住宅共用スペースで相次ぐ性犯罪 子どもを守る「遠回りだけど最強の防犯」専門家に聞く

わいせつ目的を持つ面識のない人物から児童らが被害にあう事件が長崎市内で相次いでいます。

6月30日には長崎市内に住む男子高校生が、面識のない小学生の女子児童に対し公営住宅のロビーで乱暴しようとした上、ショーツ1枚を奪った「強盗・不同意性交等容疑」で逮捕されました。

また7月3日には19歳の男が、長崎市内のマンションのエントランスや階段などで、面識のない10代の専門学校に通う女性に抱きつきわいせつな行為をした「不同意わいせつ容疑」で逮捕されました。

家族からの通報で発覚した10代以下が被害者となった性犯罪。悪意を持って近づく人間から、特に子供たちはどうやって身を守ればいいのか?市民防犯の専門家で安全インストラクターの武田信彦さんに聞きました。

事件の受け止めは?

「極めて残念な事件だと思う。一件は高校生が加害者だったということですが『高校生が危ない』という間違った認識が広がらないようにしないといけない。まずは冷静にそして丁寧に防犯対策を重ね合わせていく必要がある。《危険な人物像》をかためてしまうことは防犯力を弱める。残念ながら悪意や犯罪の気持ちを持つ人間は《見た目が怖い感じ》で近づいてくるわけではない」

自宅周辺が安全とは言えない。増える尾行後の犯罪

「今回相次いだ2つの事件は、マンションや公営住宅の共用スペースが現場になった。最近増えているのは尾行されて事件に巻き込まれるケース。物色してターゲットを見つけて尾行し、人気がなくなったところで犯罪に及ぶ」

「中でも集合住宅の共用部分や自宅の周りでの犯罪被害は重大化しやすい。なぜかというと人気が少ないから。もし玄関の鍵を開けた瞬間だと押し込まれてしまう恐れがある。玄関から中に入ってしまうと逃げにくい。まさに気を付けるべき重点エリアの一つと言えると思う」

「子供だけ」の場面が増える現代 背景に保護者の忙しさ

「共働きの家庭が増えて、子どもと時間が合わない保護者が増えている。学童クラブの利用人数は過去最多を突破していて、家に帰ればいつも保護者がいる状況ではなくなってきている。少子化の時代に『子供だけの環境』が急速に広がっている背景があることをまずは認識する必要がある」

「その中で大切なことはやはり、大人が子どもに『付き添うこと』。可能な範囲でいい、時間ができた時には迎えに行ってみる、集団登校の場所まで一緒に行く。買い物に行った時近くにいる子供に目を向けてみる。保護者だけに限らない。1人の大人が20人ぐらいの子どもに対して防犯力を働かせることができる。悪意ある人間に対するバリア効果を生み出せる」

「遠回りのように見えるが、極めて犯罪をしにくい環境作りにつながる。その上で子ども自身が『自分を1人にしない』行動の習慣化や『観察力』などを身に着けることが大切になってくる」

防犯に必要なのは「優しさのキャッチボール」

「防犯に必要なのは強さではなく優しさ。優しさが100%大事。でも今はその優しさが出しにくい時代。不審者扱いされるのではないかという気持ちがある人もいると思う。そこを突破していただいて、まずは挨拶から始めて欲しい。防犯への意識は活気のある町作りにもつながっていく。子供だけ、保護者だけ、警察や学校だけの問題にしない」

「優しい気持ちをキャッチボールし合あう。それこそが市民防犯の一番強い力になる」

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