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Netflixでヒット中の『Missナイト&Missデイ』は、ある出来事がきっかけで、20代と50代を夜と昼で行ったり来たりすることになってしまったヒロインの物語だ。ファンタジーとラブコメディ、サスペンスの要素に加えて、物語の舞台である地方都市のおおらかな人間模様も描かれている。
地方都市に赴任してきたエリート検事のケ・ジウン(チェ・ジニョク)。冷徹で仕事に厳格な彼が、夜のイ・ミジン(チョン・ウンジ/Apink)や昼のイム・スン(イ・ジョンウン)、ミジンの両親(チョン・ソギョンとチョン・ヨンジュ)らと触れ合うことで少しずつ変化し、人間味を回復してゆくところは見ものである。
第5話の序盤にもそんなシーンがあった。(以下、一部ネタバレを含みます)
■『Missナイト & Missデイ』エリート検事の心を象徴する冷蔵庫を満たしたオンマのミッパンチャン
ちょっとしたトラブルで泥だらけになり、トラクターの荷台で運ばれたり、ミジンの家でシャワーを浴びさせてもらったり、着替えを借りたりしたケ・ジウン検事が夜遅く帰宅する。大変な一日だったが、その表情はいつもと違ってどこかやわらかい。
ジウンがミジンオンマ(母親)に持たされたエコバッグを開けると、タッパーウェアに入った惣菜が6つも。それを保存しようと冷蔵庫を開ける。
冷蔵庫は大きく、観音開きする立派なものだが、中に入っていたのは、しなびかかったミカンとナス。コンビニで買ったらしきサラダの食べ残しだけ。空間の多い冷蔵庫はジウンの心を象徴している。
ジウンはそれらをゴミ箱に捨て、ミジンオンマにもらった惣菜を入れる。彼の空虚な心が満たされたような場面だ。『Missナイト & Missデイ』にはこんなシーンが意外と多く、その繊細な表現は映画的である。
劇中でもときどきジウンの子供時代の回想シーンがあるように、彼は母親からじゅうぶんに愛情を受けて育ったとはいえないのだ。
ミジンオンマがウジンに持たせた惣菜は、我が国ではミッパンチャンと呼ばれる常備菜だ。
「食堂でも家庭でも、韓国ではごはんと主菜以外におかずがたくさん出てきてびっくりします」
と、よく日本人に言われるが、それも作り置きされたミッパンチャンあってこそ、である。
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■タッパーの中身は?白身魚か豚肉の揚げ焼き、ナムル、キムチ、うずらの醤油煮…
ミジンオンマは夫との関係や豪快な慶尚道訛りから男まさりに見えるが、自宅にチャントクテ(キムチや味噌、醤油などを作る甕の置き場)があることからもわかるように、じつは古風な良妻賢母の面もある。ウジン宅の冷蔵庫に収められたミッパンチャンも彼女の手作りだろう。
テレビの画面からは正確には判別しづらいが、タッパーウェアの中には、ほうれん草のナムル、センソンジョン(白身魚の揚げ焼き)またはコギジョン(豚肉の揚げ焼き)、キムチ、うずらの卵の醤油煮らしきものが確認できる。
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最近の人気ドラマ『ドクタースランプ』でも、パク・シネ扮するハヌルがパク・ヒョンシク扮するジョンウに食べさせようと、料理上手なオンマ(チャン・ヘジン)のミッパンチャンを持ち出すシーンがあった。
また、『涙の女王』のキム・スヒョン主演ドラマ『サイコだけど大丈夫』や、パク・ボゴム主演ドラマ『ボーイフレンド』には、うずらの卵のミッパンチャンがよく出てきた。
20年くらい前と比べるとあまり見られなくなったが、チュソク(秋夕)やソルラル(新正月)明けのバスターミナルで、大きな風呂敷包みを持っている若者がいたら、それは故郷のオンマに持たされたミッパンチャンの可能性が高い。
ジウンの心を満たしたミッパンチャンの場面を見て、私も光州に住む母を訪ねたくなってしまった。