『海のはじまり』夏の“告白”に予想外の反応を見せた弥生の過去 有村架純が“心の強さ”体現

人生において、大切な人が悩みを抱えている場面に遭遇することは少なくない。そんな時、私たちはどこまでその人に寄り添い、支えることができるのだろうか。言葉で励ますことができる範囲と、そうでない範囲。そして、辛いことや苦しいこと、それでも大切なことを自分が一緒になって背負ってあげられるキャパシティはあるのだろうか。そんなことを考えさせられた月9ドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系)第2話。

水季(古川琴音)の葬儀で、夏は衝撃的な事実を知らされた。水季の母・朱音(大竹しのぶ)から、幼い海(泉谷星奈)が実は自分の娘だと告げられたのだ。その現実を受け止めきれないまま、夏のアパートに思いがけない訪問者が現れた。海が一人で夏のもとを訪れたのだ。驚く夏に、海は純粋な眼差しで問いかける。

「夏くんのパパ、いつ始まるの?」

この質問に夏は言葉を失う。突然の状況に戸惑いながらも、夏は海を安全に家に帰すことを第一に考え、朱音に連絡を取った。落ち着きのない海が部屋中を飛び回る中、夏の携帯が鳴る。恋人の弥生(有村架純)からだった。弥生は予想外の来客に一瞬驚いたものの、すぐに温かい笑顔で海に接し、朱音が迎えに来るまでの間、遊び相手になってくれることに。

海が帰った後、静まり返ったアパートで、避けられない会話が始まった。弥生の問いかけに、夏は全てを正直に打ち明ける。海が自分の娘であること、そしてその事実を水季の葬儀で初めて知ったということを。

夏は言葉を選びながらも、水季と別れたばかりの当時の後悔を吐露する。夏の姿勢からは、突然父親になったという現実に戸惑いながらも、過去の自分の行動と向き合おうとする思いが垣間見えた。どちらかといえば予想外だったのは、弥生の反応だ。怒ったり泣いたりするのではなく、冷静に事実を受け止め、理解しようと努めていたその姿から、弥生の“心の強さ”を見た気がした。もちろんそれは「夏を困らせないように」と、弥生が彼の前で繕ったものなのかもしれない。生方美久の繊細な筆致で、その本心はこれから描かれていくのだろう。

今まで通り朱音と暮らすのか、それとも夏との新しい生活を始めるのか。海の未来の選択肢を探る中で、弥生が発した「もし月岡くんがお父さんやるってなったら、私がお母さんやれたりするのかな」という言葉は、夏にとって大きな支えとなったはずだ。

そして弥生の冷静な反応の背景には、実は彼女自身の経験が影響しているのかもしれないことも明らかになる。弥生も過去に妊娠中絶を経験していたのだ。この事実が、海の存在に対する彼女の理解や共感を深めている可能性もあるのだろう。第2話時点では、直接的な因果関係は不明だが、自身の経験が、現在の状況への受け止め方に何らかの影響を与えているのかもしれない。

第2話のエピソードでは、主要キャラクターたちの物語に加えて、サブキャラクターたちの存在感も増している。夏の弟・大和(木戸大聖)との掛け合いや、ジュニアグループ「少年忍者」の川﨑皇輝演じる、海沿いの街にある図書館で働く若手司書・前田俊己も登場。川﨑にとっては同局の連続ドラマ初出演であり、今作で月9デビューを飾ることとなった。

村瀬健プロデューサーは、川﨑の熱心な姿勢を評価し、「撮影が始まってからは、自分の出番がないときでも常に現場にいて、目黒さんや池松壮亮さんの芝居を真剣に見つめています」とコメント。前田は津野晴明(池松壮亮)の同僚であり、亡き水季も同じ職場で働いていた。先輩俳優との共演を通じて、川﨑がどのような成長を見せるか、今後の展開が楽しみだ。

そして今回、海の心情を象徴するかのような重要なアイテムとして、絵本『くまとやまねこ』が登場する。この物語は、最愛の友だちであることりを亡くしたくまが、やまねことの出会いを通じて新しい一歩を踏み出す勇気を描いている。大切な存在を失った後の悲しみや戸惑い、そして希望の芽生えまでを繊細に表現したこの本を、海が大切にしている理由は想像に難くない。

母を亡くした海の心情が、この絵本のくまの姿と重なり合う。それはまた、水季の死と突然向き合うことになった夏の心境とも響き合うものがあるだろう。そんな中で、海が発した「ママと2人の絵を書いちゃった。夏くんと3人の絵がよかった」という言葉を思い返すと、胸が締め付けられる思いがする。失われた家族の形と、新たに形成されつつある関係性。その間で揺れ動く幼い心を、この絵本の存在が鮮明に表現しているとも言える。そして、そんな複雑な状況に重なるかのように、夏は朱音から水季の遺言とも言える言葉を受け取るのだった。

「海に選ばせてあげて。後ろから見守ってあげてほしいって」

次回以降、弥生と夏が海を2人で育てることについて、物語がより深く掘り下げられていくことが予想される。しかし、その道のりは平坦ではないのだろう。夏と弥生にとって、突然の親役は大きな挑戦となる。特に弥生には、血のつながりのない自分が、母親である水季の代わりになれるのかという不安や自問自答が付きまとうのかもしれない。また、海にとっても、母親を失った悲しみを抱えながら、新しい環境に馴染んでいく過程は、きっと様々な感情の起伏を伴うものとなるはずだ。失われたものへの哀しみと新たな絆の狭間で、海の純粋な瞳には何が映るのだろうか。

(文=すなくじら)

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