ポールがスパーズ加入でウェンバンヤマとタッグ!名将ポポビッチHCも「素晴らしいリーダーであり競争相手」と称賛<DUNKSHOOT>

現地時間6月30日(日本時間7月1日、日付は以下同)、NBAは他球団のFA(フリーエージェント)選手たちとの交渉が解禁となり、多くの選手たちが再契約や移籍に合意したという情報が報じられた。

そうしたなか、5月6日に39歳を迎えたクリス・ポールは、今季年俸3080万ドル(約49億2800万円)を保証するか否かの期限を迎え、ゴールデンステイト・ウォリアーズからウェイブ(保有権放棄)されて完全FAに。

もともと、ポールの今季契約は無保証だったため、ウォリアーズがこの高額契約を保証する場合はトレード要員にするかが焦点だった。ロサンゼルス・クリッパーズのポール・ジョージ(プレーヤーオプション破棄で完全FA)、シカゴ・ブルズのザック・ラビーンとのトレードのアセットになる可能性もあったが、結局はウォリアーズから放出され、在籍1シーズンで新たなチームを模索することになった。
ただ、ポールはウェイブから数時間後にサンアントニオ・スパーズとミーティング。1年1100万ドル(約17億6000万円)以上の年俸で合意したと米スポーツ専門局『ESPN』などが報じて話題になった。

キャリア20年目の大ベテランは、183cm・79kgのポイントガード。これまでにオールスターに12度、オールNBAチームに11度、オールディフェンシブチームに9度選ばれた実績を持ち、アシスト王に5度、スティール王には6度も輝いたほか、NBAの75周年記念チームにも名を連ねた将来の殿堂入りプレーヤーだ。

昨季はウォリアーズで58試合に出場し、平均26.4分のプレータイムで9.2点、3.9リバウンド、6.8アシスト、1.2スティールをマーク。とはいえ、39歳になった“ポイント・ゴッド”にエース級の活躍を期待するのはさすがに酷だろう。

だがキャリア20年の節目を迎える今季、ポールは昨季の新人王でオールディフェンシブ1stチームにも選出されたヴィクター・ウェンバンヤマとタッグを組むことで、近年は低迷が続くスパーズを飛躍させる手助けができるかもしれない。
米メディア『TNT』のクリス・ヘインズ記者は、『NBA TV』の番組内でスパーズ入りを決めたポールと話をしたと明かしていて、「彼はウェンバンヤマと組むことを楽しみにしていた。ポップはチームのカルチャーと、あのチームがやろうとしていることを売り込んだと言っていたよ」と発信。

ポイントガードとして申し分ない実績を誇るポールに対し、“ポップ”の愛称で知られるグレッグ・ポポビッチHC(ヘッドコーチ)は現役最長の就任29シーズン目を迎える名将。スパーズ5度の優勝すべてで指揮を執り、レギュラーシーズン通算1388勝(821敗/勝率62.8%)は堂々歴代トップに立っている。

これまでのキャリアで、ポールはピック&ロールからビッグマンたちへ数多くのイージーショットを演出し、持ち前のリーダーシップを発揮して所属チームを勝利へ導いてきた。

そのポールがポポビッチHCの下、224cm・95kgのウェンバンヤマという規格外のオールラウンドビッグマンを操るのだから、期待せずにはいられない。今年3月にポールが所属するウォリアーズと対戦後、ポポビッチHCはポールのことをこう評していた。
「彼はリーグ史上でもベスト、かつ負けず嫌いな選手の1人。素晴らしいリーダーだし、申し分ない競争相手なんだ。彼と会うのはいつだって楽しいね」

昨季ウエスタン・カンファレンス14位の22勝60敗(勝率26.8%)に終わったスパーズだが、ロスターにはウェンバンヤマに加えてデビン・ヴァッセル、ケルドン・ジョンソン、ジェレミー・ソーハン、トレ・ジョーンズ、ザック・コリンズが残っているほか、今年のドラフト1巡目4位ではガードのステフォン・キャッスルを指名。

ウェンバンヤマをはじめとする若手陣の成長、コート内外でリーダーシップを発揮するポールの働きがプラスされれば、今季のスパーズは楽しみなチームになりそうだ。

文●秋山裕之(フリーライター)

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