都知事選の争点「東京一極集中」問題は40年前から進展せず…小泉政権のツケ“ブラックホール型自治体”の深刻度

規制改革の名のものとに…(C)日刊ゲンダイ

東京都知事選の投開票日(7日)まで残り3日。1400万人の人口を持つ首都の新たな首長は誰になるのか。舌戦が続いている。

主要な選挙争点になってはいないものの、今選挙で「台風の目」となっている前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏(41)が訴えていたのは、「東京の一極集中から全国にわたる多極分散に向かう時が来ている」という「東京一極集中の是正」だ。

これに対し、現職の小池百合子知事(71)は「この東京をもっともっと良くしていく」と言っているから、ある意味、異なる立場、考えと言っていいだろう。

東京一極集中の原因として、国は若者世代、特に女性にとって魅力的な仕事が東京に集中していること、就学、就職などで地方から人口が流出していること、などを挙げている。新型コロナ禍でいったんは都内近郊に移転する動きが見られたものの、2023年は7万人近い転入超過となり、「東京一極集中」の動きは依然として変わっていない。

国は国土形成計画を作り、「東京一極集中の是正」に向けて、国土全体にわたって人口や諸機能が分散的に配置される国土構造の構築を目指すーーとしているものの、「東京一極集中」という言葉が使われ始めたのは今から40年近く前の中曽根内閣の時だから、その当時から状況はまったく進展していないわけだ。

■東京の「ブラックホール型自治体」化が加速する一因は……

なぜ一極集中がこれほど進んだのか。

今春の衆院国土交通委員会で、立憲民主党の谷田川元議員(61)はその一因についてこう考察していた。

「東京一極集中の是正は、中曽根内閣のときから、37年前からずっと政府が旗を振っているにもかかわらず、東京一極集中の是正どころか一極集中が進んでしまった」「私は過去、この37年間を振り返って、一番大きな東京一極集中を促進した政策は、小泉内閣の時のあの容積率の緩和だと私は思うんですが」

「規制改革、民間主導」を掲げた小泉政権では、当時の小泉首相が都市再生本部の本部長に就き、首都圏を中心とした大規模な「都市再生プロジェクト」を主導。国交省は2002年度予算概算要求で、国費ベースで全体の3割にあたる2.5兆円を都市再生関連事業に投じた。

主な内容は「民間の大規模都市開発の展開に対応して従来型公共事業で周辺基盤を整備すること」「土地規制緩和・容積率緩和を行うこと」「不動産の証券化を促すこと」で、これによって臨海地域の大型開発や大規模商業ビル、タワマンの建設などが進んだといわれる。

官民一体となって、都内で新たな施設や居住地をどんどん増やすのだから人口が増えるのも当然だろう。東京の「ブラックホール型自治体」化が加速する一因になった面は否めない。

ちなみに当時、「特定非営利活動法人 建設政策研究所『緊急経済対策』プロジェクト」という団体が「小泉内閣の『都市再生』についての見解」を公表。「都市再生」政策は国民に何をもたらすのか、としてこう警鐘を鳴らしていた。

「巨大建築物の集積により、都心への一極集中が再び引き起こされ、新たなまち破壊・過疎が進行し、住民にとっての居住環境をいっそう深刻なものになる」「地域の住民は再び追い出されるともに、新たに地域外の高所得層や外国人投資家など特別な階層の居住するまちとなる」「従来型の大規模公共事業の推進は、破綻している国家財政をさらに悪化させることになる。これは消費税増税などの国民負担増につながる」「環状道路などの建設は都市周辺のまち破壊、環境破壊を進めるとともに、都市部への公共事業の集中は地方の地域経済に深刻な影響を与える」

外国人投資家らによるタワマンバブルと住宅価格の急騰、神宮外苑の街路樹伐採による「まちの破壊」など、今、都内で起きている問題にまさに当てはまる話ではないだろうか。小泉政権から始まった「規制改革」という名の政策はここにきて、いろいろな側面が出てきているようだ。

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都知事選は終盤戦を迎えている。小池、蓮舫、石丸の3氏らの戦いはどうなるのか。

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