健康や幸せを生み出す空間づくり “大転換期”に新たな暮らし方を提案

住宅、非住宅分野を問わずエクステリアに熱い視線が集まっている。住宅・建築物の内部空間と外部空間との関係性が問われ、新たなアプローチがそこかしこで起こっている。こうしたなかタカショーが7月25日、26日にわたり東京流通センター(東京都大田区)で「タカショーガーデン&エクステリアフェア2024(TGEF2024)」を開催する。今、エクステリアに何が求められるのか、エクステリアメーカーは何を発信していこうとしているのか、タカショーの高岡代表取締役社長に聞いた。

タカショー高岡伸夫 代表取締役社長

──エクステリア業界の現在、それを踏まえてフェアで何を打ち出す考えですか。

ハウスメーカーなどは「住まい」から「住まい方」を提供する事業者へと変貌しました。一方、エクステリア業界は、商品を量産し流通させ設置してシェアを争うという状況にとどまっています。ライフスタイルを売るとは言葉では言いますが、本質は変わっていない。社会はモノ消費からコト消費に変わりましたが、さらに時間消費型に移りつつあります。高齢社会というファクターも大きい。残りの人生を考えた時、豊かで、健康的で、長生きできる、そんな空間に対してお金をかけるようになっています。
どんな時間を、どのように暮らすか、その価値を明確に示していきたいと考えています。それが住宅とガーデンを一体的に考えた色々な提案です。今の時代、時間軸を取り入れることが重要だと考えています。空間だけの3Dではだめです。夕方になり光が変わる、季節が通り過ぎる、年月とともに美しく変化していく、そんな時間軸での価値を取り入れていくこと、つまり3Dから4Dへと進めていく必要があると考えています。

今、エクステリア業界は大転換期にあります。今回のフェアは、そこを踏まえ「業界の大転換期に向けてのトレンドフェア」をテーマとしました。景気が悪いと言いますが、これは次の時代を迎えようとしているあらわれだと考えています。そうしたなかで、これからの暮らし方や住まい方を、今回のフェアを通じて提案していきたいと考えています。

「コントラクト市場から住宅EXの最新トレンド」、「リアル商品とDX提案」をテーマに「タカショーガーデン&エクステリアフェア2024」を開催(写真は2023年時の様子)

──空間提案という点からは、以前から「5thROOM」の提案に力を入れています。

日本古来の住宅には、軒や庇が張り出し、その下に縁側がありました。この軒の出や角度は地域によって異なり、季節によって暖かな日差しを取り入れたり、逆に西日を遮ったりという機能を持っていました。しかし、間取りを増やしたい、建蔽率の問題があるなど、さまざまな理由で軒の出は少なくなり、軒下空間がなくなりました。

こうした空間は健康面からも大事だと思っています。夏にエアコンが欠かせなくなりましたが、直接体を冷やすと免疫力が大きく低下してしまい、健康を損ねてしまうそうです。例えば、縁側でお茶を飲む、笑顔で話をする、庭先で家庭菜園をする、それらすべてが「健康」に関わってきます。何をもって「住まい」とするのかをあらためて考えなければいけないと思います。

私は、エクステリア業界は大きな将来性を持つ業界だと思っています。生活に不可欠な衣・食・住のなかで唯一残された「住」に分類される業界です。戦後の、着られれば良い、食べられれば良い、住めれば良いという時代から、ファッションでは世界展開するブランドが生まれ、日本食が世界で認められるようになりました。一方、住まいはどうでしょう。人が集い笑顔がある豊かな時間を過ごす、そんな空間を組み込んだ住宅の姿とは程遠い。箱の中に人を閉じ込めるのではなく、街とつながる、自然とつながる、人とつながることで語らいが生まれ、楽しさが生まれるのです。

建物と庭、外構までを一体で考えることで風や光を取り込んだ心地よい暮らしを実現する「5thROOM」

「5thROOM」の提案は、こうした考え方が背景にあります。中間領域をもう一度暮らしに取り込もうよということで、今回のフェアでもその提案に力を入れています。

そのなかで一つのテーマにしているのがテラスガーデンで、戸建住宅やマンションのテラスをリビングとして活用する提案を行っています。具体的には、リビング・ダイニングと中間領域であるテラスを折れ戸で仕切り、全開口とすることで一つの空間として心地よい空間をつくり出します。

間取りを変える障子というものは世界にはない日本独自のものだそうですね。「5thROOM」も同様で、閉めた状態では屋内と屋外ですが、開ければダイニングやキッチンとテラスが一つの部屋になる。内と外が生活空間としてつながり、光と風を取り込む。その空間が一番心地よく、人が集まりやすい。介護空間にも活用できるかもしれない多機能空間に生まれ変わるのです。つまり、昔の縁側です。従来の箱型空間からの大転換、「原点は日本にあり」ということです。

私の勝手な想像なのですが、日本で昔からある「借景」というのは、自然とのつながりで健康や幸福感を高めるバイオフィリックデザインと呼ばれるものではないでしょうか。山を、緑を、季節を、そこになくてもあるが如く、住まいの中に取り込む。同じようなことがインナーテラスでできると思っています。例えば、バルコニーにレンガを敷き、レンガっぽいシートを居室内に敷くことで一つの部屋のようにつながる。さらに屋内の左右に植物を置けばまさに室内が庭のようになり、引き違いサッシを開けば一つのガーデンとなります。こうした提案をどんどんパッケージ化していきたいと考えています。

