長靴ではなくスニーカーを!今そこにある洪水の危機に備える 大雨の季節に命運分ける水害の事前対策と避難時の注意点

7月に入り、大雨の時期が到来している。台風や同じ場所に継続して強い雨をもたらす線状降水帯などに伴う大雨によって、特に7月から10月の夏から秋にかけては水害が発生しやすい時期である。

市街地に多い「内水氾濫」

様々な水害の中には「外水氾濫」と「内水氾濫」がある。

外水氾濫は、河川が氾濫したり、堤防が決壊したりすることで街中に水が流れ込んでくる水害で、いわゆる洪水である。

一方で、内水氾濫というのは大雨によって雨量が多くなると、下水道や側溝、排水路などで雨水の処理が追いつかず、下水道や用水路、マンホールなどから水が溢れだし、土地や建物などが浸水してしまう災害だ。

この現象が市街地で起こりやすいのは、地面の殆どがアスファルトやコンクリートで覆われていることによって、雨水が地中に浸透しにくくなるからだ。排水設備の不良も要因となる。

さらには、大雨や豪雨などによって大きな河川の水位が高くなると、そこに流れ込むはずの支流が上手く流れずに滞ってしまうことで、支流の水位が上がる。それによって、支流の堤防が決壊したり、排水路などに逆流したりすることもある。

近年、内水氾濫による浸水と、河川の堤防の決壊などによる洪水や他の水害が合わさるなどの複合的な要因によって、被害が拡大することが多い。

2019年10月、台風19号による大雨の影響で多摩川が増水し、東京都世田谷区や神奈川県川崎市を中心に浸水被害が発生した。これに伴い、さらに多摩川の支流でも氾濫が起こり、広い流域で顕著な水害が発生した。

また2018年7月、200人以上が亡くなった西日本豪雨(「平成30年7月豪雨」)では、広範囲で内水氾濫による浸水と洪水によって大きな被害に見舞われた。

岡山県倉敷市真備町では、本流の高梁川が増水し、流れ込みを阻まれた支流などの水が行き場を失った。このため、河川の水が町の下水道などに逆流し、排水設備の処理能力が追いつかないという状況になった。この内水氾濫による浸水に加えて、支流の堤防の決壊が次々に起こって洪水(外水氾濫)が発生し、住宅地などが浸水する被害が相次いだ。

事前の備え

一人ひとりができることは、まずは事前にハザードマップを確認することだ。ハザードマップには「内水ハザードマップ」がある。「内水ハザードマップ」は、大雨のときに下水道や水路などからの浸水が想定される区域や、浸水する深さなどの情報を知ることができる。また、「洪水ハザードマップ」も見よう。避難場所と避難経路も確認し、家族や同居人がいる場合は連絡方法を決めておくことが大切である。

家の周りにも注意を払い、側溝や排水口を定期的に掃除して、水はけを良くしておく。雨水桝の詰まりがないか、屋根や窓に不具合はないかなど、水害を防ぐための点検や修理、清掃などを定期的に行おう。

また、非常食や飲料水、薬などの備蓄品を忘れずに用意しておくこと。防災グッズをまとめたセットを用意し、緊急時にはすぐに取り出せるようにしておこう。浸水しないように大切な家具や家電を高い場所に移動させておくのも良さそうだ。停電などに備えて、スマートフォンなどの充電をしておくと少し安心である。

地下街・アンダーパスなど低い場所は避ける!

1999年6月に福岡で発生した大雨の際、地下街に一気に水が流れ込んだという記録もある。このように集中豪雨や大雨のときには、地下街や地下室、地下にある駐車場などのような低い場所は、水が流れ込む危険があるので避けよう。

地下にいると外の様子が分かりにくいため、雨が強まっていることや浸水に気づかず、避難が遅れるおそれがある。最新の気象情報をこまめに確認し、大雨になりそうなときは地下を避けるか、早めの避難を心がけよう。

また、非常に強い雨が降っているときには、道路のアンダーパスや車道トンネルのような低くなっている場所には一気に水が流れ込んで深く溜まることがある。とても危険で車が水没するおそれがあるため近づかないことだ。

避難するときの注意

避難するときは、動きやすい服装にしよう。けがをしないために長袖・長ズボン、足元はスニーカーがおすすめだ。中に水が入ると重くなって動きにくくなる長靴や、脱げやすいビーチサンダルなどは避けよう。雨が降っているときは、傘を差すよりはカッパなどを着用する方が安全だ。

また、避難するときは1人では行動せずに、2人以上で動くこと。水が深くなっているような場所は通らない。大人の膝くらい(50センチ程度)の高さを超えると、水圧の影響で思うように歩けなくなってしまう。水に流れがあると、浅くても簡単に足をとられて転倒し、流されてしまうおそれがある。

浸水が深そうに見えたり、流れがあったりする場所は避けよう。蓋の開いたマンホールや、側溝・用水路などに転落して流されないように、傘や長い棒などで足元を確認しながら、慎重に移動すると良い。

このような水害は、都市化や気候変動に伴い起こりやすくなっているとも言われており、深刻な問題である。私たちがまずできることは、事前の準備や対策をしておくことだ。いざというときには慌てずに、最新の気象情報や避難情報などを確認し、少しでも安全に命を守る行動をしたい。

【執筆:日本気象協会】

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