「リカバリーサンダル」理学療法士が“高齢者の室内履き”にスリッパより勧める理由

(写真左:プラナ/PIXTA)

今、人気のリカバリーサンダルをご存じだろうか。

業界紙によると、ある人気ブランドのリカバリーサンダルは、2024年6月期の売上高が、対前期比40%増の約32億円にのぼった。

もともとは、スポーツ選手が激しい運動をしたあとに、足の疲労を軽減するために作られたもの。

じつは認知症や寝たきりを防ぐうえでも効果的なのだという。

「認知症や寝たきりを防ぐには、外に出て歩くことが大切です。高齢者はとくに、自宅で一日中座ってテレビを見ている人も多く見かけますが、テレビは情報の受け取り方が一方通行になるため、脳に刺激が送られません。外に出ることで、さまざまな情報を、自ら受け取って感じ取ることが脳への刺激に。

また、室内にはない屋外のでこぼこのある地面の上を歩くことで、足裏に刺激が伝わり、脳にとってもいい刺激となるので、認知症予防にも効果的です。

足の筋力は使わないとあっという間に落ちていくため、歩く習慣を身につけることは寝たきり防止にも重要。

15分以上歩くことが理想ですが、5分でもいいので、毎日家の外に出て歩くことを意識してほしいですね」

こう語るのは、理学療法士の小川内竜一さん。

■土踏まずのアーチ部分が健康に歩くために重要

歩くことにより、足の筋肉が収縮し、足先に巡る血液を心臓まで送り返すことができる。血液の循環や代謝の向上にもつながるため、歩くことが大切。

その“歩く”ために重要な部分が足。第二の心臓とも呼ばれている大切な部分でもある。なかでも、土踏まずにあたる、カーブしているアーチ部分が、健康に歩くうえで最も意識すべきポイントだ。

「アーチ部分は、過度な疲労のほか、年をとって老化が進むことでも、自然とつぶれて平坦になっていきます。このアーチが崩れるとカーブのない平坦な足裏が特徴の、いわゆる“扁平足”になります。

地面からの衝撃を吸収する要素も持っている場所なので、扁平足になると衝撃がダイレクトに足関節、膝関節、腰に伝わり、負担がかかることで痛みの原因に。

最悪の場合、歩行困難になって寝たきりになることもあります」(小川内さん)

老化によるアーチバランスの崩れに対し、サポート力のあるもので支えて、関節や膝、腰部分への負担を軽減することが年齢を重ねても健康に歩き続けるうえで大切なのだ。そこで活用したいのが、リカバリーサンダルである。

■アーチ部分をサポートし足の疲労が感じにくくなる

リカバリーサンダルに詳しい、ウェブサイト「ランニングを科学する」の筆者で、パーソナルランニングトレーナーも務める日比野就一さんに話を伺った。

「リカバリーサンダルは、足裏の疲労感を軽減し、回復を促進する役割を果たすため、頻繁に運動を行う人のケアの一環として作られたものです。

アーチ部分をサポートし、保護することで疲労が残りにくくなり、疲れが感じにくくなる仕組み。履き心地がすぐれている点も、通常のサンダルとは大きく異なります」

では、選ぶ際には、どんな点をチェックすればよいのだろうか。日比野さんは、4つの機能の確認をすすめている。

「一部の製品にはアーチサポート性が強化されているものもあるので、ほかの機能とのバランスを見て選ぶとよいですね」(日比野さん、以下同)

また、リカバリーサンダルは主に3種類の形がある。使用するシーンや、自分の好みに合わせて選ぶとよい。

「高齢者がサンダルを履いて屋外を歩くことを想定して購入する場合、3種類の中でも、トングの部分で指が開くためにホールド感が高まる、“フリップフロップ型”がおすすめです。歩いたときに、かかとの部分が足裏から離れにくく、安定感のある履き心地で高齢者でも履きやすいと思います」

そして、リカバリーサンダルを選ぶうえでいちばん重要な点を教えてくれた。

「リカバリーサンダルは、自分の足のサイズにピッタリのものを選んでください。効果をしっかりと感じるためには、きちんと試着をして選ぶことが大切です」

また、リカバリーサンダルは柔らかい素材をソールに使用しているため、床を傷つけにくいので室内履きにも最適。

「高齢者には、スリッパはつまずきなどの原因になるため推奨していませんが、リカバリーサンダルは、つま先がぐっと上がっていて、段差もひっかかりにくく、足にフィットしてくれるため安全性が高く、室内履きにもおすすめです。

疲れにくいため、医療用サンダルとして使用している医師も多いようです」(前出・小川内さん)

リカバリーサンダルを活用し、歩く習慣を身につければ、認知症も寝たきりも怖くない!

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