[社説]旧優生保護法は違憲 国の「人権侵害」を断罪

 「戦後最大の人権侵害」の全面解決に向け、大きな一歩が刻まれた。

 旧優生保護法下で不妊手術を強制されたとして被害者らが国に損害賠償を求めた5件の訴訟の判決で、最高裁が旧法を「違憲」とする初の統一判断を示した。

 旧法は1948年、議員立法で制定された。「不良な子孫の出生防止」を目的に遺伝性疾患のほか、遺伝性でない精神疾患、知的障がい者への不妊手術を認めた。

 障がい者団体などの批判を受け国は96年、障がい者差別に該当する条文を削除し、母体保護法に改めた経緯がある。

 一方、「記録がない」「当時は合法だった」などとして、被害者が求めた謝罪や補償には応じてこなかった。

 2018年、宮城県の女性が旧法は違憲として初めて国賠訴訟を提起。以降、全国12地裁・支部で39人が提訴している。

 最高裁は今回、旧法が「意思に反して身体への侵襲を受けない自由」を保障した憲法13条や、法の下の平等を定めた憲法14条に違反するとした。

 一連の訴訟では、不法行為から20年経過すると損害賠償請求権を失うとする「除斥期間」が争点となってきた。

 それについても最高裁は、除斥期間を理由に国が賠償責任を逃れることは「著しく正義・公平に反し、到底容認できない」と断じたのである。

 国は全ての訴訟を速やかに終結させ、被害者に対する謝罪と補償に取り組むべきだ。

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 旧法下では約2万5千人が不妊手術を受け、そのうち手術を強制させられた人は約1万6500人に上る。

 「苦しみながらここまできた」

 最初に訴え出た女性が手術を強制されたのは16歳のころ。手術後はひどい生理痛に悩まされてきた。不妊手術を理由に結婚生活も破綻した。25年以上前から旧法の被害を訴え、国に謝罪と補償を求め続けてきた。

 女性をはじめ多くの被害者はすでに70~80代だ。訴訟中に亡くなった人もいる。

 この間、国が被害者の声に背を向け続けたことは厳しい非難を免れない。

 19年には被害者に一律320万円の一時金を支給する救済法が議員立法で成立。衆参両院が初めて報告書をまとめ「反省とおわび」を明記した。

 しかし、最高裁では1千万円を超える賠償責任が確定した。非道な国策の補償として一時金は不十分だ。おわびにも国の責任が明記されておらず到底納得できない。

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 ゆがんだ国策は、社会の差別や偏見も助長してきた。

 「手術を知られたくない」との思いから請求をためらう人も多いとみられ、一時金の支給者は5月末時点で1110人にとどまっている。

 「優生思想」を背景にした問題は後を絶たない。北海道のグループホームが知的障がい者に対し、不妊処置を受けるよう求めたことは記憶に新しい。

 社会も長く被害者の苦難を放置してきた。その責任を重く受け止めるべきだ。 

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