年を重ねるにつれ、頭をもたげる「相続」「終活」のこと。のこされる家族を困らせたくないと思う一方で、預金残高や口座情報など、財産の詳細を家族へ伝えることに抵抗がある人も少なくないでしょう。では、それらの情報を家族へ共有せずに終活を進めることはできないのでしょうか。『1000人の「そこが知りたい!」を集めました 人に迷惑をかけない終活』(オレンジページ)の著者で、行政書士/相続・終活コンサルタントの明石久美氏が解説します。
「預金残高」や「財産額」は、すべて共有する必要ナシ
個人情報はリストにし、“保管場所”が家族にわかるよう準備を
まだ元気なうちから銀行口座の残高や持っている財産を家族に伝えてしまうのは、少々気が引けますよね。暗証番号などの情報や印鑑もまとめて渡してしまって、勝手に引き出されてしまうようなことがあっては今後の家族仲も今まで通りにいきません。
だからといって何も伝えないまま倒れたり、亡くなってしまったりすると、家族が苦労するのは目に見えています。
残高や財産の額まで元気なうちにすべて共有する必要はありません。ただ、いざというときに困らないように、必要な情報がどこにあるのか、保管場所を家族がわかるように準備をしておきましょう。
パソコンやスマホの中のメモ帳(IDやパスワードの共有も)、エンディングノートなどに一覧リストを作成し、あなたに何かがあったとき家族が必ず見られるよう、置き場所を共有しておきましょう。
〈ここがポイント〉
情報リストの保管場所がどこにあるのか、必要なときにわかるようにしておく
「年金情報」も伝えておくとスムーズ
年金を受けていて亡くなったら、家族(年金を受給できる対象者)は未支給年金の請求、遺族年金の請求などの手続きを行えば次の年金が受給できます。今のうちから基礎年金番号、受けている年金の種類、年金証書のある場所を伝えておくとスムーズでしょう。
配偶者など、条件が合う方は故人の「未支給年金」が請求できる
●未支給年金の請求
年金は2カ月に1度、前月と前々月分があとから支払われる。亡くなった日によっては年金をもらっていないことになるため、未支給分として請求可能。
請求できるのは受給者と生計を共にしている配偶者と三親等までで最も優先順位が高い人。請求先は国民年金の第1号被保険者のみの場合、市区町村役場。厚生年金の場合は年金事務所または街角の年金相談センター。申請期限は死亡後の年金支払日の翌月の初日から5年以内。
●遺族年金の請求
死亡者と生計を同一にしていた家族が請求できる。ただし未納がある場合などは受け取れないケースもあり。申請先は年金事務所または街角の年金相談センター。申請期限は死亡後の年金支払日の翌月の初日から5年以内。
●死亡一時金の請求
一定期間の年金を納めて、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなった人と生計を同じくしていた家族が請求できる。申請先は住所地の市区町村役場、または近くの年金事務所および街角の年金相談センター。申請期限は死亡日の翌日から2年以内。
明石 久美
相続・終活コンサルタント/行政書士