全国にまたがる犯罪の拠点が沖縄にあったことに衝撃を受けた。地域の安心安全を脅かす「ヤミ金グループ」がどのように結成され、被害を広げてきたのか。全容解明を急いでほしい。
沖縄署は出資法違反(高金利)の疑いで、沖縄市の建築作業員ら県内に住む20~50代の男9人を逮捕した。
逮捕容疑は2021~23年の間、共謀の上、県内の30~60代の債務者4人に対して、計11回にわたり法定金利の6倍以上で現金を貸し付け違法な利息を得た疑い。
逮捕された9人はヤミ金グループに所属していた。全国に600人以上の債務者がおり、貸し付けは約4200件で延べ4億円に上るとみられる。県警は130人態勢の合同捜査本部を設置した。
捜査本部によると、9人は互いの素性を知らず偽名で呼び合っていた。交流サイト(SNS)上で「お金を貸します」などと募り、債務者を増やしていた。
匿名性が高く、緩やかな結び付きで離合集散を繰り返す犯罪集団は「匿名・流動型犯罪グループ(通称トクリュウ)」と呼ばれる。
警察庁が昨年、明確な組織性を持たない犯罪グループとして位置付け、対策に乗り出している。指示役の特定が難しく、グループの実態がつかみづらいのが特徴だ。
今回の指示役はカンボジアに滞在しているとみられており、国境を越えた犯罪の恐れもある。暴力団組織の関与も浮上しており、金が何に使われたのかなど徹底した捜査を望みたい。
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県内のメンバー9人は本島中部の2拠点で活動していた。うち北中城村の民家では昨年、県警の特殊犯捜査班(SIT)の家宅捜索が行われ、携帯電話67台や債務者リストなど約90点を押収した。
返済が滞ると執拗(しつよう)に電話をかけ「強盗して返済しろ」と迫っていたという。返済できない債務者には「闇バイト」をあっせんし、別の債務者の返済金の「出し子」として活動させてもいた。
債務者を末端役にすることでグループを秘匿化し、摘発から逃れていた可能性がある。債務者も加害者となることで、警察に相談しにくい状況がつくられていた。
契約時にはSNS上で電話番号や住所、家族構成などあらゆる個人情報を提供させられ、返済を催促する電話は近所の住人や子どもの学校にまでかかってきたという。
困窮者をターゲットにし、地域や親族間のつながりを悪用して返済を強要するなど沖縄社会の事情につけ込んだ犯罪とも言える。
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県内では19年から3年連続でヤミ金相談が増加している。県警に寄せられた相談は22年、前年比12%多い345件に上った。
ヤミ金を利用する債務者の多くは、多重債務に陥っている。その日の生活費にも困っている人は、危険だと思っていてもこうした犯罪から距離を置くことは難しい。
犯罪被害者を増やさないために、そこに至るまでの相談窓口など行政の対応も重要だ。