ESAが開発、「BBR」センサー初画像公開–地球表面のエネルギー収支を正確に測定

5月29日に打ち上げられた地球観測衛星「EarthCARE」(和名「はくりゅう」)に搭載された4つあるセンサーの1つ「広帯域放射収支計(Broad-Band Radiometer:BBR)」の初画像(ファーストライト)が欧州宇宙機関(ESA)から公開された。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の第一宇宙技術部門が明らかにした。

EarthCAREは、JAXAESAが協力して開発。BBRはESAが開発を担当したセンサーのうちの1つ。太陽から受け取るエネルギーや地球から放射されるエネルギーの収支を測定する。公開されたファーストライトは、6月18日にスペイン北部からアルジェリアまでの約1300kmにわたる地中海西部の軌道上を撮影したもの。アトラス山脈付近の雷雲を捉えている。

BBRのファーストライト。(左から)前方、真下、後方(出典:ESA)

BBRは、衛星が軌道に沿って移動する方向に3方向(衛星の真下、衛星が進む方向の前方、衛星が進む方向の後方)から同時に大気を観測するという。1つの視野だけでは、エネルギーがどの方向に向かっているのかを捉えられないが、複数の角度から観察することで大気圏上端でみられるエネルギーの方向分布が得られ、より詳細なエネルギーの動体を知ることができるとしている。

BBRのデータと、日本が開発した「雲プロファイリングレーダー(Cloud Profiling Radar:CPR)」を含む、EarthCAREに搭載された、ほかにある3つのセンサーのデータと組み合わせて比較することで、雲のほかに大気中に存在するホコリやチリなどの微粒子である「エアロゾル」、放射エネルギーがどのように相互に作用しているのか、理解が加速することが期待されていると説明する(CPRのファーストライトはすでに公開されている)。

BBRの観測概念図(出典:ESA / ATG medialab)

地球の気候は、地球が太陽から受け取るエネルギーと地球から宇宙に放出されるエネルギーのバランス(放射収支)で決まると考えられている。大気中の雲やエアロゾルは、太陽からのエネルギーをはね返したり、地球からのエネルギーが宇宙に逃げていくのを防いだりする役割を果たしていて、地球の安定して気温を維持するために不可欠なものとされている。

しかし、雲やエアロゾルの効果がどれくらい作用するのか、これらがどのように気候変動に影響しているのかなど定量的には解明されていないのが現状という。

BBRで、太陽から入ってくるエネルギーがどれだけ宇宙に反射されているのか、同時に、どれだけのエネルギーが地球表面から放出されているのかを正確に測定できるようになると期待されている。

公開されたファーストライトは、BBRが測定を開始してからわずか数時間後という6月18日に撮影。カラーマップは、エネルギーがどれだけ宇宙に反射されるかを示す「放射輝度」。白く明るい雲は太陽光を多く反射していることを示している。BBRの3つの異なる視野角で、わずかに異なる位置から同じ雲を捉えることで、1つの視野からでは分からないエネルギーの方向を知ることができるとしている。

BBRのファーストライト(広域、出典:ESA)

関連情報
JAXA発表
EarthCARE/CPR特設サイト

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