手元に置く本を厳選したいと思うようになり、図書館をよく使うようになりました。
予約本は、最寄りの公民館で受け取れると知って、すっかり図書館に詳しい気になっていましたが、ひも解いてみると知らないことばかり。
図書館がどんな役割を担ってくれているのかを知って、「本を借りる場所」でしかなかった図書館が、つい足を運びたくなる場所に変わりました。
資料の種類だけでなく、図書館のサービスやイベントにも注目して、倉敷市立中央図書館について紹介します。
倉敷市立図書館
倉敷市内に、いくつ図書館があるか知っていますか。
正解は6館。倉敷(中央)、水島、玉島、児島、真備、船穂の各地区に1館ずつあります。
ライフパーク倉敷の図書室を入れると7館。
公民館にもそれぞれ図書室があって貸出しもできますし、Webなどで予約した本も受け取れます。
移動図書館が巡回するステーションや配本施設も合わせると、たくさんの市民が手軽に本と出会えるようになっています。
倉敷の図書館 ~ 図書館の機能と役割
「図書館は何をする場所ですか」と聞かれたら、どんな答えが思い浮かぶでしょうか。
「本を探す、借りる」「調べものをする」などが思い浮かぶかもしれません。
図書館のおもな機能や役割をまとめました。
- 貸出サービス
- レファレンスサービス
- 相互貸借(そうごたいしゃく)
- 移動図書館・公民館図書室での貸出サービス
- 児童サービス
- 障がい者サービス
貸出サービス
倉敷市立図書館の資料を倉敷市内に住んでいる人、市内に通勤・通学している人に、貸出しています。
また、「高梁川流域7市3町広域利用サービス」により、圏域内の公立図書館での貸出も可能です。(詳しくは、倉敷市立図書館ホームページ(PC版)>高梁川7市3町広域利用 をご覧ください)
レファレンスサービス
レファレンスサービスとは、「調べもののお手伝い」です。
「探している資料がどの図書館にあるか」や「調べたいテーマの参考になる資料の紹介」などの相談が可能です。
蔵書管理
市内の図書館に所蔵・保存している資料は、選書や除籍などの蔵書管理が随時おこなわれています。
新しく図書館に所蔵する資料を選ぶ「選書」、内容が古くなった資料・状態が悪くなった資料などを図書館の蔵書から除く「除籍」は、それぞれに設けられた基準に沿っておこなわれ、日々、館内の資料が整理されています。
図書館で役目を終えた本の無償譲渡会(リサイクル本会)
倉敷市では、除籍基準や除籍資料の無償譲渡実施細則をもとに「リサイクル本会」が開かれます。
開催時期などの詳細は、倉敷市立図書館ホームページもしくはX(旧Twitter)の公式アカウントなどで確認してください。
※選書基準、除籍基準、無償譲渡会実施細則は、倉敷市立図書館ホームページ内の「市立図書館について」に掲載されています。
相互貸借(そうごたいしゃく)
相互貸借は、図書館同士の資料の貸し借りのことです。
倉敷市立図書館で所蔵していない本でも、全国の図書館から可能な限り取り寄せし、用意するよう努めています。
移動図書館
移動図書館とは、図書館から遠い地域や施設に巡回サービスをおこなうものです。
倉敷市立図書館には、3台の移動図書館車があり、定期的に市内のステーションを巡回しています。
普段はおもに貸出サービスの利用が多い筆者。借りたいときに借りたい本が借りられる背景には、貸出サービス以外の役割や機能があると、あらためて気づかされます。
少し視点を変えるだけで、資料の種類も内容もさまざまなものがあることにも気がつきました。
読書が難しい人たちも ~ 誰もが読書をできる社会を目指して
倉敷市立図書館の運営基本方針では、図書館の利用者を「幼児から高齢者まで、すべての人々」としています。
すべての人々のための資料とは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
調べるうちに、2019年(令和元年)6月に成立した読書バリアフリー法という法律を見つけました。
障害の有無に関わらず、すべての人が読書による文字・活字文化の恩恵を受けられるようにするための法律です。
