夫は風俗とパパ活、妻も不貞…セックスレス夫婦の悲惨な末路 それでも夫は「別れたくない」

写真はイメージです(metamorworks / PIXTA)

結婚して1年ほどという男性から、弁護士ドットコムにこんな相談が寄せられています。男性は、「妻のことが大好き」ではあるものの、夫婦がセックスレスになってしまったために、風俗の利用を繰り返し、パパ活もしてしまったそうです。

風俗は20回ほど、パパ活は5回で相手の女性に金銭を支払っているとのことです。

男性によると、それを知った妻はストレスから不倫、風俗店勤務、パパ活をしたといいます。男性は妻の行動を「当てつけ」といい、本人に暴いたところ、逆に妻から「不満に思っていたので離婚したい」と言われてしまったそうです。

しかし、男性は妻と離婚したくないとうったえています。風俗利用やパパ活に恋愛感情は一切なかったし、改心しているので2度と行かないといいます。

「失う時になって大事なものに気づきました」という男性。どうすれば夫婦関係の再構築ができるのでしょうか。小田紗織弁護士に聞きました。

●「全財産1億円を妻に渡す」という誓約書、効果は?

男性は改心の証として、「次に風俗利用やパパ活をしたら、妻に全財産1億円を渡して離婚する」という誓約書を書いてもいいと言っていますが、こうした誓約書に意味はあるのでしょうか。

「男性なりの誠意を示したのかもしれませんが、男性は現に『全財産1億円』を持っているのでしょうか。男性が妻に誓約書を差し入れて妻がこれを承諾すれば、契約の法的拘束力は生じるようにも思いますが、まず『1億円』を相手に払うということが実現可能なのかが疑問です。

もし、実現可能性の無いことを合意するものであれば無効となります。また『離婚する』という身分行為に条件を付けることはできませんので、この点でも法的拘束力はありません。将来的に離婚の調停や訴訟をする際に妻に有利な材料にはなるでしょう。

厳しいことを言うようですが、こういった短絡的な思い付きを誓約書にして差し入れようとすることで、かえって誓約に真実味がなく不誠実であると受け止められるかもしれません」

●離婚は認められるだろうけども…

では、もしも離婚の調停や裁判になった時、お互いに有責がある場合はどうなるのでしょうか。

「このご相談は、男性と妻のそれぞれの『風俗』『パパ活』の具体的な内容にもよって結論が変わってくるかもしれませんが、それぞれ配偶者以外の人と『不貞』『性的関係』があったとします」と小田弁護士は前置きしながら、次のように説明します。

「まず、離婚が認められるかですが、今回のご夫婦は少なくとも『平穏な夫婦生活を送る権利・利益』を互いに放棄しており夫婦関係が破綻していることは明らかですので、離婚は認められるでしょう。

実際には、今回のケースでは、妻が離婚したいと言っており、男性は離婚したくないということですので、男性が不貞を認めなければ、妻は男性の不貞を主張し証明しなければならなくなります。

貞操義務違反の慰謝料を互いに請求できるのかも問題になります。互いに不貞行為があり有責配偶者同士で慰謝料を請求し合う事例は私自身経験がなく、他にも探してみましたが見当たりませんでした。

男性が先に貞操義務に反しているため、男性が妻に対し不貞の慰謝料を請求するのは、法的保護に値しないように思います。もちろん、男性の不貞を理由に妻の不貞が正当化されるわけではありません」

●なぜ夫が風俗やパパ活にいたったのか原因と向き合って

実際にはどのような解決が考えられるのでしょうか。男性は再構築を望んでいるようですが…。

「互いに相手の不貞をどの程度証明できるかにもよります。仮に、互いに相手の不貞を具体的に立証した結果、互いの不貞の程度が同程度であったとすれば、調停では互いに慰謝料を支払わない内容になるのでしょう。

訴訟(妻が離婚と慰謝料を求める本訴を提起し、男性が慰謝料を求める反訴を提起するとして)では、それぞれに慰謝料の支払いが命じられることになり(※慰謝料請求債権は相殺できません(民法509条))、今回のご相談を読んだだけの私の印象ですが、妻の男性に対する慰謝料の方が少しだけ高く認められるのではないでしょうか。

法律の話ではないですが、ご相談を拝見した最初の疑問が、結婚1年目でご夫婦がセックスレスになり、男性が風俗やパパ活に至った根本的な原因は何なのだろう、ということです。

この原因について改善できないのであれば、いくら妻のことが大好きでも同じことを繰り返すのではないでしょうか。妻に対して誠意を示すのであれば、根本的な原因についてしっかり向き合って、改善策を示すことが最低限必要でしょう。

【取材協力弁護士】
小田 紗織(おだ・さおり)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士を目指し活躍中。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/

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