【7月5日付編集日記】主食

 林芙美子の朝食は面白い。随筆「朝御飯」に夏は「風変わりな朝食を愉(たの)しむ」とある。まず登場するのが、梅干しをのせた熱いご飯に冷水をかける食べ方。炊きたてへのこだわりが強く、粒が立ったコメを「キリキリ飯」と表現している

 ▼パンの食べ方も充実している。旬のトマトはピーナツバターを塗ったパンに挟んで食べると「美味(うま)きこと天上に登る心地」。つくだ煮をのせるのも乙な味という

 ▼英国での2カ月間は毎朝、同じメニューで閉口した様子。オートミールは口に合ったようだが、立ち返る原点はコメなのだろう。いくら洋食のうまさを書き連ねても、ふっくらしたご飯を子どもの「寝姿のよう」と例えた一文にはかなわない

 ▼コメの値上がりが続いている。昨夏の高温被害で流通量が減ったのが要因の一つのようだ。新米が出回れば価格は落ち着く見通しだが、今年も、観測史上最も暑かった昨年に匹敵する夏になると予測されている。来年以降、同じ状況が繰り返されないだろうか

 ▼世界に目を向ければ、干ばつなどの影響で穀物不足に苦しむ国がある。日本の食料自給率を支えるコメは大丈夫か、心もとない。何の手も打たず、後できりきり舞いになるのは、ごめんだ。

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