認知症の人がイライラがおさまらず、怒りたくなくても怒ってしまう「怒りスイッチ」が入る世界とは?【認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方】

8:怒りたくなくてもイライラし、急に「怒りスイッチ」が入る世界

○エピソード

夫は、昔から少し怒りっぽいところはありましたが、認知症になってしばらくしてから、何かの拍子に急に怒り出すようになりました。最初はちょっとイライラする程度ですが、徐々に怒りが増すようで、おさめるのに苦労します。

【あるある行動】最近、急にものすごく怒ることがある

人の脳内には海馬の隣に「偏桃体」という「感情のスイッチ」があります。その部分が損傷を受けると、感情のコントロールがうまくできなくなることがあります。

認知症の人は、日々、「うまくいかない」「他の人からとがめられる」「何となく変だ……」などと感じ、大きなストレスを抱えています。その上、そのことをうまく伝えらえれず、さらにストレスが増大しがちです。

脳内の変化に加えて、こうしたストレスが怒りのスイッチをより強く、急に作動させてしまうようです。

しかし、「怒り」の前には、必ず何らかの「きっかけ」があります。認知症があると、周囲の環境(音や光)や人など、様々な刺激に対してとても敏感になるため、それが感情のスイッチを急に作動させてしまうとも考えられています。周りの人は、どんなきっかけで本人の「怒りスイッチ」が入ったのか、直前の様子をよく見ておくことが大切です。

一方で、本人は怒りたくなくても、誰かに操られるように怒りを止められない状態になってしまうことがあります。こうした「自分で止められない感情のあふれ」は、脳血管性認知症の方に多いといわれています。

○もしあなたがこの世界にいたら?

自分の気分を自分でコントロールできず、喜怒哀楽の感情がジェットコースターのように上下したら、とてもしんどいのではないでしょうか?周りに迷惑をかけていると、申し訳なくなりませんか?

【出典】『認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方』著:山川淳司 椎名淳一 加藤史子

【書誌情報】
『認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方』
著:山川淳司 椎名淳一 加藤史子

認知症は、理解しにくい言動を引き起こす脳の病気です。家族が「どう言葉をかけたらいいんだろう」「どう接したらいいのかな」「とてもつらい」と感じることが多いでしょう。「認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方」では、介護現場の専門家が日々の接し方や対応のヒントを提供し、プロの視点と方法で、家庭での介護が少しでもラクになるように、ご本人とともにかけがえのない日々を過ごしてほしいという願いが込められています。「認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方」を活用して、実践してほしいと思います。今後のためにも読んでおきたいおすすめの一冊です。

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