重量わずか820g・1人用軽量テント「初使用で分かったこと」百名山でのレポ

最小重量820gのニーモ ホーネット オズモ 1P(撮影:兎山 花)

テントを軽くして、「テント泊登山を楽にしたい」と思ったことはないだろうか? 筆者もその一人。これまで装備を軽くする工夫をいろいろとしてきたが、テントの重量だけはどうしようもできない。軽量テントに買い替えたいと思う反面、「高い買い物をして、失敗したらどうしよう」という不安もある。

しかし、物価は日々高騰しており、先延ばしにするとますます値段が高くなりそうなので、今年こそはと思い切って、軽量テントを購入してみた。

この記事では登山歴10年の筆者が、買い替えた軽量テントを実際に使ってみてよかった点や今ひとつだった点などを紹介する。

■重さ820gは本当!? 「ホーネット オズモ 1P」を実際に計ってみた

「ホーネット オズモ 1P」は、フライシートとテント本体が二重構造になっているダブルウォールの1人用テントで、しかも最小重量820g。今まで2kgのテントを使用していた筆者にとっては驚きの軽さだ。

しかし、820gはフライシートとテント本体、ポールのみの重さで、付属のペグは含んでいない。またテントの床面を保護するために敷くフットプリント(グラウンドシート)は別売り。

ペグを使わず、石でテントを固定する方法もあるが、適当な大きさの石が見つかるとは限らない。またテントの床面を保護したいので、フットプリントは筆者にとって必要。となると総重量は増える。

実際に、フットプリントとペグを加えて重さを計ってみたら「1,185g」。最小重量820gと比べて、365gオーバーだ。しかし従来のテントと比べると圧倒的に軽く、個人的には気にならなかった。収納袋込みの重さは以下である。

・本体、フライシート、ポール:820g ・フットプリント:175g ・ペグ8本:150g(17g/1本)

軽量化のために、フットプリントは必要なときだけ持っていくのもありだ。

■ここがよかった! 驚きの居住空間

今まで居住性を重視し、2人でも使用可能な広めのテントを使用していたが、軽量化に向けて居住性は諦めていた。ところが、ホーネットオズモは1人用テントにしては思っていた以上に居住空間に余裕があり、1人で使用するには十分な広さだった。

その秘密はテントの構造にあった。まずテントの短辺が垂直に近い形で立つため、床面が広く感じられる。テント本体の形状が台形で頭部側の横幅が広く、足元側は狭くなっているため、寝転んだときに圧迫感を感じにくい設計だ。

本体に付属のプラスチック製クリップを使ってメインポールに吊り下げると、天井が横に広がり頭上の圧迫感が少なくなるようになっている。

フライシートと本体をフックでつなげることで、フライシートをペグで張るとテント本体も広がる仕組み。

そのほか、天井と側面2か所にメッシュポケットがあり、メガネやスマホ、小物などを入れられてスペースを有効に活用できる。

結果、1人用テントでありながら筆者が考えていたよりもはるかに居住空間が広く感じられた。

■季節を選ぶ半自立式テント、メッシュ部分が多くて寒い

以上、軽量でありながら居住空間が広いメリットをお伝えしたが、デメリットもある。それは本体のメッシュ部分が多いことだ。

テントを張ったのは5月下旬。奈良県にある日本百名山「八経ヶ岳(はっきょうがたけ・標高1,915m)」のテント場。おそらく夜中の気温は一桁台であっただろう。筆者はダウンジャケットを着て、モンベルの3シーズン用ダウンシュラフで寝たが、夜中に寒さで目が覚めた。カイロで体を温めてようやく眠りにつけた。装備の違いはあるかもしれないが、別の登山用テントで寝ていた友人は寒さを感じなかったという。

寒いからといって、夜寝るために防寒着を必要以上に持っていくのは軽量テントを購入したのに本末転倒だ。使用するには、季節や場所を選ぶ。おそらく筆者は夏季限定使用になりそうだ。

またポール3本で本体を吊り下げるため、片方の短辺だけ自立しない半自立式テント。設営するには必ずテンションをかけて自立させる必要がある。ペグが打てない、ペグ代わりになる石がない場所では設営できないといった不便な点もある。

■結果的に、買って大正解!

テント本体とフットプリント合わせて7万円弱。筆者にとっては大きな出費。半自立式で季節を選ぶデメリットはあるものの、軽量性と居住空間を考えると価値ある投資だと感じている。

もちろん身長156cmの筆者が使用するのと、大柄な人が使用するのでは居住空間の感覚は異なるだろう。また今まで2kgのテントを使ってきた筆者にとっては軽いと感じたが、個人によってもその感覚は違う。テントを選ぶ際は、アウトドアショップでテントの中に入ってみたり、設営方法を確認したりして実物を確かめてから購入することをおすすめする。

※この記事の情報は2024年6月現在のものです。内容が変更される場合もありますので、最新の情報はリンク先のHPでご確認ください。

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