8大会連続へ「サッカーW杯出場」のハードルは上がったのか(3)10回目の「正直」と5.5チーム中1チームの「現状」、アジア杯が示す出場チーム「格差」

最終予選で対戦するインドネシアとはアジアカップで戦って3-1で勝利。上田綺世のシュートが相手DFに当たって3点目が入った。原悦生(Sony α1使用)

サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、8.333…枠に入る確率。

■初めて最終予選に進出も…「ドーハの悲劇」

AFC加盟チームだけでワールドカップ予選が行われ、AFCに与えられた出場枠を争うようになったのは、ようやく1986年メキシコ大会からである。AFCに与えられた2枠に対し、史上最多の27チームがエントリー。このときには東西で1枠ずつ分け、日本は韓国との「東地区決勝」まで進んだが、連敗に終わった。

1990年イタリア大会にはアジアから26チームがエントリー。「アジア最終予選」には6チームが進出し、1回戦総当たりの形でシンガポールで集中開催された。当時はFIFAの国際試合カレンダーもなく、欧州のクラブでプレーしているアジア選手もほとんどいなかったため、10月に2週間の大会期間で集中開催という方式が可能だったのだ。

そして1994年大会も同じ方式で行われた。エントリーは29か国。「1次予選」を勝ち抜いた6チームが1993年10月に中東のカタールに集まり、2週間の総当たり大会を戦った。

Jリーグ開幕の年である。日本は「サッカー熱」のまっただ中だった。この形の「アジア最終予選」が始まって初めて「最終予選」に進出し、ワールドカップ初出場まで「あと数分」のところまでいきながら後半のアディショナルタイムにイラクに得点を許して2-2で引き分け、出場権をつかみ損なった。「ドーハの悲劇」である。

■エントリー11回目、予選出場10回目で…

そして1998年フランス大会。出場チームが24から32に増やされ、アジアには3.5枠が与えられる。エントリーは36に急増し、「最終予選」は5チームずつ2グループ。両グループの1位は出場権を獲得し、2位同士の対戦で勝ったチームが「第3代表」の地位を獲得。敗れたチームはオセアニアとのプレーオフに回る。そして日本は苦しみながらもグループを2位で終え、延長の末イランとの「ジョホールバル決戦」を制して初のワールドカップ出場を決めた。エントリー11回目、予選出場10回目での出場権獲得だった。

続く2002年大会は開催国枠での出場だったが、日本は、2006年、2010年、2014年、2018年、2022年と5大会連続して「最終予選」を勝ち抜き、ワールドカップ7大会連続出場を果たした。2022年カタール大会ではアジア枠は「開催国+4.5」となり、結果的にはこれまでで最多の6チームが出場したが、2006年から2018年までの4大会はすべて「4.5」のまま固定され、「最終予選」は4~6チームの2グループ、各組2位までが自動出場、3位同士の対戦で勝ったほうが大陸間プレーオフに回るという形だった。そのすべての大会で、日本はプレーオフに回ることなく出場権を獲得してきた。

■アジア杯64%の試合が「1点差か引き分け」

アジアからのエントリー数は2010年大会で43チームとなり、2018年大会以降は加盟全46チームとなった。「4.5枠」は、およそ10チームに1チームがワールドカップ出場ということになる。「ドーハの悲劇」となった1994年大会では、エントリー29チームに2枠、すなわちおよそ15チームに1チームの割合だった。そして、これから「最終予選」が始まる2026年大会は、46チームに割り当てられた出場枠は8.3333…。アジアのおよそ5.5チームに1チームがワールドカップの切符をつかめることになる。

今年1月から2月にかけてカタールで開催されたAFCアジアカップには24チームが出場したが、グループリーグ全36試合で4点差がついた試合はわずか1試合に過ぎず、3点差も4試合。2点差が8試合で、実に64%にあたる23試合が1点差あるいは引き分けだった。僅差の試合が多かったということは、出場チームの格差が縮小してきたことを示している。

出場権をつかむ確率が高くなったとは言っても全体のレベルが上がっているのだから、予断は許さない。最善の準備をして、死力を尽くしても、どんな結果でも起こりうるのがサッカーというゲームだ。だが同時に、最終的には力のあるものが上位を占める確率が高いのが、「リーグ戦」というシステムでもある。

さて、今回の「アジア最終予選」のハードルは、高いか、低いか―。読者はどう考えるだろうか。

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