コロナ感染 抑制物質を特定 長崎大など、抗ウイルス薬開発に期待

 長崎大高度感染症研究センターの安田二朗教授らの研究グループは3日、土壌に存在する微生物が生産する天然物質プラディミシンA(PRM-A)が、新型コロナウイルスの感染を抑制することを発見したと発表した。同ウイルスの変異株に有効な抗ウイルス薬が開発できる可能性があるとしている。
 新型コロナウイルスを覆う突起状のスパイクタンパク質には、糖が鎖状につながった「糖鎖」が巻き付いている。研究では、PRM-Aが糖鎖にくっつくことや、その仕組みを確認。さらに培養細胞を使った試験で、PRM-Aの濃度を高めると同ウイルスの感染を抑制できることが裏付けられた。
 新型コロナは変異株に有効な薬の開発が課題となっているが、糖鎖はウイルス表面にあるので、PRM-Aの効果は変異株に対しても変わらないとされる。糖に結合するタンパク質レクチンも、感染抑制に有効なことが既に報告されているが、有害な抗原抗体反応を引き起こす危険性があるなど薬に利用するには多くの課題がある。これに対し、PRM-Aは有害な影響を及ぼすこともないという。
 研究は2022年から、名古屋大糖鎖生命コア研究所の中川優准教授ら、国内5大学の研究者が参加し実施。研究成果は4月、化学誌「バイオオーガニック&メディシナル・ケミストリー」オンライン版に掲載された。
 薬の開発に向け、今後はPRM-Aを含む化合物を合成する研究を進め、どの化合物がより効果的かを調べていく。安田教授は「(医薬品の原石となる)リード化合物として有望であることが示された」と話している。

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