ロープウェイ利用で「初夏のお花畑」&360度絶景の稜線へ! 「谷川岳」日帰り登山レポ

ガスが晴れ姿を表したトマノ耳。山頂に立つ登山者の姿も見える(撮影:河野美花)

■標高1,319mの登山口!「谷川岳ロープウェイ・天神平駅」からの天神尾根コース

天神平から天神尾根を使って、谷川岳登頂を目指すコース(日本地理院地図より引用)

群馬県と新潟県の県境にある日本百名山「谷川岳(たにがわだけ)」は、標高1,963mのトマノ耳と標高1,977mのオキノ耳、2つの山頂の総称を指し、双耳峰(そうじほう)とも言われる。日本屈指の岩場で知られる谷川連峰(たにがわれんぽう)の代表的な存在で、その風景美は多くの登山者を惹き付けている。

一方で急峻な岩壁が有名なため、上級者向きの山と思われがちだが、谷川岳ロープウェイを利用し、天神平(てんじんだいら)から登る「天神尾根(てんじんおね)コース」は、初級者から中級者でも谷川岳を満喫できる。

標高1,319m地点までロープウェイでアクセスできるうえ、登山道の整備が行き届き、避難小屋や山小屋もあるので、安心して挑戦できるのもポイントだ。さらに負担を軽減できる登山がお望みなら「天神峠(てんじんとうげ)ペアリフト」で、標高1,502m地点の天神峠からスタートすることも可能。

天神尾根コースのハイライトは、オキノ耳・トマノ耳の両山頂を結ぶ稜線で、360度見渡せるパノラマビューが広がる。豪雪地帯で知られる谷川連峰では夏でも雪渓が見られ、足元には可愛らしい高山植物が夏の登山道を彩ってくれるのだ。

●天神平から谷川岳のピストンコース 所要時間目安

往路:ロープウェイ天神平(1,319m)〜熊穴沢(くまあなさわ)避難小屋〜肩の小屋 約2時間
肩の小屋〜トマノ耳(1,963m)〜オキノ耳(1,977m)約30分

復路:オキノ耳(1,977m)〜トマノ耳(1,963m)〜肩の小屋 約30分
肩の小屋〜熊穴澤避難小屋〜ロープウェイ天神平(1,319m) 約1時間40分

歩行距離:距離6.4km、累積標高差:約890m、往復所要時間目安:4時間40分

■雪渓や高山植物など、魅力あふれる夏の谷川岳!

●谷川岳ロープウェイ乗り場へのアクセス紹介

乗客を迎えに来たゴンドラ。ワクワクの谷川岳登山が始まる

谷川岳へは群馬県側のみなかみ町からのアクセスが一般的で、日本一のモグラ駅、JR上越線 土合駅(どあいえき)が最寄り駅となる。この駅舎とホームの標高差が70.7mあることから「モグラ駅」と呼ばれ、488段もの階段を上らなければならない。電車でアクセスする予定の方は、谷川岳登山のウォーミングアップとして頑張って登ろう。

土合駅前から谷川岳ロープウェイ乗り場までは1.5kmほどあり、徒歩で約30分。関越交通水上(みなかみ)線バスが同区間を7分で結んでいるが、運行本数が少ないので、事前確認が必要となる。

マイカーアクセスの場合は、1,000台以上収容可能な谷川岳ロープウェイの立体駐車場を利用しよう。関越自動車道・水上ICから約25分でアクセスが可能だ。

●リフトか、徒歩か!? 天神平で運命の選択!

まぶしい新緑に覆われた天神平。奥に「天神峠ペアリフト」が見える

ロープウェイの15分間の空中散歩を楽しんだら、標高1,319mの天神平駅に到着だ。夏は新緑とニッコウキスゲの黄色い花が出迎えてくれる。

「さあ出発だ!」と歩き始めた途端「天神峠ペアリフト」が目に飛び込んでくる。1,502m地点の天神峠展望台までを約7分で結んでおり、足元には高山植物が咲き、リフトに乗りながらお花見が楽しめる。体力や予定コースと相談して、徒歩かリフトか、好きな方を選ぼう。

●「天狗の留まり場」を経て、「肩の小屋」へ

肩の小屋に飾られた『グレートトラバース3』撮影記念Tシャツと『ヤマノススメ』タペストリー

今回は天神平からの徒歩コースを紹介する。最初の休憩ポイントである1.6km先の熊穴沢避難小屋を目指し、朝日を浴びて輝く緑の中、整備された木道を進む。45分ほどなだらかな傾斜の道を進むと、赤く塗られた小屋が見えてくる。熊穴沢避難小屋だ。

小屋の中ではベンチで休憩できる。避難小屋から先は少しだけ傾斜がきつくなるので、休息をとっておこう。

ここから肩の小屋までは1時間30分ほどで、ちょうど中間辺りに「天狗の留まり場(とまりば)」と呼ばれる見晴らしのよい岩場があるので立ち寄ろう。岩場周辺では黄色いハナニガナや白くて可愛いゴゼンタチバナの群生も見ることができる。

美しい稜線の景色を楽しみながら歩いていると見えてくるのは、赤い屋根の「肩の小屋」だ。2024年は5月1日~11月3日まで営業しており、食事・宿泊もできる頼りになる存在だ。小屋の前には、どこまでも続くような谷川連峰の美しい山々の景色が広がり、登山者たちを楽しませてくれる。

●双耳峰・オキノ耳とトマノ耳を結ぶ美しい稜線歩き

トマノ耳山頂の標柱 辺りはガスに包まれてしまった

肩の小屋まで来たら、山頂は目前だ。双耳峰と呼ばれる2つの山頂と、それらを結ぶ稜線を歩く、谷川岳登山のハイライトだ。

手前の山頂、オキノ耳まで約10分、背の低い笹の間を縫うように岩肌の稜線を進む。顔を上げれば雄大な谷川連峰や雪渓が見られ、つい足元への注意が疎かにりそうだが、岩の凹凸につまずく恐れがあるので、注意しよう。

オキノ耳山頂はあまり広くなく、記念撮影の渋滞ができていることもある。混んでいるようなら、先のトマノ耳まで進んでから休憩するといいだろう。

双耳峰を結ぶ稜線は、雪渓あり、夏の花々の群生あり、もちろん周囲の山々の絶景もありと、見どころたくさんの景色が広がっている。一歩一歩踏みしめながら、景色を堪能しよう。

■谷川岳(たにがわだけ・標高1,977m)に咲く夏の花

夏の谷川岳は、アクセスもよく、ロープウェイとリフトを利用することで、自身の体力に合った登山コースを選択できる。もちろん、リフト山頂駅の展望台からの景色を目的に訪れるのも大いにアリだ。

最後に、この夏も我々登山者を楽しませてくれるだろう花々を少しだけ紹介する。秋の紅葉シーズンも高い人気を誇る谷川岳だが、涼しい夏山で、可憐に咲く花々と絶景を楽しんではいかがだろうか。

雪渓の周りで群生するハクサンコザクラ。ハート型の花びらがかわいらしい
桜に似た星型の花びらと、イチョウに似た葉を持つイワイチョウ

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