狭くてくつろげない「10畳程度のリビング・ダイニング」を快適に…模様替えのプロが教える〈家具選び〉の極意

(※写真はイメージです/PIXTA)

物件を決めたあと、悩みがちな家具の位置。なるべく快適な空間を作りたくても、都心の住宅ではスペースが広くなく、困っている人も多いのではないでしょうか。こうした「狭くて使い勝手の悪いLDK」の解決策について、『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』(彩図社)より、一級建築士で模様替えアドバイザーのしかまのりこ氏が伝授します。

狭くて使い勝手の悪いLDKは「引き算インテリア」で解決

多くのご家庭では、リビングにはソファセットが、ダイニングにはダイニングセットが置かれています。

20畳以上あるような広いLDKならば、それでも問題ないかもしれません。しかし、都心の狭小住宅によくあるような、10畳程度のLDKの場合、実際に家具が置けるスペースは、動線を除いた狭い空間となってしまいます。

ここにリビングセットとダイニングセットの両方を詰め込んでしまうために、狭くて使い勝手が悪いLDKが誕生してしまうのです。

それでは、広くはないリビング・ダイニングの場合、どのような家具を選べば、快適な部屋になるのでしょうか?

「リビング・ダイニング」の使い方は多様化している

本来、リビングの役割はソファやテレビを置いてくつろぐことです。またダイニングの役割は料理をおいしく楽しくいただくことです。しかし、最近ではリビングで子供が勉強したり、ダイニングテーブルでお母さんが仕事をしたりと、リビング・ダイニングの使い方は多様化しています。

そのため、「ダイニング=お食事をするダイニングテーブル」「リビング=くつろぐソファ」と決めつけるのではなく、リビングやダイニングではどのように過ごしたいかを考え、その使用目的に合った家具を置くことが大切になります。

そして、狭い部屋では、「引き算インテリア」を行ないましょう。引き算インテリアとは、機能が重複する家具を処分し、最小限に整えることです。

例えば、ダイニングには、ダイニングテーブルとチェア、リビングにもリビングテーブルとソファをそれぞれ置かないで、1台2役の機能を持つ「ダイニングソファセット」を置くなどの方法があります。必要最小限の家具にすることで、狭い部屋を広く、動きやすくすることができます。

狭いリビング・ダイニングを動きやすく広く見せるための「引き算インテリア」について、解決例で、詳しく見ていきましょう。

【事例】都心マンション住人「LDKが動きにくく、くつろげない」

[図表1]の部屋は都心マンションのLDKです。「ソファとダイニングテーブルを置いていますが、動きにくく、くつろぐことができません」、というお悩みでした。

[図表1]変更前のレイアウト① 出典:『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』(彩図社)より抜粋

間取り図に記載されているリビング・ダイニングの広さは約12畳です。ここで、動線の位置を確認し、さらに部屋をリビング空間・ダイニング空間と空間分けをしてみました。

[図表2]変更前の動線スペース 出典:『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』(彩図社)より抜粋

そうすると、[図表2]のように矢印で示した動線スペースは6畳ほどあることが分かり、その動線などを除いた、実際に家具が置ける広さは、ダイニング2畳とリビング4畳のわずか6畳程度になることが分かりました。

この6畳ほどのスペースに、ダイニングテーブル、ダイニングチェア、ソファ、リビングテーブルと、多くの家具を置いたため、狭く動きづらい部屋になってしまったのです。

「引き算インテリア」でテーブルを1つに…食事だけでなく、作業も広々

そこでリビング・ダイニングで「引き算インテリア」をしてみました[図表3]。75センチ角のダイニングテーブルですが、食事をするにも、仕事などの作業をするにも小さすぎるため、幅120センチ×奥行80センチのダイニングテーブルに変更しました。

そしてリビングテーブルは、その機能を新しいダイニングテーブルで兼用させるため、「引き算インテリア」で処分いたしました。またソファは、幅140センチと、夫婦2人でくつろぐには小さいサイズでしたので処分しました。そして代わりに、コの字型のダイニングソファを置きました。

ダイニングテーブルも大きいため、食事だけでなく、勉強や仕事といった作業も楽にできます。またダイニングソファも、幅220センチと広くなり、ゆったりとくつろいで座ることができるようになりました。

[図表3]変更後のレイアウト 出典:『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』(彩図社)より抜粋 [図表4]変更後の動線スペース 出典:『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』(彩図社)より抜粋

テーブルとソファの理想の高さは、「身長×1/6」で計算できる

このダイニングソファとダイニングテーブルですが、必ずしもセットで購入する必要はありません。しかし、大切なことは、ダイニングテーブルの高さとダイニングソファの座面の高さの関係を確認することです。

ダイニングソファの理想的な座面の高さは、身長×1/4で計算できます。そして、ダイニングテーブルの天板の高さと、ダイニングソファの座面の高さの差を、差尺といいますが、この差尺を求める計算式は、身長×1/6で表されます。この差尺にダイニングソファの座面の高さを加えたものが、理想的なダイニングテーブル天板の高さになります。

つまり身長165センチの人の場合、ダイニングソファは座面の高さが41センチ前後でダイニングテーブルの高さが68センチ前後のものを選ぶことが理想的な目安になります。

[図表5]ダイニングソファとテーブルの理想の高さ(身長165cmの場合) 出典:『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』(彩図社)より抜粋

また家族で身長差がある場合は、背の低い人(子供を除く)に合わせる方が上手くいきます。なぜなら、食事の際にはどんぶりなどの背の高い食器を使うことも多く、テーブルが高いよりも低い方が、食事がしやすいからです。

そのほか、座面が柔らかいダイニングソファを選ぶと、座ったときに沈み込みが大きくなります。食事時の姿勢が不安定にならないように、沈み込みの少ない硬いものをお勧めいたします。

また成長が著しいお子様がいる場合は、キッズチェアなど、高さの変えられる椅子を置き、身長の変化に応じて、適宜椅子の高さを変えてあげましょう。

家具の数も減ったので、リビング・ダイニングが動きやすくなり、ストレスフリーな空間になりましたね。狭い部屋では、「引き算インテリア」で、必要最小限の家具にすることが大切です。

しかま のりこ
COLLINO一級建築士事務所
一級建築士/模様替えアドバイザー

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