一度は離れたプロレスの舞台に“復帰”、ファンを興奮させた青野未来が抱えていた心の葛藤とは

マリーゴールドでも存在感を示している青野未来【写真提供:マリーゴールド】

自分の“武器”を確立するためにプロレスの世界へ

4.16マリーゴールド旗揚げ記者会見。その際に突如出現した元アクトレスガールズ勢の中に、青野未来の姿を見つけて色めき立ったファンは少なくないだろう。ベルトを獲得し、精神的な支柱でもあった青野の移籍。なぜ彼女はプロレスに“戻って”きたのか。(取材・文=橋場了吾)

もともと芸能活動をしていた青野が旧体制のアクトレスガールズでプロレスデビューを果たしたのは、2017年6月のことだった。

「プロレスを知ったきっかけは、役者さんの知り合いに紹介されたことです。やってみない? と誘われたのですが、当時は全然興味がなかったのでごめんなさいをしたんですよ。でもそのあとにアクトレスの代表を紹介されて『絶対スターになれるからやった方がいいよ』とごり押ししてくださって……。それで練習を見に行ったり、プロレスの試合を見たりしていく中で、プロレスの魅力を感じるようになりました。あと役者をやっていく中で、自分の”武器”になるものがほしい気持ちもあったので、プロレスをすることに決めました」

それまでプロレスの試合を見たことがなかった青野には、プロレスはどのように映ったのだろうか。

「当時の私にとってのプロレスは、2つ上の兄がいるのですが、子どもの頃にはよく技の実験台にされていた記憶があるくらいです(笑)。それが初めて生でプロレスを見たときに、自分より小柄な女の子がキラキラしていて……その一人がデビュー戦の相手でもあるなつぽいさん(当時は万喜なつみ)だったんです」

万喜とのデビュー戦は緊張でほとんど覚えてないというが、デビュー3か月で初勝利。その後、アクトレスの中心選手として活躍するも、2021年12月をもってプロレス団体としてのアクトレスは終了する。そのタイミングで他団体に移籍した選手もいるが、青野は“プロレス団体ではない”アクトレスへ残る決断をした。

「やっぱりすごく迷いました……。でも、私はアクトレスガールズに入ってなかったらプロレスをやってなかったですし、アクトレスガールズとして成功したいという気持ちが強かったので。実はそのタイミングでアクトレスを辞めるという選択肢がなかったわけではなくて、ただ辞めるという話を少し出したときに『未来が辞めるならアクトレス自体を辞める』と言われ、自分自身だけの問題ではなくなり、アクトレスガールズを守らなければいけないという責任感を感じました。あとは自分がほかの場所でプロレスをやるという想像ができなかったこともあって、当時は残るという決断をしました」

プロレスラーとしてもっと上を目指していきたいと決意を語る【写真:橋場了吾】

もっともっとプロレスを学びたい・吸収したいという欲求が再び

しかし、青野は今年4月に新団体マリーゴールドへの参戦を決意することになる。

「アクトレスに恩がありましたし、新体制でもやっていこうと思っていたのですが、ベルトも獲って新しい子も入ってきて、自分自身がアクトレスでできる限界を感じてしまったというか。この先、アクトレスで私ができることがわからなくなってしまったというのが、今回の移籍の大きな要因ですね。あと、役者として外の仕事に縛りができるなど、自分のやりたいことができなくなっている状況もありました。その中で、(ロッシー)小川さんに相談する機会があり、マリーゴールドとアクトレスのダブル所属はどう? というお話をいただいたのですが、マリーゴールドへの移籍を考えている選手とアクトレスに話をしようとしたのですが『それなら解散する』みたいな話になってしまって……それでダブル所属の話もできずに、移籍するという決断をしました」

青野は新体制のアクトレスで葛藤を抱えたまま戦い続けていた。

「プロレスをもっとしっかりやりたかったという要素は大きいですね。(アクトレスの)体制が変わる前には、アイスリボンさんにも出させてもらって『プロレス楽しいな』と思いましたし、まだまだ学びたい・吸収したいタイミングだったので。まだまだ“自分が引っ張っていく”より“自分がもっと上を目指したい”と思っていた中で体制が変わって、プロレスでやり残しているというより、まだ何もできていないんだ・やりきれていないんだという気持ちが強くなりました。私はプロレスを引退したわけではなかったので、マリーゴールドに移ったことで大きく人生が動きましたね」

(7日掲載の後編へ続く)橋場了吾

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