スイス金融当局新トップ、「経営陣の個人責任を追及」

(Keystone / Peter Klaunzer)

スイス金融市場監督機構(
FINMA)の新長官に就いたシュテファン・ヴァルター氏は、監督権限の強化を求めていく立場を明確にしている。非協力的な銀行経営陣をFINMAが解任する権限も必要だとみる。

FINMAは日本の金融庁に相当。今年4月に長官に就任したヴァルター氏は、ドイツ語圏の日刊紙NZZの4日付のインタビューで、金融機関が安定性に関する情報を積極的に提供することを期待していると述べた。「FINMAが完全かつふるいにかけられていないあらゆる情報にアクセスできるよう求める」

あるがままの組織の姿を見たいとも語った。金融機関が経営危機に陥り救済が避けられなくなる状況から納税者を守ることに焦点を置くという。

人員強化

銀行が自主的に協力しない場合は立ち入り検査が実施される。ヴァルター氏はこうした検査でFINMAに与えられた権限を法律で制限すべきではないと強調した。また検査を増やすには人員増が必要になるとした。正確な人数を挙げるのは時期尚早だとしつつ、体制変更により「人員数は非常に大きな影響を与える」と述べた。

銀行が著しく非協力的なケースでは「個人の責任を追及し、必要があれば解任させなければならない。将来的にFINMAにはその権限が必要になる」と述べ、英国のようにシニアマネージャーレジーム(SMR)の導入を求めていく方針を改めて示した。「現在の法律ではそのハードルは非常に高い」

国民に情報提供

現在、FINMAが強制執行に関する情報の公表は原則として禁じられている。ヴァルター氏は「将来的には、非公開は例外となるべきだ」と述べ、公開した方が懲戒効果が働くと話した。当局の監視によって何が達成されるかもわかりやすくなるとした。

同氏は予防措置の方が、クローバック(経営陣に支払い済みのボーナスを当局が没収し課徴金に充てる仕組み)のような事後的措置よりも有効だとした。「問題を認識するのが早いほど、有効な措置を取れる」

連邦内閣が枠組みを策定

スイス連邦内閣(政府)は4月、FINMAの権限拡大を盛り込んだ改革案を発表した。さまざまな分野でFINMAが介入しやすくする。執行手段を拡大し、監督効果を高める。

連邦内閣は来年前半に2つの政策パッケージを実現する。1つは閣議で決定できる政令改正、もう1つは議会採決の必要な法改正をまとめる。

英語からの翻訳:ムートゥ朋子

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