【マン島TT 出張便り】世界に先駆けてバイクを進化させてきたイギリスの歴史がずらりと並ぶ博物館を見よ!

世界中にバイク博物館は数あれど、イギリスの『ナショナルモーターサイクルミュージアム』は、展示台数850と世界最大級だ。国立だけあってそのほとんどはイギリス車で、世界のバイク史の前半をイギリスがつむいできたことを実感できるミュージアムなのである。

●文/写真:ヤングマシン編集部(山下剛)

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英国バイク産業の聖地へ

ナショナルモーターサイクルミュージアムは、イギリスのイングランド中部、バーミンガムにある。バーミンガムは1900年代初頭に勃興したイギリスのバイク産業の中心だった土地で、トライアンフ、BSA(正式名称はバーミンガム・スモール・アームズ・トレード・アソシエーション)、ノートン、アリエル、ヴェロセットなどが拠点としていただけでなく、その後倒産した数々のメーカーが集まっていた由緒ある地域でもある。

創業当初のトライアンフはコベントリーに工場を持ち、1977年に倒産するまではメリデンに工場を据えていたが、これらもやはりバーミンガムの東部にある町だ。1990年の復活で工場が建設されたヒンクリーもバーミンガムの東部にあり、現在もそこでトライアンフの主要モデルが製造されている。

ナショナルモーターサイクルミュージアムは、そんな伝統と歴史を持つ土地にある。日本でいえば静岡・浜松のような地域といえるかもしれない。しかし、浜松にはヤマハとスズキのバイク博物館があるが、公立のバイク博物館はない。そうしたところに、イギリスと日本のバイク文化の違いというか、日本が世界に誇る産業であるにもかかわらず、バイクという乗り物と趣味が一般社会で認知されていない悲しい現実を感じてしまう。

さて、ナショナル(国立)というだけあって、およそ850台の展示車両のほとんどはイギリス製だ。復活したメーカーであるトライアンフ、BSA、ノートン、現在はインドを拠点とするロイヤルエンフィールドといった、日本でも有名なメーカーはもちろん数多くのモデルが展示されているが、イギリスの旧車に興味を持ったことがある人でないと知らないメーカーのものが大半だ。

日本でもバイク産業の勃興期の1950年代には100を優に超えるメーカーが存在したといわれるが、イギリスでもそれは同様で、しかも日本よりも20~30年早くそうした群雄割拠の時代を迎えていた。ナショナルモーターサイクルミュージアムにはそうしたイギリスのバイク史がほぼすべて、保管・展示されている。

館内は5つのブースに分かれており、おおよそ年代順、そしてメーカーごとに集めて展示されている。ひとつひとつのブースはかなり広いのだが、それでも850台ものバイクを展示するとなるとどうしてもすし詰めになってしまう。そのため車両の写真を撮るのもなかなか困難だし、あまりに台数が多いこともあってすべてを細部までじっくりと観察し、撮影するのはなおのことむずかしい。

一度訪れればすべてを見られる、イギリスのバイク文化や歴史がわかるという施設ではなく、その都度テーマを決めて訪れたり、何度も通って楽しむ。そんなミュージアムなのだろう。

ちなみに、ミュージアムのホームページには「館内の写真撮影は自由です。どんどん撮ってSNSにアップしてください」と書かれているのだが、「ただし商用利用はできません。別途申請が必要です」と追記されている。それにもかかわらず私は申請せずに訪問し、受付で日本から来たメディアであることを明かし、写真撮影して日本のバイクメディアで記事にしたいと話すと、ホームページに書かれているように「メールで申請してください」との返答だった。当然である。しかし、ひとまず名刺をわたしたうえでメールを送ろうとすると、受付の女性は「私が代わりにメールしておきます」と言い、数分後に「オーケー! 好きなだけ撮影してください」とありがたい対応をしてくれた。国立とは思えない迅速さと寛容な対応も、バイク文化が社会的に認知されているイギリスならではなのかもしれない。

というわけで、ナショナルモーターサイクルミュージアムの膨大なバイクの中から、独断と偏見(日本ではお目にかかれなさそうなモデルを中心にした)で選んだ英国車を紹介しよう。もしも興味を持ったなら、ぜひバーミンガムのミュージアムを訪れてじっくりとイギリスのバイク文化に触れ、併せてトライアンフ本社工場見学ツアー(要予約)も楽しむのがオススメだ。

ナショナルモーターサイクルミュージアムから厳選紹介!

― 基本的に動態保存……!

― 最高速度記録に挑んだストリームライナー

― 126年前の400ccマシン

― 1902年の第1号車

― 貴族の女性も運転した?

― 499cc単気筒を積んだ第1号車

― エンフィールド・サイクル・カンパニー

― 9年間で消えたが水冷水平対向2気筒を生産

― 1926年、TTウィナーとペイント

― のちにBSAのスクーターブランドへ

― ハーレーと間違えないよう社名を変更

― フライング・バナナ

― 英国育ち? のインディアン

― 第一次世界大戦中に製造

― A.J.スティーブンス=A.J.S.

― かなり初期のノートン

― レアな6Tサンダーバード

― ヒンクリー時代トライアンフ、初期のモデルたち

― 二輪車のロールスロイス

― じつは1982年まで生きながらえたメーカー

― 創業250年以上の刀剣製造メーカー

― 2スト170ccのキックボードスクーター

― 英国メーカーのプロダクションレーサーたち

― ノートンのロータリーエンジン搭載車

― ロータリーエンジンの救急車?!

― BMWよりも早かった

― ヘスケス卿によるバイク産業復活へのチャレンジ

― 世界に1基だけのスペアV型8気筒エンジン

― おまけ

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