住宅の専門家がお家づくりをアドバイス
国土交通省が公表している「建設工事費デフレーター」によると、住宅総合の建設工事費は1960年度以降2023年度までの約60年間高騰し続けており、今後も中長期で建設工事費が下がることはほとんどないと思われます。
そのため住宅の購入は、思い立った時に行動に移すことが大切です。
しかし実際に住宅を購入しようと思っても、予算的に足りるのかどうかが不安になったり、物件選びで迷ったり、タイミングを逃したりして、なかなか実行できないことも多いと思います。
そこで本記事では、「新築戸建て住宅を2000万円で建てる費用の内訳」や「建築費を予算内におさめるためのポイント」について解説します。
住宅の専門家でもある筆者が「子育て世帯におすすめの間取りや動線の作り方」、「老後に使いやすいおすすめの施工」も紹介しますので、新築戸建てを検討している方は参考にしてみてください。
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新築戸建てを「2000万円」で建てる!費用の内訳は
新築戸建て住宅の費用の内訳は、大きく分けると「建物本体価格」、「付帯工事費」、「諸費用」があります。
それぞれの一般的な比率は「建物本体価格」が約80%、ライフラインの引き込み工事等の「付帯工事費」が約15%、保険料や税金等の「諸費用」が約5%程度になります。(これらの比率は建物の大きさによって若干異なります)
したがって2000万円の住宅であれば建築本体価格は「1600万円程度」になることが多いため、延べ床面積30坪の家では坪単価は53万円ほどになります。
この場合には家のカタチは凹凸が少ないシンプルな形状となり、2階建てであれば総2階(1階15坪、2階15坪)になることが多いでしょう。
また間取りは3LDK程度が一般的で「3~4人家族に適した広さ」になります。
建築費を予算内におさめるポイント
建築費を抑えようとするために見た目ばかりを優先して住宅性能を疎かにしてしまうと、非常に住みにくい家になってしまって長く安心して暮らすことができません。
したがって耐震性、省エネ・断熱性、遮音性、耐火性、メンテナンス性などの住宅の基本性能については、必要以上にコストを惜しんではいけません。
これらの性能はしっかりと確保しておくことが大切です。
そして建築費を予算内におさめるためには、部屋数や間取りについてもよく見直すことが重要。
無駄な空間を削るとともに、設備や仕上げ材などに関しても本当に必要なものなのかどうかを再度検討してみることが大切です。
一方で、希望を削ってばかりのローコストの家に長く暮らすことはできません。
満足のいく家を建てるには、家族それぞれの要望をまとめて優先順位をつけ、順位の高いものから順に採用することが大切になります。
さらに、専門家目線からは以下のような視点でお家づくりをしてみるのもおすすめ。
- 水回りの位置を一か所にまとめる
- 室内の間仕切りをできるだけ減らす
- 規格外の建具やサッシは使わずに既製品を使う
- 屋根をシンプルな形状にする
上記のような工夫も意外と見落としがちなポイント。
コスト削減に悩んでしまったときには、ぜひ取り入れてみてください。
子育て世帯におすすめの間取りや動線の作り方
はじめて注文住宅を建てる方の中には子育て世帯の方が多いと思います。
共働き世帯が7割近くになる現在においては、せっかく家を建てるのであればできるだけ子育てしやすい家にしたいと思う方がほとんどでしょう。
子育てしやすい家とは家事をストレスなく行うことができて、かつ家事の途中でも子どもを見守り続けることができる家だといえます。
とくに共働きという時間の制約がある中では、家事の効率を高めることが非常に大切です。
キッチンから洗濯機置き場や浴室にスムーズに移動できる動線を確保するだけでなく、調理中でもリビングで遊ぶ子どもの様子が見渡せるようにオープンキッチンにするのがおすすめです。
またキッチンの近くに洗濯、乾燥、部屋干し、アイロン掛けなどの作業をすべて行うことができるランドリールームを設けるのも非常に効果的な手法といえます。
そして子どもが帰宅した後にすぐに手洗いやうがいができるようにするためには、玄関から洗面室、浴室までスムーズに移動できることも重要になります。
水回りをまとめて配置することは、前述したコストダウンのためにも有効です。
さらにリビングの一角にカウンターテーブルなどを設けて子どもが学習できるスペースをつくると、家事をしながら子どもの宿題を見てあげることもできるでしょう。
一方、子どもが小さいうちは、部屋の中におもちゃなどが散乱してしまうことが多いので、収納が不可欠となります。
共働き世帯などで食材の買い置きが多いご家庭の場合には、キッチンにパントリーがあると便利です。
老後に使いやすいおすすめの施工
歳を重ねていくと肉体的な老化により、それまでできていたことができなくなってしまうことがあります。
マイホームで長く暮らし続けていくためには、最初から老後の生活を見据えた住まいづくりをしておくことが大切です。
家の中の段差をなくした施工や、できるだけ階段を使わなくても良いように1階だけでも生活できる工夫、車いすでも利用できる広い玄関やトイレ、冬場でも温かくて使いやすい浴室といったことは不可欠といえます。
また簡単に手摺が後付けできるように、あらかじめ壁の中に下地を入れておく方法もあります。
さらに、車いすでも開閉しやすいように部屋の入口の扉を引き戸にしておいたりするのも効果的です。
こうした工夫は前もって計画していてもそれほど大きなコストアップにはならないため、新築時には老後のことにも配慮したプランづくりに役立つのではないでしょうか。
まとめ
注文住宅を建てる際にはライフスタイルや家族構成の変化も考慮した上で、子育てや老後にも適した住まいづくりをすることが大切です。
子育てに適した住まいと老後に適した住まいにはそれぞれ重要なポイントがありますが、共通する部分も多いです。
たとえライフスタイルに変化が生じても柔軟に対応できるように、事前に計画を練っておくことができます。
予算内で自分の理想の住まいを作るのは難しいと感じるかもしれませんが、住宅会社の営業マンや設計担当者に遠慮する必要はありません。
自分の率直な想いをぶつけるようにしましょう。
参考資料
- 国土交通省「建設工事費デフレーター」
- 内閣府「男女共同参画白書 令和5年版」