救援ルート確保「48時間内」 災害時 人命救助を円滑化 茨城県道路啓開計画

自然災害の発生時、人命救助に向けた救援ルートを確保するため、茨城県は「道路啓開計画」を策定した。行政、業界団体などによる情報集約や作業内容をタイムライン(行動計画)で明確化し、寸断された道路を「48時間以内」に切り開く目標を掲げた。ルート確保に伴う初動対応が難航した能登半島地震を教訓に、対策の具体的な時間軸を定め支援の円滑化を進める。

道路啓開計画は、大規模地震や水害などの自然災害が発生した際に、人命救助に必要な緊急車両を通行させるための指針。崩落した土砂やがれきの撤去、放置車両の移動のほか、亀裂などによる路面の段差を緊急的に解消し、救援ルートを確保する。

計画は県内12カ所の県土木事務所や工事事務所、国土交通省、建設業協会などの業界団体と連携した役割を明確化した。「いつ」「誰が」「何をするか」を定めたタイムラインに基づいて道路の啓開を図ることで、対応の遅れや漏れを防ぎ、作業を円滑化する。

具体的には、行政や道路管理者、業界団体などによるパトロールで発災後2時間内を目安に被災道路の状況を把握し、災害対策本部に情報を集約。本部で優先的に啓開を進めるルートを検討、決定した上で、実際に業界団体へ啓開作業の協力を要請する。

啓開作業の開始や放置車両の移動に必要な災害対策基本法に基づく区間指定は、いずれも24時間内の着手を目指す。電柱倒壊に伴う撤去作業は電気事業者などへの対応を要請。被災した各地域での啓開状況は本部が把握し、48時間内で完了させる方針。

がれきの下敷きになるなどした被災者の生存率は、災害発生から72時間を経過すると大幅に低下するとされている。能登半島地震では交通網が限られた地形的な環境に加え、道路寸断による悪条件が重なり救援活動が難航。物資輸送や復旧も悪路に阻まれ、ルート確保は課題となった。

これまで、県は土砂や倒壊した住宅の撤去などで協定に基づき業界団体と連携してきたほか、放置車両を移動するためのマニュアルも定めてきた。ただ、「各作業が個別に行われ、時間軸としての整理がされていなかった」(県担当者)。

自然災害が頻発・激甚化する中、人命救助のためのルート確保は欠かせない。県道路保全強化推進室は「被災地の救援を担う関係機関が次に何をするべきか、時間の目安を定め、救助活動を円滑化していく」と話した。

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