研究炉、運転再開へ 原子力機構 デブリ処理支援 茨城・東海

全面改造した定常臨界実験装置(STACY)の炉心タンクと上部機器=東海村白方(原子力科学研究所提供)

日本原子力研究開発機構(原子力機構)原子力科学研究所(茨城県東海村白方)は8日、定常臨界実験装置「STACY」が8月、約13年8カ月ぶりに運転を再開すると発表した。全面的に改造し、東京電力福島第1原発で発生した溶融核燃料(デブリ)を安全に取り出すための研究や技術開発のデータを収集。国や東電が進める廃炉を側面から支援する。

STACYは出力200ワットで臨界実験ができる研究炉。高さ約1.9メートル、直径約1.8メートルの寸胴型の炉心タンク内に棒状のウラン燃料を複数入れ、多様な炉心を構成できる。減速材として利用する水の量で出力の調整が可能。低出力のため、炉心冷却の必要はない。

原子力機構は2017年に炉心構造の変更に着手。既に完成し、使用前検査も月内に終了する予定だ。運転再開は当初、23年1月の予定だったが、炉心に供給する水をためるタンクの部材が発注と異なるトラブルがあり、延期されていた。

運転再開後は、福島原発事故で発生したデブリを模擬した研究を計画する。デブリは、ウランに鉄やコンクリートが複雑に混ざり合い、取り出す際に再臨界を起こす可能性がある。研究では事前の計算や解析にSTACYを用いた実験結果を照合し、デブリの臨界量や臨界条件などを確認。安全に取り出す手法の確立を目指す。

従来のSTACYは1995年2月に初臨界。核燃料サイクル施設の燃料を安全に取り扱うためのデータを収集した。99年に東海村で発生したJCO臨界事故では現場の状況を想定した模擬実験を行い、事故の収束や調査に役立てた。

2010年11月に当初のデータ収集を終え、その後の福島原発事故を受けて炉心構造の変更を申請。原子力規制委員会は18年1月、新規制基準の適合審査に合格の判断を示し、県も19年4月、原子力安全協定に基づき変更を事前了解した。

福島第1原発のデブリは炉心溶融を起こした1~3号機で計880トンとも推計される。各号機で形状や堆積範囲は異なり、性質や状態など未解明な点も多い。こうした状況を受け、改造された研究炉は幅広い条件下で実験が行えるように設計されている。

原子力機構はSTACYの研究により、デブリの安全な管理や処理にもつながることを期待する。「福島の廃炉の推進に向けて貢献していきたい」としている。

© 株式会社茨城新聞社