な価値といえる。素性の良さに熟成が加わったことで、いよいよクルマ好きゴルファーが無視できない一台になってきた。
日産 GT-R プレミアムエディション T-spec 車両本体価格: 1896万円~(税込)
Text : Takuo Yoshida