枕元で充電は避けて!「携帯ミニ扇風機」爆発&出火を招くNG使用法

(写真:天空のジュピター/PIXTA)

7月も入ったばかりなのに、猛暑日を超える地域もあり、酷暑が続きている。

暑くなると街中や電車の中で携帯用扇風機を持つ人をよく見かける。カバンやポケットに入る、軽くて持ち運び便利な携帯用扇風機は、昨今も夏の人気アイテムだ。ところが、そんな夏の便利グッズに思わぬ危険が潜んでいる。

尼崎市消防局が6月13日にインスタグラムに投稿したある動画。【携帯型扇風機 大爆発】というタイトルで、これまでに24.5万回以上視聴されたその動画は、携帯用扇風機の危険性が描かれている。その内容とは……。

人形の首にかけた携帯用扇風機が爆発して粉々に砕けちるという、非常にショッキングな映像から始まる。

灼熱の日、一人の男性がリュックから携帯用扇風機を取り出そうとしたところ、手から滑り落ちて地面にぶつかってしまう。男性がそれを拾って首にかけて使用しようとすると……。

男性消防士が、「一度地面に落としたり、強い衝撃を与えてしまった場合は、使用するのをやめてください」と訴えかける。冒頭の爆発につながる恐れがあるからだ。

爆発の原因は、携帯用扇風機に内蔵されているリチウムイオン電池。携帯用扇風機が落ちたときにリチウムイオン電池が衝撃で損傷・発熱して爆発を起こすことがあるのだという。

尼崎市消防局担当者によると、同局がこの動画を投稿した経緯についてこう話してくれた。

「これから暑くなって携帯用扇風機の需要が高まるというタイミングをあえて選んでこの動画を投稿しました。爆発シーンは独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が実験したものです。

夏になると携帯用扇風機を持つ人が増えますが、それが火災を起こすリスクもあることを知らない人が多いので、注意喚起をしたかったのです」

■内蔵されているリチウムイオン電池から発火

尼崎市では、件数は少ないものの、数年前からリチウムイオン電池が原因の火事が一定数発生しているのだという。

「近年、毎年数件のリチウムイオン電池が原因の火災が報告されています。今年もすでに2件のリチウムイオン電池による火災が報告されており、これから暑くなる夏を前に、動画を紹介させていただきました」(尼崎市消防局)

この動画は多くの反響を呼んでおり、「気をつけたい」「知らなかったら落としてもそのまま使っていたと思う」などの書き込みがある。

また、「リチウムイオン電池が内蔵されている携帯電話から発火したことがあるので、リチウムイオン電池製品は怖い」といった体験談も書き込まれていた。

爆発の様子を映像化したNITEの製品安全センター製品安全広報課主任の岡田有毅さんに、携帯用扇風機のリスクについて聞いた。

「携帯用扇風機に内蔵されているリチウムイオン電池は中に引火性の高い電解液が使われています。

携帯用扇風機を落としたり、ぶつけるなどの衝撃を与えて、中の電池の容器が凹んだり、破損すると、電池の中がショートして発熱します。さらに発熱が発熱を引き起こすという“熱暴走”の状態を招き、中のガス化した電解液に引火すると火が噴き出たり、爆発したりします」

そして映像のような破裂が起こる。実際に爆発によって大やけどを負ったという被害報告も入っているという。

■充電中にも出火の危険が就寝時は枕元に置かない

さらに気をつけたいのが充電中。

「実は充電中の事故が最も多く、携帯用扇風機の充電中に電池部分から火を噴き出し、周りのものを燃やしてしまったという報告があります。

とくに就寝時は、異変に気付きにくいので、枕元で充電しっぱなしにするのは避け、体から離れた、周囲に燃えやすいものがない場所で充電をしてください」(岡田さん、以下同)

また、リチウムイオン電池は高温に弱いため、暑い日に車の中に置きっぱなしにするのも危険だ。

「ダッシュボードは80度もの高温になります。直射日光の下など、熱い場所に置きっぱなしにするのも避けてください」

リチウムイオン電池が内蔵されている製品は、携帯電話やポータブル型の家電を充電する充電器などほかにもさまざまある。ふだんから日常的に使用している身近なものだけに、そんなところに爆発の危険性があるとは思いもしない人が多いのではないだろうか。

携帯用扇風機事故報告は、2019年度から入ってきていて、2022年度まで、累計で45件の事故報告がある。

「事故の報告は年々減ってきてはいますが、暑い季節になると使用する機会が増えるため、今年も注意を呼び掛けています」

酷暑が予想されるこの夏は、とくに気をつけてほしい。安全のためにも、3つの予防策をとりつつ、落とした場合は2~3日ほど使用を中止して様子を見るように。

「ほかにも、充電ができなくなる、ファンが回らない、電池部分が熱い、膨らんで形状が変形しているなど、なんらかの異常を見つけたら、使用を中止してください」

廃棄時も注意が必要だ。一般ごみには入れず、必ず地元の自治体の指示に従って分別しよう。一般ごみに入っていたためにごみ収集車やごみ処理場で火災が起こった事例もある。

購入時は安心して使うためにも、連絡がとれるメーカーの製品を選ぼう。

「安全に配慮した製品を開発しているメーカーであれば、万が一、不具合が出た場合の連絡先が明記されているはずです」

涼は安全にとりたいものだ。

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