社員20人の紙器製造会社「秀英」が小学校の教科書に載ったワケ

リサイクル紙容器「ホッかる」を手に(秀英の上田秀行会長=提供写真)

【会社のギモン】秀英

東大阪市で紙器の製造を手掛ける秀英は、社員20人ほどの小さな町工場。そんな会社が20年以上も前にリサイクルの紙容器を開発した。

その名も「ホッかる」。ホッとして助かるのダジャレだ。容器7個でトイレットペーパー1個分が再生できるという。

この取り組みが評価され、小学校5年生の社会科の教科書に採用されている。でも、なぜホッかるが小学生向けの教材として最適だったのか?

「あえて、はがして回収することで利用者にリサイクルを意識させ、興味をエコへと向けさせたことですかね」

こう話すのは、同社の上田秀行会長(写真)。皿が汚れないようにラップを張って使うことがあるが、これはその進化版。紙箱の内側にフィルムが張りつけてあり、食べ終えた人はフィルムをはがし、きれいな外箱だけを再利用に回す仕組み。このひと手間が逆に小学生に“ゴミの分別”と“リサイクル”を意識させるようだ。確かに、大がかりなリサイクル工場の最新技術を説明されるより、ホッかるのような工夫で誰でもエコを実践できると紹介された方が子供たちにとっては身近だろう。

「大阪名物のお好み焼きやたこ焼きを食べながらエコを学べるツールとして多くの人に受け入れられているようです」(上田会長)

■オイルショックによる紙不足を経験

今年82歳を迎えた上田会長が紙のリサイクルにこだわるのには理由がある。17歳で大阪の紙工場に住み込みで就職し、以来、60年以上も紙一筋。念願かなって自分の会社を持てたのだが、一時期、その紙で苦労した経験があるのだ。

「秀英を立ち上げたちょうどその翌年の1973年は、オイルショックで極端な紙不足。世間はトイレットペーパーがないと大騒ぎだったのです」(上田会長)

モノがなくなって初めて、小学生もエコの大事さを強く感じるに違いない。

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