「またみんなと野球を…」昨夏のレギュラーも春の関西遠征で左目負傷 間に合わなかった“最後の夏”の思い【新潟発】

それぞれの高校に様々な思いがある。夏の高校野球新潟大会で2季連続ベスト8に入り、公立唯一のシード校として今大会に臨んだ六日町高校。しかし、初戦で強豪の新潟産大附属と対戦し、9-1で敗れた。3年生8人が臨んだ最後の夏。そこにはもどかしい思いを抱えながら大会に臨んだ選手がいた。

“3年連続”夏の対戦…先輩の思い胸に

7月7日の柏崎市佐藤池野球場。スタンドには多くの観客が集まり、この試合の注目の高さを伺わせた。第5シード・六日町と新潟産大附属との一戦。実はこの2校、2022年夏・2023年夏にも対戦し、いずれも新潟産大附属がコールドで勝利。3年連続の夏の対戦となった。

2023年夏の大会で、グラウンドで悔しさを味わった選手がいる。六日町の背番号8・桜井在(さくらい・ある)だ。2023年夏の試合では8番レフトで先発出場。この時、2年生でスタメン出場したのは、桜井と4番の岡崎伶。エースの貝瀬の3人のみ。桜井はヒットを放つなど活躍したが、チームは8-1で敗れ、先輩の夏が終わった。

この悔しさを胸に、3人が中心となって迎えた秋の県大会は3勝を挙げ、ベスト8に進出した。豪雪地帯の南魚沼市にある六日町。雪に囲まれる中、チームはより高みを目指して冬の練習に汗を流した。

主力選手を襲った“まさかの事態”

雪が融けてきた春先の関西遠征で“まさかの事態”がチームと桜井を襲った。練習試合で相手の送球が桜井の目に当たり、負傷。手術をし、入院生活を余儀なくされた。当時について桜井は「ケガしてから、チームメイトにも会えず、学校にも行けず。家とか病院生活で、自分だけ置いていかれる感じがした。自分だけ止まっている感覚があったのが、一番辛かった」と振り返る。

新チームから2番打者としてつなぎの役割を担っていた桜井。離脱したことで抜けた穴の大きさに気づいたと主将の岡崎伶は振り返る。

「在は新チーム始まってから2番で主軸を打っていて、チームとしても欠かせない存在だった。在が怪我したことはチームにとって“在に頼りすぎてはいけない”ということを知らしめた」

桜井の穴を埋めるべく、チームは結束。春の県大会は公立で唯一ベスト8に残り、夏の第5シードを獲得した。

6月上旬に練習復帰するも…“在のために…”

桜井が練習に復帰できたのは、6月上旬。しかし、そこでまた目の不調が見つかり、練習に参加できず。チームの“主力”から“支える夏”に変わって最後の夏を迎えた。

初戦に勝てば、再び桜井の運動制限が解除され、「またみんなと野球ができる」。チームも“在のためにも”初戦突破を誓った。

六日町の夏終わる 感じた“仲間”との絆

しかし、新潟産大附属の壁は大きかった。エース貝瀬は5回まで3失点でしのぎ、4回裏には岡崎がセンターオーバーの3塁打を放ち、追いすがったが、後半に守備のミスが重なり、六日町の夏が終わった。

「野球ができる状況じゃなかった」桜井だが、仲間とともにグラウンドに立ち、戦えた最後の夏。試合後の控え室でチームメイトに「ごめんね」と声をかけられ、目から涙があふれた。

岡崎は「在の分も勝ちたかった。一番もどかしいのは在自身。自分たちはその分かり知れない悔しさ、野球できない悔しさを力に変えたかった」と心の内を語った。

桜井の高校野球はケガを機に大きく変わってしまったかもしれない。悔しくて辛い3カ月を過ごしたが、自分を必要としてくれた仲間がいた。ケガから復帰してきたときに迎え入れてくれた仲間がいた。桜井は最後に声を振り絞って言った。

「最後にみんなと野球がしたかったが、ただただ感謝の気持ちしかない。やっぱり、ありがとうっていうことしかない」

【夏の高校野球新潟大会2回戦】
新潟産大附属 9-1 六日町

(NST新潟総合テレビ)

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