53歳でツアー初出場の「ティーチングプロ」に100切りのコツとゴルフの魅力を聞いた

大木昌幸は静岡県内でアマチュアを教えるティーチングプロ(撮影/大澤進二)

◇国内メジャー第2戦◇日本プロゴルフ選手権大会 2日目(5日)◇富士カントリー可児C志野C(岐阜)◇7164yd(パー71)

全米プロゴルフ協会(PGAオブ・アメリカ)が主催するメジャー「全米プロ」には毎年、協会認定の指導資格などを持つクラブプロが出場する。その数、フィールドの156人のうち20人。普段は各地でアマチュアを教えることを生業とするティーチングプロが、賞金で生計を立てる一流のツアープロと同じ舞台でプレーする。2023年にはカリフォルニア州のコース所属のマイケル・ブロックが8位に入り、大会の主役の一人になった

同じように、144人が出場する日本プロゴルフ協会(PGA)主催の「日本プロ」の場合、選ばれし指導者は毎年1人だけだ。前年秋に行われる「ティーチングプロ選手権」の優勝者が出場権を獲得。いつもは静岡県内の練習場、ゴルフ場に生徒を抱える大木昌幸(おおき・まさゆき)は今年、53歳にしてそのチケットを手に会場にやってきた。

本格的にクラブを握ったのは20歳の時。パー3コースを運営していた親戚がいたことから、幼い頃からゴルフに親しむ機会は多かったが、当時は「お子様お断り」の風潮がはびこっていた。「やってみたい」という思いは膨らむばかりで、高校卒業後に進学した服飾の専門学校を出る頃「やるなら今しかない」と一念発起。プロゴルファーを目指すことにした。

練習生、研修生として描いたツアープロになる夢は、30歳を前に諦めた。頭にあったのは将来のこと、家族のこと。ティーチングの道に進むことを決意し、2004年に32歳でPGAに入会。技術向上を通じてゴルフの楽しさを直接伝えることを仕事にした。

ツアープロとの真剣勝負の場が楽しかった(撮影/大澤進二)

ところで、「ティーチングプロ選手権」には年齢制限のないレギュラーのほか、シニア(50歳以上)、グランド(60歳)、ゴールド(68歳)の4部門がある。大木は年齢的にはシニアにもかかわらず、「付き合いのある人たち(プロ仲間)が皆、自分よりも若くて。『まあ、大木さんはまだレギュラーで』なんて言うものですから」と背中を押されたまま、レギュラーの部での参戦を続けている。

そして昨年、見事に優勝。「とりあえず賞金の100万円がもらえると思ったんです。しばらくして『あ、そうだ、日本プロに出られるんだ…』と」。夢を描いた時期に縁のなかったツアー競技に今回初めて挑戦。通算17オーバーで予選落ちし、悔しさをにじませながら「やっぱり(ツアープロの)皆さんは試合に慣れている。ショットやパットのうまさはもちろんですが、少しくらいのミスを気にしない」と、別のカタチのプロゴルファーの力を肌で感じた。

あらゆるレベルのアマチュアゴルファーをレッスンする毎日。例えば、100を切るために必要なことは何だろう。大木は「100切りはアプローチですよ」と即答した。「最低限のアプローチができれば、100は切れると自分は思っています。ただね、なかなかそうはいかない(納得してくれない)んですよね。皆さんは(コーチに)ショットを教えてもらいたいもの。『100切りはアプローチだよ』と言っても、身が入らないんです(笑)」

真剣にゴルフを初めて30年、プロになって20年。ゴルフの一番の楽しみは「やっぱり年齢を問わずに一緒に回れること」に尽きるという。「こんなにバリバリやっている若い選手と、53歳のオジサンがね、一緒にプレーさせてもらえるチャンスがある」。その魅力を自ら体現する2日間になった。(岐阜県可児市/桂川洋一)

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