4日間で最大200キロ歩き続ける!? オランダ国民熱愛の“超絶ハードなウォーキング大会”とは

オランダの「ハードなウォーキング大会」って?

無理せず自分のペースで身体を動かせる「ウォーキング」。競技種目である競歩は別として、手軽・気軽に取り入れられるとして幅広い世代に浸透しており、一般的に“激しい”という認識は持たれていないスポーツです。

しかしながら“超ウルトラハード”なウォーキング大会が、オランダに存在。その名も「歩け歩け大会」といいます。同国・ナイメーヘン市と姉妹都市である埼玉県東松山市の教育委員会(所在地:東松山市)のスポーツ課に所属し、実際に大会に参加した大木さんに話を聞きました。

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【写真】大会に集まった多くの人々

毎年脱落者が続出するという同大会、どんな内容なのでしょうか。

「毎年約5万人もの人々が参加します。1日あたりの歩く距離は性別・年齢によって決められており、男性60歳以上は30キロメートル以上、女性16歳~59歳は40キロメートル以上です。一番距離が長いのは男性の19歳~49歳で、なんと1日で約50キロメートル歩く必要があります」(大木さん)

コースにはチェックポイントがいくつか設けられており、スタッフが参加者のチェックポイントカードに穴あけパンチでチェックを入れます。その日のチェックポイントを全てクリアし、ゴールに辿り着いたら「完歩」ということになるそうです。

同大会の正式名称は「国際フォーデーズマーチ」といい、その名の通り「4days(4日間)」にわたっておこなわれます。毎年7月の第3週に開催され、4日間かけて長距離を歩くというハードレースにも関わらず非常に人気が高く、参加権は抽選によって得ねばなりません。「抽選は毎年3月に行われます。前年の大会でリタイアせず完歩できた人は、その年の大会に優先的に参加できます。かつては日本人参加者も250人ほどは参加していたそうですが、抽選方式になってからは減少傾向にあると聞いています」と、大木さん。

完歩できなかった参加者は「脱落」となり、その時点で翌日の参加は不可という厳しいルール。2019年の大会では4万4702人の参加があり、3467人が脱落したそうです。最終日の4日目の脱落者は意外にも少なく、2日目でのリタイヤが一番多いのだとか。「一緒に参加した職員はあまり運動しないタイプだったので、ウォーキング練習をし日本の大会に出場するなどして参加前に身体を慣らしていましたね。私は普段からランニングをしているので運動には慣れていたんですが、それでも1日目が終わったときには筋肉痛になりました」と振り返ります。

オランダの首都・アムステルダムから車で1時間半ほど、国内で最も古い都市のひとつとされるナイメーヘン市を中心に開催される同大会。誕生のきっかけは何なだったのでしょうか? 大木さんによると、「そもそもは軍隊の行軍訓練がきっかけで、1909年よりスタートしました。当初は訓練から派生したものですが、レジャーの流行や健康ブームにより大規模な大会へ発展していきました。現在ではオランダの定番行事となり、2016年には第100回大会を迎えました」とのこと。

さて、オランダといえば平均身長184cmという長身大国。レースにも影響はあるのでしょうか。「とにかくオランダ人は身長が高く歩幅が広い。そのペースについていくために、疲れてしまうこともありました。トイレもオランダ人基準に作られているので、便座の位置が高めでしたね」と大木さん。スポンサー企業やコース付近の一般家庭からは水やジュース、アイスなどの差し入れもあり、フリーハグや暑さ対策のため水をかけるといった心温まる応援もおこなわれます。沿道からの声援やハイタッチ、なんと家から持ち出したソファに座って応援する人もいたとか。

同大会の開催期間中は約100万人がナイメーヘン市を訪れます。歩く距離の長さゆえ「ピリピリムードが漂っていそう.....」というイメージですが、応援する人々の盛り上がりはひとしおです。スタート地点では前日から飲み明かしたギャラリーが盛り上がり、コースの各所で生演奏やDJによる音楽ブースが設置され、まさにお祭り気分。

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実は、フォーデーズマーチをきっかけに、日本でも「日本スリーデーマーチ」がおこなわれています。1978年、群馬県新町の「歩く会」のメンバーがナイメーヘンの大会に参加し、あまりの素晴らしさに感銘を受けたことからスタートしたこの大会。現在は埼玉県の東松山市に会場を移し、フォーデーズマーチに次ぐ規模の大会になっているのだとか。

そんな縁もあり、ナイメーヘン市と東松山市は1996年に姉妹都市提携調印を行いました。それ以来、2つの都市はウォーキングを通じた交流を続けています。コロナ禍で一時は途絶えていた日本スリーデーマーチも復活し、2024年には第47回を迎えます。大会は6つの距離コース(50・40・30・20・10・5キロメートル)の中からコースを選んで3日間歩くというもの。自分の体力に合ったコースを選べるので、ウォーキング大会初心者でも参加しやすいかもしれませんね。

(取材・文=つちだ四郎)

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