──一方の非住宅分野について取り組みを教えてください。

シンガポールは2001年に国をあげた都市計画「シティ・イン・ア・ガーデン」に取り組みました。それまでの緑あふれる都市「ガーデンシティ」を発展させた考え方で、緑化だけでなく、都市周辺の緑地をネットワークし国土全体で都市と自然との共生を図ろうというものです。小さなポケットパークがあちこちに点在し、それを自動車だけでなく自転車の幅の道路までを使ってつないでいます。だから緑の力、庭の力が非常に大きい。

今、「花と緑のまちづくり全国首長会支援団体連絡協議会」の会長を務めています。子どもたちのために花と緑の魅力あるまちづくりを進めようと、全国の100を超える自治体の首長が参加しています。ただ、自治体だけではできませんから、造園組合や施工組合など17団体も参画し、一緒になって地域をつくっていこうとしています。

また、緑は癒しの効果を持っています。先に触れたバイオフィリックデザインというものです。人は生まれながらに動植物に癒されたいという本能を持っています。ただ、それは多すぎても少なすぎてもだめ。人との関係性をどのようにデザインするかが重要です。こうした取り組みを広げていきたいと、(一社)日本ガーデンセラピー協会を作りました。私が理事長を務め、会員は現在2000人を超えています。

こうした緑の取り組みを、住宅の庭はもちろん、まち全体、つまり非住宅分野でも積極的に進めていきます。

──住宅、非住宅分野を問わず、「エバーアートボード」などの意匠性の高い乾式建材がタカショーの大きな魅力となっています。

ガーデン、また、それを構成するエクステリアはどんどん作品型になっています。私が子どもの頃、壁紙というものができ、それまでの塗り壁が一挙に壁紙に変わりました。湿式から乾式に変わったのです。私は、ずっと屋外の空間を乾式でできないかと夢見ていました。色々な壁紙メーカーさんをイメージしていたのです。

リアルな表情が魅力的な建材パネル「エバーアートボード」で創造的な空間デザインを実現

それが「エバーアートボード」なんです。「エバーアートボード」、「エバーアートウッド」、「エバーバンブー」の3つの乾式材料を自社で作っているので材料だけの販売でもいいし、空間の提案として売れればなお良い。メーカーからの提案でなく自らのデザインでという方は材料だけでもよい。そうした時に求められるような意匠性を実現するため、天然材から撮影・型取りしたのがこれらの建材なのです。

──デジタル分野にも力を注ぎ、さまざまな展開を行っています。

タカショーは、WEB上で最新の外構コーディネイト「ジャパンディスタイル」や「アーバンスタイル」などのプランが見られ、CADデータもダウンロードできる「パッケージプランサイト」や、デザイナーズアイテムを組み合わせた外構プランを多数収録する「パッケージプラン デザイナーズサイト」を展開、その充実を図っています。

ここで大切になるのがWEB空間における表現です。タカショーは、プロユーザー向けに超高精細3DCGパース制作サービス、建築CG動画VR制作サービス、また、WEB上で簡単に外構提案ができる「バーチャルホーム&ガーデン」を提供しています。

デジタル空間をベースにしながら、3DCGパースなどのツールを有効に使っていただき、リアル空間で作っていくという流れです。図面を書く、パースを書く事業者さんは他にもいます。しかし、これらはいわば絵に描いた餅です。食べられなければ意味はない。タカショーはデジタル空間の提案をパッケージとして実際に作ることができる。このデジタルとリアルの組合せを進めていきます。こうした訴求力、業務効率を高める最新のDXサービスをフェアでも体験していただけます。

次の段階としてBIMの活用を進めています。海外では、BIMに登録していないメーカーの商材は使ってもらえないところも出てきています。しっかりと対応を図っていきます。

──タカショーの今後の取り組みは?

今、規模の経済から範囲の経済へということが言われています。市場が拡大しないなか、ある範囲の中で利益を上げていかなければならない。つまり付加価値を上げるということです。

エクステリア施工店さんは一人当たりの生産性をもっと上げていかなければなりません。そのためには、先ほどの乾式工法を進めるということもありますが、もう一つ、一人の人が複数の仕事をこなす多能工化を進めていくべきだと考えています。

その一つの取り組みが「ライティングマイスター」です。タカショーは庭の「光」に力を入れています。単に照明としての機能だけであれば、多くの照明メーカーさんが取り組んでいますが、タカショーはメルヘンティックな光、揺らぎの光を取り入れ、室内の照明、屋外の照明、それらを連動することでガーデンや色々な空間の価値を高めていこうと提案しています。その照明についての知識や技術力を持ってもらおうというのが「エクステリア&ガーデンライティングマイスター制度研修会」で、修了者を「ライティングマイスター」と称し、既に全国に7000人のマイスターが誕生しています。

先に緑の話をしましたが、そこに欠かせないのが散水・潅水システムです。住宅や店舗など小規模な建築物における散水・潅水のマイスター制度を7月から開始します。植物の知識をもってもらった上で、散水・潅水システムの施工を行うことができる資格制度で、これを「ライティングマイスター」の方々が取得すれば、ガーデンに関する仕事の幅を広げることができます。

職人不足を多能工化で解消し、乾式工法で現場の付加価値を高めていく。そして緑を増やしながら、従来の縁側のような健康や幸せを生み出す空間づくりに取り組んでいく。これが大きなテーマです。

(聞き手:平澤)

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