スペインにとって準決勝が聖戦になる理由とは?【ユーロ2024】

アルバロ・モラタ(左)ダニ・オルモ(右)写真:Getty Images

UEFA欧州選手権(ユーロ2024)は日本時間7月6日にドイツ、シュトゥットガルトのMHPアレーナで、準々決勝スペイン代表対ドイツ代表の試合が行われた。

過去にユーロで3度優勝しているスペインと4度優勝の開催国ドイツ。今大会の両者の好調なパフォーマンスからすれば、できれば決勝戦での対戦がふさわしいところだが、8強で相まみえることに。スペインのサンチェス首相とドイツのショルツ首相も並んで観戦した試合は、延長戦の末2-1でスペインが勝利した。スペインは、スコアレスドローでPK戦(5-3)の末にポルトガルを下したフランスと、10日の準決勝で対戦する。

ここでは、ユーロ準々決勝スペイン対ドイツの試合の流れを詳しく振り返り、またスペインにとって次の準決勝が「聖戦」となる理由を紐解いていく。


ダニ・オルモ 写真:Getty Images

先手を取ったのはスペイン

ユーロ準々決勝スペイン対ドイツ。試合は1分にスペインのFWニコ・ウィリアムズ(アスレティック・ビルバオ)のパスをゴール前でFWアルバロ・モラタが落とすとMFペドリ(バルセロナ)がシュート。4分にMFトニ・クロース(レアル・マドリード)が左足で強烈なタックルをするとペドリは膝が歪み宙を舞い回転しながら落下する。両チームの選手たちが走り寄るが、なかなか立ち上がれず8分にFWダニ・オルモ(ライプツィヒ)と交代して退いた。

15分、スペインのフリーキックFKをFWラミン・ヤマル(バルセロナ)が左足で打つも、低い弾道のボールはゴール右に外れる。21分、ドイツ右サイドからのクロスにMFカイ・ハフェルツ(アーセナル)がフリーでヘディングもGKが倒れながらセーブ。23分、スペインのMFロドリ(マンチェスター・シティ)が低い弾道のロングシュートもGKの正面。

34分、ドイツはディフェンスラインからゴール前へのロングフィードをハフェルツが胸トラップから右足シュート。39分にはオルモが右足ロングシュートもGKがセーブした。45分には、スペイン右サイドのヤマルがカットインからドリブルで左足ミドルシュートもゴールならず。スペインは攻撃が機能し、1点が欲しい前半の終盤にかけて攻撃を強めるもゴールならず。0-0で試合を折り返す。


フロリアン・ビルツ 写真:Getty Images

後半にスペインが先制も、終了間際にドイツが追いつく

後半に入り47分、ヤマルのパスにゴール目前のモラタがトラップし右足でシュート。51分に、ヤマルのラストパスにオルモが右足インサイドで狙いすまして決め、スペインが先制となった(1-0)。

追う立場になったドイツは攻撃に転じる。ドイツがビッグチャンスを迎えたのは70分。FWニクラス・フュルクルク(ボルシア・ドルトムント)が落として、MFロベルト・アンドリッヒ(バイエル・レバークーゼン)がシュートもゴールならず。

77分、ドイツは右サイドからMFフロリアン・ヴィルツ(バイエル・レバークーゼン)がクロスし、フュルクルクが走り込んで右足で合わせるとニアポストを叩く。82分、スペインGKウナイ・シモン(アスレティック・ビルバオ)のゴールキックの弾道が低くなると、ハフェルツが拾ってループシュートもクロスバーの上に外れる。

ついに89分、ドイツは左サイドから入れたダイアゴナルボールをゴール前でMFヨシュア・キミッヒ(バイエルン・ミュンヘン )が頭で落としヴィルツの右足シュートはポストに当たって吸い込まれた(1-1)。

ドイツがいざという時にフィジカルを全面に出す圧力は凄まじいものがある。90+4分には右クロスからFWトーマス・ミュラー(バイエルン・ミュンヘン)がシュートもゴールならず、延長戦に突入した。

ミケル・メリーノ 写真:Getty Images

最後は力尽きたドイツ

104分、スペインはミケル・オヤルサバル(レアル・ソシエダ)が右サイドから左足でシュートも外れる。105分+1分、ドイツはビッグチャンス。左サイドからミュラーのクロスにハフェルツが左足でシュートも枠の右に外れる。106分、ククレジャの左手にボールが当たるも、意図的ではなかったとしてPKにはならず。117分、ドイツはキミッヒが右サイドから入れたアーリークロスにフュルクルクが頭で合わせるもゴールならず。

119分、スペインDFマルク・ククレジャ(チェルシー)のショートパスを受けたオルモが左サイドから右足でクロスすると、途中出場のMFミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)が頭で決めてスペインが勝ち越し(2-1)。

前掛かりになるドイツに対してスペインは120+2分、カウンターからFWフェラン・トーレス(バルセロナ)がGKと1対1で右足シュートも枠を外れる。試合終了のホイッスルが鳴るとスペインは、まるで優勝したかのように喜びを爆発させ、お祭り騒ぎはしばらく続いた。


スペイン代表 写真:Getty Images

序盤スペインが優勢、ドイツは猛追のデータ

前半(45分)終了時点の攻撃回数はドイツの16回に対してスペインは24回。シュート数はドイツの3本に対してスペインは8本とやや差をつけた。

延長戦(120分)が終了した時点の攻撃回数は、ドイツもスペインも56回。シュート数はドイツの23本に対してスペインは18本だった。

つまり、試合の序盤はスペインのペースで、終盤にかけてドイツが追い上げたことをこのデータは示している。しかしドイツが後手を踏んだ感は否めず、最後にとどめを刺された形だ。


ダニエル・カルバハル 写真:Getty Images

スペインに勝利のための自己犠牲あり

スペインのDFダニエル・カルバハル(レアル・マドリード)は、同試合で自分が退場になって次の試合に出場できなくなるのを承知でファウルした。

同試合120+4分、ドイツの最後の攻撃かという場面で、FWジャマル・ムシアラ(バイエルン・ミュンヘン)がサイドをスピードに乗ってドリブル突破しようとすると後方から両腕で抱え込んで阻止したカルバハル。そのFKをGKがキャッチすると同時に試合が終了した。

この日、2枚目のイエローカードで、レッドカードを提示されたカルバハルは座り込んだまま涙した。意図的なファウルをすべきか否かは別として、チームが勝つために自己を犠牲にした。この涙は、スペインのイレブンがしっかりと目に焼き付けた。

この試合では最終的に16枚のイエローカードが提示された。カルバハルだけでなくスペインのDFロビン・ル・ノルマン(レアル・ソシエダ)は2枚目の累積警告で準決勝は出場停止に。また、ベンチでイエローカードをもらったキャプテンのモラタも累積で出場停止となり、涙を流しながら戦況を見守った。

10日のフランスとの準決勝は、スペインにとって自己犠牲を払った選手たちを決勝に立たせるための「聖戦」になるということが明確になった。

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