EUROの母国代表からインスピレーションを得たラドゥカヌが“醜く勝利”。「結局大事なのはゴールラインを越えること」<SMASH>

現在開催中のテニス四大大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/7月1~14日/グラスコート)の女子シングルスにワイルドカード(主催者推薦枠)を得て参戦中のエマ・ラドゥカヌ(イギリス/世界ランク135位)。大会初日の1回戦ではレナタ・サラスア(メキシコ/同98位)を7-6(0)、6-3で倒し、2回戦に駒を進めた。

辛勝したラドゥカヌは、サッカーのイングランド代表の戦いぶりからインスピレーションを得た――どんなに醜くても、勝つことが大事――ことを冗談めかして明かしている。EURO(UEFA欧州選手権)に出場中の優勝候補イングランドは、前日の決勝トーナメント1回戦スロバキア戦で大苦戦しながら、土壇場の大逆転で勝利をつかんでいた。

「もっといいプレーをしなければならない、完璧なプレーをしなければならないと言われている選手たちに共感しているのは確かね。結局、大事なのはゴールラインを越えることだと思う。

今日はそれをモチベーションにしたわ。美しくある必要はないし、完璧である必要もない。勝ってトーナメントに残っている限り、状況が整えばチャンスはきっと来る」

2021年「全米オープン」覇者のラドゥカヌは、その後の複数回の手術を経て今シーズン復帰。芝シーズン開幕戦の「ロスシー・オープン」で準決勝まで勝ち上がった。2年ぶりに戻ってきた母国のグランドスラム(四大大会)は、現在の彼女がどのようなレベルにあるかが試される格好の舞台だった。
当初対戦予定だった第22シードのエカテリーナ・アレクサンドロワ(ロシア/同22位)が体調不良で棄権し、ラッキールーザーとしてサラスアが繰り上がり。ラドゥカヌにとっては幸運な対戦相手の変更にも見えたが、現実は違った。ロイヤルボックスでサッカーの元イングランド代表デビッド・ベッカムが見守るなか、ラドゥカヌはミスを繰り返す。アンフォーストエラーは30本を数えた。

だからこそ、勝つことが重要だとラドゥカヌは言う。引き合いに出したのは、アンドレ・アガシらを指導したブラッド・ギルバートの名著だった。

「クリーンで美しいボールの打ち合いではなかった。ただ、相手をうまくコントロールして、戦い方や状況をうまく支配できていた。『Winning Ugly(醜い勝利)』、本当にその通りだと思うわ。特に、グランドスラムの開幕戦は緊張の連続だから、それを乗り切ることは本当に大きなことだし、重要なこと」

ラドゥカヌの次の対戦相手は、ダブルス世界1位のエリス・メルテンス(ベルギー/33位)に決まった。イングランド代表は、準々決勝でスイスと対戦する。

初戦の壁を乗り越えた21歳は、3年前のニューヨークで見せた爆発力を再び発揮することができるだろうか。

構成●スマッシュ編集部

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