元銀行員が語る…社会人向け金融教育をして感じた「金融リテラシー向上」に最も早い方法

iDeCoも新NISAも始められない人はどうしたらよいのか

新しいNISA(以下、新NISA)導入後半年が経過し、年始から盛り上がっていた投資熱は若干落ち着いてきたように感じます。

その一方で、iDeCoの拠出限度額の引き上げが検討されるなど、政府は「資産運用立国」実現のため、投資活動のさらなる活性化を目指しています。

このように投資を始めやすい環境にある今でも、iDeCoや新NISAを始めていない人は多いと聞きます。金融リテラシーの不足や投資に対する漠然とした不安感を抱えていることが影響しているようです。

投資を始めていない人はどれほど多いのでしょうか。また、なかなか投資に踏み出せない人は、何をすれば金融リテラシーを身につけられるのでしょうか。

社会人向け金融教育を行ってきた元銀行員の私が、その経験をもとに、具体的な方法をご紹介します。

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NISA口座開設率は約3割、投資を行わない人はどのような人か

まずNISAの口座開設率について見ていきましょう。

2024年4月に公開された日本証券業協会の「NISA口座の開設・利用状況」によると、NISA口座を開設していない人は66.6%に及び、特に50歳以上60歳未満は70.3%と7割も占めることがわかります。

実際は大多数の人がNISAを始めていないことがわかります。どのような理由で始めていないのでしょうか。

投資を行わない理由トップ3は何か

金融庁の調査によると、投資未経験者が投資を行わない理由は、以下の通りです。

  • 第1位:「余裕資金がないから」(56.7%)
  • 第2位:「資産運用に関する知識がないから」(40.4%)
  • 第3位:「購入・保有することに不安を感じるから」(26.3%)

となっています。

第1位の「余裕資金がないから」(56.7%)のような理由の場合は仕方ありません。

一方、注目したいのは、第2位の「資産運用に関する知識がないから」(40.4%)は知識不足を理由に始められない人たちです。

これらの人々は、どのようにして金融リテラシーを高めていけば良いのでしょうか。

金融リテラシー向上のために、まずは資産全体を把握しよう

これまで700回以上の金融教育セミナーなどを実施してきて痛感したことは「人は、知識をどれだけ得ても、自分にとって何が必要なのか理解しなければ、知識を吸収することができない」ということです。

私自身、学生時代は金融リテラシーが低かったこともあり、その経験を踏まえてわかりやすい言葉選びを心掛けて金融教育をしていました。ただ、もちろん私の力量不足である可能性も大きいですが、受講者が上の空になってしまうことも多々ありました。

そのため、資産の計画や老後の必要資金を試算するシミュレーションを取り入れたところ、資産全体を把握できたことで問題意識を持ち、前のめりに話を聞く受講者が増えました。

金融リテラシーを向上させるためには、知識をつける前に自分の資産状況を把握することが重要です。そのためにはシミュレーションツールが役立ちます。

ライフプランシミュレーションや老後資産シミュレーションなど、無料で利用できるシミュレーションが数多く公開されていますが、まずは資産全体を理解することができるライフプランシミュレーションをおすすめします。

誰でも使えるおすすめのライフプランシミュレーション2選

ライフプランシミュレーションとは、人生の計画(ライフプラン)をもとに、定年後、90歳くらいまでのシミュレーションを作成し、資産全体の増減を確認できるものです。保険の見直しなどをされたことのある人は、見たことがあるかもしれません。

ここからは、公的に公開されているライフプランシミュレーションツールをご紹介します。

【その1】一般社団法人 全国銀行協会「ライフプランシミュレーション」

金融リテラシーが低いと感じる人には、こちらのシミュレーションツールがおすすめです。
簡単な項目に答えるだけでシンプルではありますが、将来の収支状況をグラフで確認することができます。

シミュレーションには「きほんシミュレーション」と「くわしくシミュレーション」の2種類あり、「きほんシミュレーション」は簡単な情報を入力するだけで完了します。

プロからのフィードバックもあるため、資産形成について考えるきっかけになることでしょう。

【その2】金融広報中央委員会「知るぽると」ライフプランシミュレーション

前述のライフプランシミュレーションは、簡単にシミュレーションできる分、結果もやや一般的です。より解像度の高いシミュレーションが良い場合は、自身の希望や情報を詳細に入力することができるこちらがおすすめです。

専門家が作成するライフプランシートに近いクオリティのものを、自分で作成することができるため、より明確に資産状況がわかり、今後の対策も立てやすくなるでしょう。

おわりに

金融リテラシーを向上させるために、やみくもに知識を仕入れようとする人も多いのではないでしょうか。

その前に、「こういう生活を送りたい」「そのためにはこの資金が必要」という具体的な目標を持つことで、必要な知識や情報が絞り込まれ、理解度が高まります。

ご紹介したライフプランシミュレーション以外にも、診断ツールを提供している企業は複数ありますので、自分にあった診断ツールで資産状況を明確化してはいかがでしょうか。

参考資料

  • 日本証券業協会「NISA口座の開設・利用状況(5,000人アンケート・2024年2月上旬時点)」
  • 金融庁「リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査結果」

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