さまざまな障害のある方が、利用しやすい形式で本の内容にアクセスできるようにすることを目指しています。
法律をわかりやすくまとめた啓発用リーフレットのなかに、図書館で利用できるさまざまな本が紹介されていました。
- 「漢字が苦手」
- 「文字を目で追いづらい」
- 「ページをめくれない」など
「すべての人々」には、読書が難しい人たちも含まれているとわかりました。「読書が難しい」といっても、背景にはいろいろな事情がかくれています。
それぞれの事情に沿った読書スタイルを提供するために、紙媒体にとどまらない実に多様なツールが図書館には用意されています。
倉敷市立図書館6館のうちの一つ、倉敷市立中央図書館(以下、「中央図書館」)で、図書館の日常について教えてもらいました。
本と人をつなぐために ~ 倉敷市立中央図書館の紹介
中央図書館は、1946年(昭和21年)10月に岡山県立倉敷図書館として開館。
1983年(昭和58年)11月3日に倉敷市中央へ移転し、現在の名称になりました。
2024年(令和6年)年11月には開館から78年、移転してから41年を迎えます。
中央図書館で、その役割や機能を支える図書館司書のみなさんに話を聞きました。
仕掛けづくり ~ 通いたくなる図書館に
取材日は、館内整理日(休館日)でした。普段はカウンターに人がいますが、この日はほぼ無人。
その代わり、館内のあちこちでたくさんの職員が働く姿が見られます。
──休館日の図書館に入るのは初めてです。
開館日にもこのくらいの人数で働かれているんでしょうか。
図書館司書のみなさん(以下、「スタッフ」)──
そうですね。開館時間が長いことと、土日や祝日も開館しているため、働く時間をずらしたり、交替で出勤しています。
そのため、開館日は今日より少ない人数で働いています。
今日は閉館日で勤務時間をずらす必要がなく、ほぼ全員がいるため、多く見えるのだと思います。
──図書館司書の仕事について教えてください。
スタッフ──
貸出サービス以外に、調査・研究・調べもののお手伝いをするレファレンスサービスや「選書」といって、新しく出版された本や、寄贈された本のなかから本を選ぶ作業や、今の時代に合わなくなって内容が古くなってしまった本を本棚から抜く「除籍」という作業があります。
予約された本の準備や市内の図書館・他施設への資料の搬送作業、移動図書館車の運行などは、利用者のかたからは見えにくい仕事かもしれません。
──そのほか、イベントや行事などについて教えてください。
スタッフ──
こどもしつでの絵本の読み聞かせは、毎日実施しており、職員やボランティアのかたによる、定例行事も毎月行っています。
また、夏祭りやクリスマス会、講師のかたを迎えての科学遊びや工作、わらべうたなどの行事も、季節などに合わせて実施しております。
スタッフ──
そのほかにも、本の「請求記号」を使って、楽しくさまざまなジャンルの本を読むことにつなげた「読んでBINGO!」や、毎年年始恒例の「本の福袋(貸し出し用)」、2023年度(令和5年度)で3回目となった「くらしき子ども司書」、図書館に関する問題や児童書を題材にしたクイズを解く「図書館ナゾトキ」、「こどもの本クイズ」などもおこなっています。
請求記号とは
本の背表紙に貼ってあるラベルに記載された記号と番号などのこと。
──子ども司書ですか。
スタッフ──
はい。小中学生くらいの頃って、親よりも友達から勧められた本を読むことが増えると思うんです。
そこで、同年代の子どもたちに読書の楽しさや図書館の上手な使い方を伝えてくれる、読書活動の推進役にと「くらしき子ども司書」をつくりました。
図書館の役割や利用方法、本の並べ方など、図書館・本の基本的な知識を学んだうえで、カウンターでの貸出など、実際に司書の仕事も体験してもらいます。
図書館で企画する子ども司書講座やイベントに参加してスタンプをためると、初級・中級・上級とランクアップしていく仕組みにしています。
スタッフ──
今年度(令和5年度)は、絵本の読み聞かせについて学び、実際に「おはなし会」をしてもらったり、また図書館の本にはブックコートがかかっているんですが、自分の本にブックコートをかけてもらったりもしました。
