北海道新十津川町と奈良県十津川村の酒米ブレンド 純米酒「郷の心」4年ぶり復活

4年ぶりに純米酒「郷の心」が完成し、報告に訪れた名取社長=10日、県庁

 1889(明治22)年の大水害で被害を受けた奈良県十津川村の人々が移住してできた北海道新十津川町と、同町の「母村」である十津川村の酒米をブレンドした純米酒「郷の心」が4年ぶりに完成した。コロナ禍で一時、製造を中断していたが、関係者の熱い思いを受けて復活。同商品を製造する金滴酒造(新十津川町)の名取重和社長は「村と町がより一層、発展し、末永くみなさんが幸せに暮らせるような、幸せの一滴となってほしい」と話した。

 同社は1906(明治39)年創業。「郷の心」は2016年に名取社長(当時営業部長)が十津川村を訪れた際、当時の更谷慈禧村長に、絆を深めるため両村、町の酒米を使った日本酒づくりを提案し、醸造が始まった。

 しかし、20年の新型コロナウイルス感染症の拡大で売上は落ち込み、製造を中止。再開は難しいと考えていたが、米農家から「米つくるよ」と声をかけられ、復活を決めた。

 酒米は十津川村の「吟のさと」と新十津川町の「吟風」を3対7の割合でブレンド。郷の心の完成を報告するため、10日、県庁の福谷健夫副知事のもとを訪れた名取社長は、「やや甘口の、まろやかな優しい味に仕上がった」を完成を喜んだ。

 十津川村の小山手修造村長は「母村と呼んでもらえる関係性を大切にしていきたい」と両村、町の絆が深まることに期待。名取社長は「製造を続けていくためにも、この酒が全国に広がっていけば」と話した。 

 郷の心は同町内や十津川村内の旅館で提供、販売している。販売価格は720ミリリットル入りで2千円(税込み)、十津川村内は輸送費を加えた2100円(税込み)となる。

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