【社説】小池氏3選の都知事選 政党への不信、直視せねば

 東京都知事選がおととい投開票され、小池百合子氏が3選を果たした。2番手の前安芸高田市長の石丸伸二氏、前参院議員の蓮舫氏らに大差をつけた。2期8年の実績を引っ提げた現職の強みが表れたといえよう。

 少子高齢化や首都直下地震への備えをはじめ難題を背負う都政を、引き続き任された責任は重い。いわば地方の衰退と引き換えに、東京への人口の一極集中は進んできた。都のみならず日本全体の将来を左右するとの視点を持ち、対策を徹底すべきだ。

 次期衆院選をにらみ、事実上の与野党対決としても注目された。小池氏を自民、公明両党が支援し、蓮舫氏を立憲民主党と共産党が協力して支えた構図である。

 しかし、自民党は党派閥の政治資金パーティー裏金事件での逆風下、表立った応援を控えざるを得なかった。これでは政権党の体をなしていない。一方、立憲民主党にとっては、蓮舫氏が現政権への批判票を取り込めず、3位に沈んだのは想定外だろう。4月の衆院3補欠選挙で全勝した勢いが、そがれた。

 政党の支援を受けず、交流サイト(SNS)を駆使した石丸氏が得票を伸ばした現象は、既成政党への不満を示していよう。歴代の都知事選を動かしてきた無党派層の投票先のトップであり、若い年代の支持も集めた。政治を変えてほしいと望む有権者の受け皿となった形だ。

 与野党とも、深まる政治不信を直視せねばならない。

 とりわけ自民党は責任を自覚しているとは思えない。不戦敗を含めた衆院3補選での全敗に続き、各地の地方選挙でも支援する候補者の敗北が続く。都知事選は候補者の擁立を見送り、集票力のある小池氏を頼ったわけだが、「勝利」とはとても言えまい。

 現に、同時に実施された都議補選は擁立した8選挙区で2勝にとどまった。裏金問題は真相が解明されず、改正した政治資金規正法は抜け穴を残したままだ。にもかかわらず総裁選で「次期衆院選の顔選び」に熱を上げる党内の動きは、改革を求める国民との溝を深めるばかりだ。

 立憲民主党は、他の野党との連携の在り方を議論すべきだろう。都知事選で共産党との協力が突出した枠組みが、一定の無党派層を遠ざけたのは否めない。政策でも、明確な対抗軸を打ち出せなかったのが敗因ではないか。

 次期衆院選で政権交代というなら、現政権とは異なる日本の将来像を明確に示さなければ、有権者の関心を引きつけるのは難しい。

 見過ごせないのは、選挙を軽んじた騒動が相次いだことだ。過去最多の56人が立候補したが、うち24人が同じ政治団体関連の候補者だった。この団体は選挙ポスターの掲示枠を販売し、その枠に無関係の人や風俗店の広告などが大量に張られた。またSNSを使った金稼ぎや、売名を狙った候補者も散見された。

 民主主義の根幹を担う選挙である。まっとうな政策論戦を保つため、与野党にはどう防ぐかの議論を求める。

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