少年による強盗や殺人等の犯罪件数は減っているのに、少年犯罪は昔より凶悪化している様に感じるのはなぜ?【図解 犯罪心理学】

少年による殺人件数は増えていない

近年、テレビのニュースやワイドショーでは、少年犯罪の凶悪化、低年齢化を嘆く内容が多く報道されています。

大きなきっかけとなったのは、1997年に起こった神戸連続児童殺傷事件です。この事件は、遺体の一部が学校の校門の前に置かれていたり、犯行声明文が出されたりするなど、大きな話題となりました。そして捕まった犯人が少年であったことから、社会に大きな衝撃を与えたのです。この事件をきっかけのひとつとして、国民の声が高まり、2000年には少年法自体が厳罰化する方向で改正されました。

しかし実際のところ、少年による犯罪は凶悪化、低年齢化が進んでいるのでしょうか。これについては、多くの議論がされています。

数値だけを見ると、少年による強盗、殺人といった犯罪の数値は、1960年代頃と比べて減っています。1997年頃には強盗の件数が増加していますが、これは窃盗の際に被害者に怪我をさせたケースなどであり、凶悪化の証拠にはならないとされています。殺人事件にしても、少年による残虐な事件ということでメディアが大きく取り上げたため、強く印象に残っているにすぎず、過去にはもっと残虐な事件も起きています。そのため、一概に凶悪化、低年齢化が進んでいるとは言えないのです。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』
監修:越智啓太
監修者プロフィール
法政大学文学部心理学科教授。1965年、神奈川県横浜市生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科心理学専攻修了。警視庁科学捜査研究所研究員、東京家政大学文学部助教授、法政大学文学部准教授を経て2008年より現職。臨床心理士。専門は犯罪捜査への心理学の応用。著書に『犯罪捜査の心理学』(化学同人)、『ケースで学ぶ犯罪心理学』(北大路書房)ほか多数。

昨今、様々な事件や特殊詐欺など凶悪な犯罪が増えており、ニュースで犯罪に関する情報を聞かない日はないといえます。誰もが利用するSNSを介した犯罪も当たり前になっており、より巧妙化しながら身近に潜む問題にもなっています。こうした問題や実態について研究し、犯罪予防や再犯防止に役立てようとするのが『犯罪心理学』です。
犯罪心理学は、心理学の中でも実際の現場や実践に役立つことを目的とした“応用心理学”の1つで、特に犯罪行動・非行や犯罪者の心理・行動パターンに焦点を当てた研究分野です。専門書や教科書が多いジャンルですが、本書では図やイラストを用いて、1トピックを見開き1ページでわかりやすく解説。
“普通の人”が犯罪に手を出してしまう経緯、犯行内容から見える犯人像や周囲の環境、巧妙化する手口や防犯法など、知らなかった犯罪心理学を、楽しみながらもしっかりと学べる一冊です。

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