目指すべき社会のために投資先を選定する

5月31日は、「世界禁煙デー」でした。これは、世界保健機関(WHO)が、「たばこを吸わないことが一般的な社会習慣になること」を目指し、1989年に制定したものです。日本の厚生労働省は、1992年から、世界禁煙デーから始まる一週間(5月31日~6月6日)を「禁煙週間」とし、たばこの健康影響等の普及啓発を強化する期間としています。

WHOが2024年に公表した最新の報告書「WHO global report on trends in
prevalence of tobacco use 2000–2030」によると、世界の喫煙者の割合は減少傾向にあり、2000年に32.7%だった喫煙率は、2020年に21.7%になりました。その後、2030年には18.1%になると推測されています。日本についても、1966年の83.7%をピークとして、2019年には16.7%にまで減少しています。

同報告書によると、世界ではタバコを原因として、副流煙にさらされる非喫煙者 130 万人を含め、毎年800万人以上が死亡しています。タバコの使用者は世界で13億人を数え、その約80%以上は低・中所得国の人々でした。その背景には、タバコ生産への経済的な依存があります。そのため、これらの国々の経済を変えない限り、世界全体での喫煙量は減らないと考えられています。

そのような中、2023年1月にメキシコで、世界で最も厳しいレベルと言われた「反たばこ法」が施行されました。公共の場での喫煙を全面禁止することに加え、タバコ製品の広告や宣伝、スポンサーになることも禁止されました。また、商店でもタバコを陳列することができません。

2024年4月にはイギリスで、2009年生まれ以降の者は生涯にわたってタバコを購入できないとする法案が、下院において大差で可決されました。施行されれば、この法律が世界で最も厳しいものになると見られています。

タバコは、ニコチン依存症をはじめ様々な健康被害を引き起こすほか、未成年者による喫煙など社会的問題を抱えています。また、栽培の過程で、生産性向上のために世界各地で大量の農薬や肥料を使用していること、森林伐採による深刻な環境破壊を引き起こしていることなど、環境への悪影響が懸念されており、訴訟リスクも高く、エシカル(倫理)の観点からも、武器製造やアルコール、ギャンブルやポルノなどとともに、投資の対象から外されてきた歴史があります。

SDGs(持続可能な開発目標)が定める17の目標のうち、目標3は「すべての人に健康と福祉を」と掲げており、ターゲット3-aでは「すべての国で、たばこを規制する条約で決められたことが実施されるよう、必要に応じて取り組みを強める」とあります。

私たちが目指すべき持続可能な社会のために投資先を選定すること――それが、ESG投資です。

                                           リサーチチーム

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