日本維新の会・遠藤敬国対委員長 国会での“迷走”党内からの異論に「耳の痛いこと言って当然」反省の弁も

関西テレビの東京駐在・鈴木祐輔記者が、今注目されている重要人物たちにじっくり話を聞き、ホンネに迫るシリーズ。

第3回の取材相手は、日本維新の会・遠藤敬国対委員長。大阪18区選出の関西議員である。

2024年の通常国会は「政治とカネ」が主なテーマだった。維新は政治資金規正法の改正で、政策活動費の領収書の「10年後公開」を盛り込ませた自民党の修正案に、衆院で賛成。しかし、旧文通費(調査研究広報滞在費)の改革が会期末までに不可能となり、参院では反対に回った。チグハグだと党内の反発も強まり、地方議員などに向け「説明会」を開催。このインタビューはそのまさに2時間後に行った。水面下で一体、何があったのか。

■疑念や不信は「ごもっとも」

―Q.説明会の様子はどんな感じだったのか教えてください。

【遠藤国対委員長】「皆さんの疑念とか不信とか、例えば『有権者に指摘されている』とかのお話を賜りましたけど、ごもっともだと思うんですよね。旧文通費が一番の獲得目標だったんです。うまく改革ができていれば、こんなことになってなかったと思うので、大きな責任は僕自身も感じています。そのお話もさせていただきました」

このインタビューの段階では、筆者は説明会の「非公開部分」の中身を知らなかったが、維新関係者だけが見られるYoutubeの「生配信」が存在した。説明会の終了を廊下で待っていた時、アドレスを入手した他社の記者が、説明会の様子をスマートフォンで眺めているのを、うらやましく思ったものだ。のちに入手した音声データで、壮絶なバトルが展開されていたのを知ったわけだが、遠藤氏はその辺りも語っている。

―Q. 地方議員にいろいろ不満もある。維新は元々、地方議員と国会議員の関係が対等な関係で、国会議員じゃない人も幹部にいた。最近は国会議員団の幹部がそのまま党の幹部もやっていて、地方議員側からは「国会議員主導になってないか」という話もあります。

【遠藤国対委員長】「やっぱり色んな意見がそれぞれあって、全体的に一緒になってやっていこうっていう雰囲気を作っていくのは大事かなと思いますよね。耳の痛いことも言って当然やし、それを言われることを嫌がってはあかんと思うしね。国会議員団メンバーも、誠実に向き合っていくというんか、きちっとお答えしていくっていう姿勢は、改めて維新らしくやっていくのは僕はいいんじゃないかと思うし、普段からきちっとやっていれば、いくらでも説明できるんですよ」

こうした機会は普段から必要、と語る遠藤氏。「非公開部分」であった、吉村洋文共同代表からの質問についても自ら明かした。

【遠藤国対委員長】「吉村共同代表からは、『遠藤さんは最初からだまされてると思いましたか?今から考えたらどう思いますか?』という話も率直に、総理も、窓口をされた最側近の方も、だまそうと思って最初から掛かってきたんじゃないやろということを、質問に対して自分なりに自答して答えたんですけど、そこは大事な部分ではないかなと思うけどね」

■維新の交渉は「甘かった」のか

地方議員らに説明した、自民との交渉の内幕についても聞いてみた。「最初からだましたわけではない」と考えるなら、一体いつからなのだろう。

―Q. そもそも自民党との交渉というものは、どういう形で始まったのでしょうか。

【遠藤国対委員長】「政治改革特別委員会で各党の協議をしましょうと、まず平場で与党が持ちかけてきて、(維新の)政調会で10項目を作り上げました。それを国対委員長間で、私の方から(自民の)浜田委員長にお渡しをして、1週間もかかってないんだと思うんですけど、お断りの連絡がありました」

維新は5月21日、自民に対し、「企業・団体献金の禁止」を含む10項目を要求した。しかし自民は「要求の球が高すぎる」として交渉は決裂したという。事態が再び動いたのは5月29日。遠藤氏は頑なに名を明かさないが、自民の木原誠二幹事長代理が遠藤氏に電話を掛けてきた。

【遠藤国対委員長】「総理の名代の、最側近と言われる方から連絡がありましてね。『総理は、維新さんも巻き込んだ上での法案にするべし、という強い意思がある。もう一度話に乗ってくれないか』と。僕からすればもう終わった話なんで、『それは無理だよ』と申し上げたんです。最側近の方から『実は維新さんの案は全部飲み込んで、その上で自公・維新の協議でやりたいという強い意思なんだ』と。馬場さんは元々堅かったんで、『絶対に旧文通費とか大前提でなかったらできないよ』という話は申し上げたんです。すると『当然だ。総理も僕に頼んできたんだから当然だ』ということで、本当に飲み込んでいただけるなら交渉の余地はあるよねと、その日の夜から動き始めたんです」

維新側の交渉担当は、政策の中身について権限を持つ藤田文武幹事長。木原氏との交渉が始まり、2日後には、岸田文雄首相と馬場伸幸代表の党首会談で合意文書を交わすことになる。

―Q. 旧文通費ってこれまでずっと先延ばしになってきた。「いつなのか」に焦点が行っている中で、「合意文書にないじゃないか」という話がある。実際の口頭での話し合いでは、そういう明言はあったんですか。