あとは、本屋さんでよく見る、本の紹介文を書いたポップを書いてもらったことも。
本や図書館に興味を持つきっかけになってくれたらいいなぁと思って、企画を考えています。
倉敷市立図書館ホームページやX(旧Twitter)などでイベントを紹介しているので、ぜひ確認してみてください。
「こどもしつ」のイベント情報
「倉敷市立図書館ホームページ(PC版) 図書館サービス こどもページ」もしくは、「倉敷市立図書館ホームページ(PC版)>各図書館の写真をクリック>イベント案内」から、各図書館のおはなし会や行事のお知らせが見られます。
──そういう意味では、一般室にあるいろいろなジャンルの特設コーナーも、普段はふれない本を見かけるきっかけになっていると感じています。とはいえ、コーナーをつくるのって大変じゃありませんか。
スタッフ──
それはすごくがんばっています(笑)。
今日(取材日)もちょうど、館内整理や模様替えをしています。
大きくは、1か月に1回ですが、時事を取り入れたり、とくに著名な作家さんの受賞や訃報(ふほう)などの情報でコーナーをつくったりもします。
元号が変わったときには、もとになった古典について取り扱ったり、大河ドラマのコーナーをつくったり、「〇〇の日」でつくることもありますし、語呂合わせでつくることもあるんです。
──時事に疎いので、図書館のコーナーを見て、察知したこともありました。
スタッフ──
本の背だけ並んでいるところからは探しにくかったり、何を借りたらいいかわからないという利用者の声をいただくこともあります。
わたしたちとしても、本当はしっかり表紙を見ていただきたい思いもあります。とくに絵本なんかは、そうですね。
「探す」から「出会う」へ
──最後に、図書館司書として、本や図書館への思いなどを教えてください。
スタッフ──
図書館司書は、市内の図書館内で異動して働くこともありますが、施設が変わっても、今後図書館の場所が変わっても、やっぱり図書館の役割は、本と人をつなぐ場所なのは変わりがないと思います。
そこを忘れず、おざなりにならないよう、今できていることをコツコツと続けていけたらいいなぁと思います。
図書館へ職場体験やインターンシップにきた学生さんから、「やりがいは何ですか」と聞かれることがありますが、レファレンスのように一緒に探していた本が見つかったり、「この本、楽しかった」と言ってもらえたり、本と人がつながったなと思える瞬間がやりがいというか、この仕事をやっていて良かったなぁと思える瞬間です。
──一般室の特設コーナーや「こどもしつ」のイベントや企画など、来るだけでいろいろなものが得られそうな工夫や配慮だなと思います。
スタッフ──
はい、そうであってほしいなと思っています。
Webで予約した本を借りるためだけに立ち寄る利用方法はもちろんですが、そのときに同じジャンルの本棚に寄ってみてもらうとか。
用がなくても本棚の間を通っていたら、前回は気にならなかった本が今回は気になるなんてことがあると思うんです。
それは、図書館に来ていただいてこそなので、そんな本との出会いを楽しんでいただきたいなと思います。
そんな出会いになるようそっと提示したり、後押しできたとしたら、図書館司書冥利(みょうり)につきるなと思います。
図書館に本がある、そしてわたしたち、人がいます。
本との出会い、人との出会いも大事にできたらいいと思いますね。
おわりに
つい先日、返した本をもう一度借りようと、久しぶりに本棚の間を歩いたことがありました。
借りようと思っていた本より興味をそそられる本を見つけて、それを借りて帰りました。
読書の時間が落ち着いて取れず、なかなか読了できないのが最近の悩みでしたが、その本はあっという間に読み終えたのです。
「本と出会った瞬間」だったのだなと、図書館司書のみなさんの話を聞いて、あらためて振り返った体験でした。
図書館司書のみなさんと話して、図書館が温かい配慮に満ちた場所だったことを知りました。
おもしろそうな本を探して本棚の間を歩いていたころを思い出しながらふらりと立ち寄ってみたり、本探しのプロに頼って一緒に本を探してもらったりしようと思います。