【コラム・天風録】サッカーができなくなる日

 「サッカーができなくなる日」と題した、気候変動の投稿動画で元Jリーガー内田篤人さんが明かす。移籍先のドイツではヘトヘトでも全力でぶつかり合った。日本に戻ると、いかに相手だけ走らせるかを考えたという。「夏は暑いんで、サボろうと…」▲敵は暑さだけではなかったろう。内田さんが帰国した2018年を境に、Jリーグでは大雨による公式戦中止が5倍近くに増えている。このままでは「できなくなる日」もそう遠くない▲男女ともサッカー日本代表が出るパリ五輪まで、1カ月を切った。気温上昇を抑える目標を定めた協定のお膝元だが、熱波が押し寄せると見込まれている。現地では、五輪ならぬ「火の輪」と皮肉る声もあると聞く▲バレーボールにゴルフ、陸上…と、五輪切符をつかんだ選手を紙面で見かけるようになった。室内競技はともかく、炎天下で戦う選手にどんな声がかかるだろう。「死に物狂いで頑張れ」では、もはや悪い冗談である▲1年前の7月2日。埼玉のシニアサッカーリーグで40代の選手が試合後、心臓発作で倒れ、息を引き取った。猛暑日の試合が引き金と目されている。健康第一を忘れたくない、熱中症の季節を迎えた。

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