【遠藤国対委員長】「『今国会中にやれ』ってことも僕、言ってました。そうでなかったらこの話に乗るはずないじゃないですか。やろうという思いは、かなりあったんだと思いますよ、総理も。ただガバナンスが悪すぎて、自民党のどこのボタンを押していいのかよく分からなくなって、最後はああいうふうに頓挫(とんざ)していくわけなんですけど」

のちの維新幹部の話によると、木原氏の認識として、「今国会中かどうかは、国対委員長同士で決めるものだと思っていた」節があるという。

維新側がつくった合意文書の文案には、旧文通費改革の期日を入れていたものの、自民側が外すよう要求したことも分かっている。一方、政策活動費の項目では、「領収書」という文言を入れることを渋る自民側を、維新側が押し切っている。一進一退の攻防があったようだが、遠藤氏は交渉の「甘さ」も率直に認めた。

【遠藤国対委員長】「次に改選されて総裁になるか分からない人と、『次の国会で』と約束します?普通に考えたら。だから『今国会』なんです。『今国会』っていうのはきちっと何回も言いましたから。僕は自分自身がだまそうと思ったこと、そもそも子供の時からないんで、だまされるだろうと思って最初から話を聞いてないっていう、僕の甘さなのか分かりませんけどね。そこは甘んじて、批判も受けたいと思います」

■衆院と同じなら参院はいらない

衆参の対応が真逆になったことにも、地方議員や国会議員から疑問の声が上がった。地元の支持者に直接疑問をぶつけられる立場だからだ。遠藤氏はどう答えたのか。

―Q.地方議員、それを支援している一般の方、あるいは支持者でも何でもない普通の国民から見ると、とても見えにくいし分かりにくい。「維新さん、何を自民党に擦り寄ろうとして、だまされて来とんのや」みたいな部分がある。

【遠藤国対委員長】「政策を実現するには数の力ですよね。要は権力側につかないといけない。野党全部と組んでも権力側にはならない。現有議席では厳しい。だけど、やっぱり権力側に、政府側に努力していただかないと、前に進まない案件っていくつもあるんです。そこは是々非々でやってきたと。今回も擦り寄ったわけでも何でもなくて、頼まれたからやってるだけのことなんですね」

旧文通費改革が間に合わなくなったのは、「有識者へのヒアリング」の日程調整がうまくいかなかったことが、直接の原因だった。遠藤氏は「1週間早く分かっていたら、衆院でも反対していた」と語る。

【遠藤国対委員長】「永田町では『衆議院で賛成して、参議院で反対するのはおかしい』ってどの政党も言うじゃないですか。誰がそんなの決めたんですか。それなら一院制でいい。参議院はいらないです。今回なんかは旧文通費のことでも、カーボンコピーで、下駄の雪で、邪魔をする。そうなってきたら、もう本当に税金の無駄遣い」

■「野党第二党」の生きる道

遠藤氏は国対委員長として、どう国会を動かすのか、これからも自民党と話をする立場だ。今後の付き合い方についても語った。

【遠藤国対委員長】「(期日を)書いてないから、『そこを指摘しなかったことが永田町ではダメなんだ』とか言われますけど、それじゃ人間同士の関係なんて保てないですよね。これから、紙で全部やり取りせなあかんのかと。茶番だとか色々言われますけど、何であろうが国会回して行かなあかんことが現実なんでね。押したり引いたり、最終的には最低限の人間関係で、細い糸でもつながっておかないと、これはできないんですよね。なので、そこは大事にしていかないと」

維新は野党第二党である。通常は野党第一党の立憲民主党が「筆頭」として自民と交渉する。しかし、それをただ見ているだけでは、いつまでも維新が望む政策は実現できない。

通常国会では、維新が主張した「国会のデジタル化」が進んだのも事実だ。衆院の議院運営委員会に「国会DX検討会」を設置。委員会ではタブレット端末をインターネットにつないで使えるようになり、遠隔地の有識者をわざわざ国会議事堂まで来てもらわず、リモートで参考人として意見を聴くこともできるようにした。維新が「ただ迷走しただけ」と思われることに、忸怩たる思いがあるようだ。

【遠藤国対委員長】「成果物はいっぱいある。ただ僕は自慢げに『こんなことしました、あんなことしました』って、今まで表で言ってないわけです。国民的な疑念を持たれるものについてはこうなるけど、普段うまくいってるものについては、あんまりスポットが当たらないっていうのもある。ただ『やられっ放し』ですることはない。永田町の常識であろうが、非常識であろうが、とことんやるという意思表示はやらせてもらった。別に『自民党べったり』とは違うのだなってことは、今回のドタバタ劇で多少はご理解いただけたと思いますよ」

~取材を終えて~

自民が最初に示した法案は、野党にとってゼロ回答に近いものだった。維新による交渉で「少しでも前進した」との見方もあれば、政策活動費で10年後の領収書公開など「とんでもないことを法律に書いてしまった」という捉え方もある。

維新は地方議員らの意見を聴いたその場で、自民と妥結した「10年後公開」に背を向け、政策活動費自体を廃止すると決めた。ならば最初から意見を聴けばよかった。「耳の痛いことも言って当然やし、言われることを嫌がってはあかん」。遠藤氏の言葉が本心ならば、まだ救いがある気がした。

(関西テレビ報道情報局東京駐在 鈴木祐輔)

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