今まで“治らない”とされていた猫の病気「FIP(猫伝染性腹膜炎)」。しかし最近では、新薬の投与によって寛解(全治とはいえないが症状が治まること)するケースもあるそう。
今回は、新薬によるFIP治療を行った飼い主さんの体験記をご紹介。FIPの最新事情について、獣医師の田草川佳実先生に教えていただきました。
FIP治療体験記「絶対諦めたくなかった」
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東京都 A・Tさん/R・Nさんステラくん(オス・9カ月(取材当時)/デボンレックス)
迎えたばかりの愛猫ステラくんがFIPを発症。飼い主のTさんとNさんは、「不治の病」と知らされるも、諦められず新薬の投与を受けることにしました。
呼吸の早さに異変を感じて……
「ステラが5カ月齢くらいのとき。ある日、呼吸がいつもより早く、お腹が波打つような感じだったので、動物病院で受診しました。検査の結果、FIPの可能性が高いと診断されました。それと同時に『FIPは死亡率が高く、助かる見込みはほとんどない』ともいわれ愕然。
家に帰り、『どうにか助けられないだろうか』と手当たり次第にインターネットなどで病気の詳細を検索しました。絶対に諦めたくないという気持ちが強かったです」
新薬を扱っている動物病院で治療
「幸いFIPの新薬を扱っている動物病院を紹介され、すぐに投薬を開始。投薬の際は、ボール状の補助おやつを使用したので、ステラが薬を拒むことはありませんでした。約3カ月の投薬期間を経た現在、ステラは発症以前と変わらず元気に過ごしています。
『寛解』と診断されたときは、本当にホッとして心からうれしかったです。以前は治らないとされていた病気も、医療の進歩でよくなる可能性があると再認識できました」
FIPってどんな病気?
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FIPは、猫の腸内にある猫コロナウイルスが、強い病原性のあるものに突然変異することによって発症する病気です。生まれつきウイルスを保有しているケースもあれば、感染猫の便と接触することで感染するケースも。ただし、感染しているからといって必ずしも発症するわけではありません。
症状は、最初に発熱、食欲不振、元気消失など。病気が進行すると、炎症が起きることで2タイプの症状が発生します。お腹や胸に液体がたまるウエットタイプと、脳や肝臓などに肉芽腫ができて痙攣や麻痺、異常行動(同じ場所をぐるぐる回る、突然怒ったように鳴くなど)が見られるドライタイプです。なかには両タイプの症状が出る場合も。
1才未満の子猫に発症することが多いですが、まれに成猫でも発症することがあります。
FIPの予後・予防法は?
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治療によって寛解(全治とはいえないが症状が治まること)すれば、元通りの生活が送れるようになります。気になるのは新薬の長期的な副反応ですが、使われ始めてまだ数年なのではっきりわからないのが現状です。
予防法については、ウイルスの感染が必ずしも発症につながるわけではありませんが、感染猫と非感染猫との接触は避けたほうが、新たな発症を防ぐ一助になるでしょう。また、ストレスが発症の引き金になるともいわれているので、猫にとって快適なトイレや食事環境を整え、適度に運動させることなどを心がけましょう。
新薬の開発により、寛解するケースも見られてきたFIP。まずは愛猫の健康状態に少しでも異変を感じたら、動物病院で受診することが大切です。
お話を伺った先生/田草川佳実先生(聖母坂どうぶつ病院副院長)
参考・写真/「ねこのきもち」2024年5月号『“治らない”ともいわれていました。 子猫に多いFIPという病気』
文/宮田あゆみ
※記事と写真に関連性がない場合もあります。