課題と自分を探究する思考力を身につける――nest第2期メンバーがアクションを通して得た学びとは

Day2 nest(SB Japan Youth Community)第2期活動報告

同じ志を持つ16〜25歳の若者が社会課題の本質を学び、その解決に向けたアクションを起こすことを目指して活動する、サステナブル・ブランド ジャパン(SB-J)のユースコミュニティ「nest(ネスト)」。現在、第3期の活動が本格化しているが、そこにつながる種をまいたのが第2期のメンバーたちだ。「課題と自分を探究する思考力を身につける」をビジョンに、フィールドワークやイベントの企画・開催などを通して、第2期のメンバーたちはどんな学びを得たのか。今年2月の「SB国際会議2024東京・丸の内」で行われた発表の様子を報告する。(眞崎裕史)

登壇者
入江遥斗・nest プロデューサー 横浜国立大学 都市科学部 / 一般社団法人アクトポート代表理事
芝原由貴・nest第2期メンバー
田中葉月・nest第2期メンバー
土岐厚博・nest第2期メンバー
山口笑愛・nest第2期メンバー
足立萌愛美・nest第2期メンター 関西大学 政策創造学部
※学校名、役職名は開催当時

入江氏

はじめに、創設期から第2期までnestのプロデューサーを務めた入江遥斗氏が、第2期は、「課題と自分を探究する思考力を身につける」をビジョンに掲げて活動し、前期は農業やものづくりなどの視点からフィールドワークを通じてサステナビリティに対する解像度を高めたことを説明。

東京・三鷹市の鴨志田農園では、五感を通じて持続可能な農業を学び、長野・諏訪市にあるセイコーエプソンの工場では、nestのメンバーが、製造業の本質を巡ってその場で感じた思いをエプソンの社員に投げかけ、それに社員が真剣に応じてくれたことで、両者にとって新たな気づきとなる対話が生まれたことなどが語られた。

そうした学びをもとに、後期は、「サステナブル・ソーシャルグッド」を標榜して実施する活動「nest action」をスタート。メンバーそれぞれの興味や関心を具体的なアクションに落とし込み、グループや個人ごとに、テーマ別のアクションにつなげていった。本セッションでは、そのうちの4つのアクションの内容やそれに取り組む思いが代表者から紹介された。

教育×キャリアに新たな視点と選択肢を生み出す

田中氏

キャリア教育をテーマにしたグループは、代表の田中葉月氏が、メンバーが中高生の頃に抱いた「社会との距離が遠い」との実感を背景に、「中高生が社会を知るためにまず仕事を知る」イベント“シゴト解像度UP講座”を企画したと報告。

具体的には、小学校教師と起業家という2つの顔を持つ講師を招いてトークセッションとワークショップを行い、「教育×キャリアに新たな視点と選択肢を生み出す」ことの可能性を探った。この結果、参加したメンバーから、教育の現場で働くことのイメージが明確になったという声が多く聞かれているという。田中氏は「nestをハブとして、多種多様な社会人と中高生をつなげていきたい」と今後の展望を語った。

自治体とnestで創る関係人口創出プロジェクト

土岐氏

土岐厚博氏のグループは「自治体とnestで創る関係人口創出プロジェクト」と題して、地域資源を活用した関係人口増加のモデルを練り上げた。注目したのは、地域の祭り(催事)だ。自治体、nest、観光客の3者が協力することで、祭りを主体とした関係人口の増加を実現する。

東京・檜原村をモデルとした企画では、祭りの際に地元の店を回るスタンプラリーや森林浴の実施などを提案。土岐氏は地域資源を活用することで「文化の継承や地域を盛り上げるきっかけになれば」と力を込めた。本企画は6月末現在、第3期メンバーが、8月17・18日の「払沢(ほっさわ)の滝ふるさと夏まつり」に向けて、村や企業との共創の具体化に動いている。

京都を深く知って体験する、スローでリッチな旅提案

芝原氏

京都のサステナブルツーリズム」を取り上げたグループは、代表の芝原由貴氏が、「地域と観光客の双方がハッピーになることが、経済の循環と心の交流を満たし、ツーリズムのサステナビリティを高めていく」と説明。そうした考えのもとに同グループは「1日に多くの有名スポットを巡る忙しい旅が定番化」して渋滞などを招いていることが京都の課題とし、これに対して「一つ一つのスポットを深く知って体験する、スローでリッチな旅」を提案、実際に旅の行程を立てて、旅行者自身がプランを書き込むパンフレットも作成している。

芝原氏は「京都で起きている課題は、あらゆる地域で今後起こり得る。ゆっくりじっくりとテーマを持って巡り、自分自身の感動や学びになる『新しい旅』が、あらゆる地域で実施されたらいい」と願いを語った。

ファッション軸に、持続可能性とウェルビーイングを同時に

山口氏

山口笑愛氏が代表のグループはファッションを軸に、持続可能性とウェルビーイングを同時に達成する方法を表現しようと、アクションを起こした。具体的には、まずエシカルブランドを身近に感じてもらうワークショップを開催。次に「Ethical Closet(エシカル・クローゼット)」と題した展示を行い、4つのエシカルファッションブランドの思いやストーリーを紹介した。

4つのうちの一つ、着物のアップサイクルブランド「u縁me(ゆうえんみ)」は、山口氏自身がnestの活動の延長線上でローンチしたブランドだ。山口氏は支えてくれたメンバーに感謝し、「サステナビリティやウェルビーイングをどうすればもっと革新的に表現できるか、探究していきたい」と笑顔を見せた。

入江氏から足立氏へと、nestプロデューサーのバトンが渡された

最後は、入江氏が第2期nestのメンバーを「密度の濃い、かつ行動力の高いアクションが集まっていた」と振り返るとともに、2年間プロデューサーを務めたnestのプラットフォームとしての魅力を「自分のやりたいこと、興味関心に対して、nest、そして、SB(サステナブル・ブランド)のチャネルを使って実践できる。行動力をグッと引き上げることができる」と強調。

入江氏からバトンを引き継いだ第3期のプロデューサー、足立萌愛美氏は「企業や団体、そしていろんなバックボーンを持つメンバー同士の交流が何よりnestの価値だ」とした上で、第1期、第2期の活動をさらに発展させ、「実際に社会を動かすところにまで持っていきたい」と抱負を語った。

SBならではのユースコミュニティとして年々成長するnest。足立氏と第3期のメンバーたちは、第2期から引き続き、「課題と自分を探究する思考力を身につける」をビジョンに次なるアクションを展開中だ。

© 株式会社博展