あこがれの高山植物「キタダケソウ」を見たい! 「北岳」登山 まさかの濃霧で… 結果とは!?

北岳山頂直下花畑を歩く登山者(撮影:鶴岡 亜矢子)

日本第2位の高峰「北岳」に、白くてとてもかわいらしい「キタダケソウ」という花があると聞いて、ある年の7月下旬に初めて北岳に登った。

しかし、ガイドブック片手にキタダケソウを探したが見つからない。白い花は沢山咲いていても、これはキタダケソウではないんだとがっかりした。帰宅後によく調べたら、時期が遅かったことが分かった。

キタダケソウは山頂の雪解けとともに開花が始まると知り、翌年の7月初めに仲良くなった南アルプス市の方と再び北岳に登った。

山開きして間もない時の北岳はまだ雪が多く天候も安定しない。筆者にはまだまだレベルの高い山だった。自分の体力不足をいやというほど思い知ったのだ。

■まだ潤沢な残雪の北岳を登る。草すべりルートから登り、北岳山荘へ

芦安駐車場から登山バスで広河原へ向かい、少し歩いて大樺沢(おおかんばさわ)へ出ると、沢いっぱいに雪があった。北岳へはこの沢を登ると近いが、雪が多いため右に進路を取り、御池小屋(おいけごや)を経由し、「草すべりコース」から沢をよけるようにして登ると危険が少ない。この日は草すべりコースから登り、肩の小屋、北岳を通過して、北岳山荘へ向かう行程だった。

草すべりコースの雪渓(撮影:鶴岡 亜矢子)

細い雪渓の横を登る。斜度が高くペースが上がらない。苦しみながら登っていると、傘をさした男性が雪渓を滑り落ちてきた。ケガはなかったようでなによりだった。

事前の天気予報は曇り、2日目は晴れだったが、予想外の霧雨の中ようやく肩の小屋に着いたあたりで、もうヘトヘトだったが、宿は北岳山荘である。この後、山頂を通過しなければならない。

ペースが落ちて霧の中、何度も同行者を見失った。山頂直下の岩場でおかしいなと思いながらも進んでいたら、後ろから、「違う! そっちじゃない!」と前にいるはずの同行者の叫び声が。あやうく沢へと下り始めていたのだ。

すっかり怖くなりながら岩場を通過するも、濃い霧でどうしても道が分からず引き返したりしながら、なんとか北岳山荘に着いたのは、夕方5時だった。その日の夕食は、疲れ切って食べることが出来なかった。

今思うと、梅雨時の高山の厳しさを甘く見ていた。と大反省の山行だった。声をかけてくれた同行者に感謝の思いが溢れる。

■北岳トラバース道付近に群生発見

北岳山荘から北岳方面へ向かうトラバース道付近にキタダケソウ群落があると聞いていたが、やはりそのとおりだった。

「道」とはいえ、崖のような斜面にどうにか道が作られていて、かなり怖いし、壊れていて通れない年もあった。それでもこの道から愛でるキタダケソウ群落は、天空の花畑のようでものすごく美しい。

雪が消えた斜面に、ハクサンイチゲとともに群落を作っている。どちらも同じ白で、最初は見分けるのが難しかった。

花びらと葉の形に違いがあるのだが、見慣れるとすぐに見分けがつくようになった。

キタダケソウの葉はフリルがついており、何枚も重なってこんもりとしている。また、花弁の先端が一枚一枚が広くふわっとしているのがキタダケソウだ。

こんな綺麗な可憐な花が夏の始まりにわあっと咲いて、すぐに姿を消してしまう。

長い登山道、そして長い雪渓登り、過酷な登山を経験してやっと見られる、奇跡の群落だ。

■7月初めの早咲きの花畑

北岳は花が美しい山としても有名だが、キタダケソウはダントツに早く咲いて散ってしまうため、他の花々はまだこれからといった感じだ。花の色も白が多く、これから段々とピンク、紫と増えていく。

北岳山荘から間ノ岳へ向かう途中の中白根山(なかしらねさん)の花畑が見事だった。

ピンクの花は「タカネシオガマ」だった。背が低く、明るいピンクの色が目をひく。ずっと見ていたい風景だが、晴れる時間は短く、とても寒かった。

このような苦労の末に美しいキタダケソウに会うという「アメとムチ?」に筆者はすっかりハマってしまい、なんと3年連続でキタダケソウを見に出かけた。

キタダケソウが見られる時期は、雪が多い年と少ない年で状況は変わってくるから、多い年は前爪のついたアイゼンを用意し、雨や寒さに対応できるよう、下着やアンダーウェア、靴下や手袋は予備を持参しよう。

また、北岳へは広河原までバスで行く必要がある。南アルプス市観光協会が掲載するバス時刻表を参考に事前にバスの時間を考慮して、出来れば余裕のある日程でキタダケソウを見に行って欲しい。

山頂付近のキタダケソウ群落に、一目ぼれすること間違いなしだ。

●行程と参考タイムスケジュール
1日目:広河原登山口(6:20)⇒白根御池小屋(8:00)⇒肩ノ小屋(12:00 ※昼食にて13:00出発)⇒北岳山頂(14:00)⇒北岳山荘(15:00 ※小屋泊)
2日目:北岳山荘(7:00)⇒北岳(8:00※小休止)⇒肩ノ小屋(9:30)⇒白根御池小屋(11:30 ※昼食にて12:30出発)⇒広河原登山口(13:30)

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