連載小説=醍醐麻沙夫さん「森の夢」掲載=初期移民の時代の空気伝える小説

醍醐さんの著作の一部

通訳5人男の平野運平に率いられてグァタパラ耕地に入った笠戸丸移民が、平野植民地の開拓に奔走してマラリアの悲劇に遭うまでを描いた小説「森の夢―ブラジル日本人移民の記録」は、作家・故醍醐麻沙夫さん(本名:広瀬富保とみやす)の代表作だ。醍醐さんは3月20日、がんの悪化により聖市内の病院で亡くなった。行年89歳。生前、彼の妻広瀬純子さんから同小説の掲載依頼を受けていた。追悼の一環として掲載する。
「森の夢」は1910年代、日本移民初期の頃の〝時代の空気〟を現代の言葉で伝えてくれる類い稀な小説。当時20代、30代だった〝移民の父〟上塚周平、通訳5人男や移民本人たちのリアルな心の動きを確かな筆致で表現している。
1935年に横浜に生まれ、学習院大学卒、1960年にブラジル移住。聖市で音楽家として活動する傍ら、同人誌「コロニア文学」が発行されると文学に目覚めた。1970年「聖人たちの湾」で群像新人賞候補作。1974年に「「銀座」と南十字星」でオール読物新人賞受賞。1975年「夜の標的」で直木賞候補。1979年にサンパウロ新聞文学賞を受賞した小説「森の夢」を出版した。

© BRASIL NIPPOU