僅か9分に詰まった川真田紘也の“らしさ”「短い時間で自分の仕事を完璧にできればチャンスはある」

「SoftBank CUP2024(東京大会)」で韓国代表と対戦した男子日本代表は、大接戦の末に84-85で敗れた。4Qこそ攻防で韓国を圧倒し、この10分間を相手のフィールドゴール成功率を23.5%(4/17)に封じて、5つのターンオーバーを誘発。自分たちは河村勇輝とジェイコブス晶のビッグプレーにけん引されながら32点を積み上げたが、1〜3Qのプレーは決して日本の求める内容ではなかった。

結果以上に内容が伴わない試合で、トム・ホーバスHCは記者会見で「このゲームではうちらしいプレーが足りなかったです。いろいろなコンビネーション(選手の組み合わせ)を試したかったけど、それが(次々に)ダメになっていって。3Qは少し良くなったけど足りなかった。4Qはすごかったけど…。チームにも話しましたが、言い訳は作りたくないです。明後日はうちのバスケを最初から最後までやらなければいけません。今日の負けが勉強にならないとダメです」と、やや言葉を詰まらせながら険しい表情で語った。

ディフェンス面ではトランジションでのピックアップの遅れから韓国に簡単な得点を許す場面が多く、逆に自分たちは連係ミスからターンオーバーが増えた。良いディフェンスをしてもそれがなかなか得点につながらないもどかしい時間が続き、「相手の方が、自分たちがやりたいバスケを常にやってきました」と河村勇輝。強度の高いディフェンスと思い切りの良い3Pシュートを韓国が遂行する、まさに河村の言う展開だった。

しかし、苦しい展開の中でも光明はあった。まず挙げられるのはジェイコブスの活躍だ。2週間前の北海道大会ではなかなか見せ場が作れなかったが、この試合では4Qに3P3本成功の9得点と7本のリバウンドを記録。セカンドユニットの選手としては最も早い1Q残り6分47秒にコートインし、外れても積極的にシュートを打っていった。

ほかにもチームハイの23得点をマークした河村や3本の3Pで序盤のリズムを作った比江島慎も良い活躍だった。そして、もう一人。川真田紘也も“らしい”活躍でチームを盛り立てた。

メンタルの安定は一つの成長短時間で自分の仕事を

出場時間は10分にも満たない9分23秒、得点は2、リバウンドはなしと、そのスタッツは特筆すべきものではない。しかし、エナジーという面で彼の右に出る選手はいない。1Q残り4分22秒でコートインした川真田は、体を張ってゴール下を守り、攻めてはシールで味方のドライブレーンを作ったり、分厚いスクリーンをかけてズレを作ったり、ルーズボールにダイブしたりと、数字に表れない部分での貢献が光った。

そして極め付けは1Q残り46秒で決めたこの試合唯一の得点だ。ハイポスト付近でボールを保持した川真田は、自らドライブを仕掛けると鮮やかなスピンムーブで相手をかわし、レイアップをねじ込んだ。

「1Qでやったようにチャンスがあれば得点を狙いますし、ボックスアウトをしたりというところを短い時間で完璧にできれば、本当にチャンスがあるかなと思っています。今日の1Qでしたプレーをどれだけ継続できるかだと思います」

川真田はこう振り返る。同時に2Q以降の自身のプレーには納得しておらず、あくまでも評価できるのは1Qのみであると強調していた。

「まだ次の試合(韓国との2戦目)のメンバーは決まっていませんが、また出られるチャンスがあれば、短い時間の中でもっともっとアピールしたい」。川真田はそう意気込んだ。本人が語るように、彼のプレータイムは長くない。あくまでもジョシュ・ホーキンソンがベンチに下がる時間帯の“つなぎ役”だからだ。だからこそ、その5分や10分に魂を込める。ベンチにいる残りの時間はムードメーカーとしてチームを鼓舞する。

それが自分の役割だからこそ、100%遂行できない時間帯があったことを川真田は悔やんでいた。「今日のように負けているときに盛り上げ切れずに『ヤバいかも』と思ってしまった自分がいたので、そういうときでも盛り上げる、声を出すべきだと思いました。本当に小さなことですが、そういう小さなことが大事だと思うので、そういうところも徹底できたらと思います」

ホーバスHCも川真田がチームにもたらすエナジーについては「彼の気持ち(の入ったプレー)がすごく良い」と評価する一方で、「川真田は悪くなかったけど、やっぱりジョシュがベンチに下がったときに相手の得点が増えてしまいました。それは川真田だけのせいではないです。でも、川真田がオリンピックのメンバーに入ったとしたら、彼の出る時間はそんなに長くありません。その時間帯に彼がアグレッシブなディフェンスでコンテイン(ピックプレーでハンドラーとスクリナーの両方を守るやり方)できないのであれば日本にとっては大変なことです」と指摘。

現時点では高さとリムプロテクションに長けた渡邉飛勇と、泥臭いハードワークができる川真田がビッグマンのポジションを争っている状態だと、ホーバスHCは明かした。いずれにしても、ホーバスHCは彼ら2人を「ディフェンダー」と表現しており、短い時間でいかにディフェンスの遂行力を高められるかが選考のカギになる。

韓国との2戦目を終えた段階で、メンバーは16人から14人に絞られ、いよいよヨーロッパ遠征へと向かっていく。あるいは、川真田が日本代表のユニフォームをまとってプレーするのは、次が最後になるかもしれない。だからこそ、「去年は本当に代表に入れるのか分からない状況で、あたふたしながらバスケをやっていたイメージだったので、そこから比べればメンタル的には成長できたのかなと思っています。そういうメンタリティがあるのであれば、あとは結果を残すだけ」とすべきことは明確だ。

決して派手でも、高得点を挙げるわけでも、3Pシュートが武器というわけでもない。だが、川真田のエナジーとハッスル、そして明るいキャラクターはオフコートも含めて間違いなく日本の助けとなる。し烈なサバイバルレースの先に、川真田はオリンピック出場のチャンスをつかめるか。戦いは続く。

ベンチに戻った際には八村塁とも談笑

女子日本代表国際強化試合 三井不動産カップ2024(東京大会)
・[DAY 1]7月4日(木曜日)恩塚HC率いる女子日本代表は大差での勝利を収めた
日本代表125-57ニュージーランド代表

・[DAY 2]7月6日(土曜日) 日本代表VS 女子ニュージーランド代表
ティップオフ13:30~
<放送>テレビ朝日系列にて生放送 ※一部地域をのぞく

男子日本代表国際強化試合SoftBank CUP 2024 (東京大会)

・[DAY 1]7月5日(金曜日)
日本代表 84‐85 男子韓国代表

・[DAY 2]7月7日(日曜日)
日本代表VS 男子韓国代表
ティップオフ19:30~
<放送>テレビ朝日系列にて生放送

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