【7月6日付社説】転出超過の解消/若者の希望かなえる場所に

 若者らが生まれ育った土地で、理想とする働き方を実現できる環境を官民挙げて整えていきたい。

 若い世代を中心に人口の県外流出が続くなか、県が首都圏で暮らす本県出身の若者を対象に初めて行った調査で、「県内への就職や転職を検討したことがある」との回答が4割超に上った。

 県によると、本県の人口は転入より転出が大幅に上回る「転出超過」の状況が続いている。2018年以降の転出超過は年間6千~7千人に上り、このうち15~24歳が7割超を占める。進学や就職で本県を離れた若者が戻ってこないことが背景にある。

 今回の調査では、就職や転職を機にUターンを検討しても、「都市部より給料が低い」「入社したい企業や職種がない」などの理由でUターンを断念してしまっていることが確認された。

 自治体や企業、経済団体などが長年、若者にとって魅力ある職場を確保する取り組みを進めてきたものの、待遇面で条件のいい大企業が集中する首都圏との差は埋められていない。特に女性は、賃金や仕事内容の男女格差を理由に地方を離れるケースが多いという。

 国は都市圏から地方に本社機能を移すと、税金の優遇措置が受けられる制度などを設けているが、成果が乏しい。男女の待遇格差や非正規労働の解消など、雇用環境の改善に取り組む地方の企業への支援策をさらに強化すべきだ。

 調査では、Uターン促進のため行政に期待する支援策は「引っ越し費用」が最多で、家賃や交通費の補助が続いた。求人関連の情報提供を求める声も多い。

 県内外の一部自治体では、移住費用や奨学金の返還の補助などの経済的な支援策を実施している。県や市町村は、こうした取り組みの拡充を検討してほしい。

 回答者の約6割が進学を機に本県を離れていたことも分かった。県内に進学しなかった理由としては「希望する学校がなかった」が最も多かった。

 少子化に伴い、全国各地で地方の大学の再編や縮小が進み、定員割れなどで経営難に陥っている学校もある。地方の大学や専門学校が存続できなければ、首都圏への流出がさらに拡大するだろう。

 家庭や経済的な事情で地元を離れられない人に高等教育の機会を提供するだけでなく、地域で活躍する人材を育てるためにも地方の大学などの存在は大きい。地方に山積する課題の解決に取り組む学生もいる。国や自治体は、地方の高等教育の充実、維持にも危機感を強めて取り組む必要がある。

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