鮎正宗酒造(妙高市猿橋)が約40年ぶりにかやぶき屋根のふき替え工事を進めている。風雪などで老朽化したカヤをふき替え、美しさを取り戻す。同社によると、7月までの完成を見込んでいる。
かつては妙高市内でカヤを調達していたが、カヤ刈り場の荒廃が進み、屋根に適したカヤが手に入らなくなったことから、調達からふき替えまで一連の工程を業者に依頼している。
かやぶき屋根は日本の古き良き時代の景観を維持できる半面、雪下ろしが極めて難しかったり、老朽化すると野生動物の侵入を許したりと苦労する。同社によると、カヤを剥がした際、ハクビシンが出入りした跡が見られたという。
上越地域でかやぶき屋根を残した酒蔵や住宅で、観光客向けに開放されている建物はごく少ない。そのため同社には長野県に滞在する訪日外国人旅行客(インバウンド)が見学や試飲のため訪れることも多いという。
飯吉富彦常務は「この景観が新たな顧客の呼び水になっている部分もある。維持するには大変な費用もかかるし、施工業者の確保も今後難しくなるだろうが、せめて若い世代にこの姿を引き継ぎたい」と話していた。