(一社)日本木造建築海外推進協会、初の海外推進セミナーを都内で開催

第1回日本木造建築海外推進セミナーを6月18日、都内で開催した。今回はベトナムでの木造建築プロジェクトや北インド、ネパールでの住宅事情を紹介。今後、年4回の頻度でセミナーを開催していく。

日本の木造技術や木材利用技術の海外普及、企業と連携した海外市場の創出や事業拡大、木造建築関連商品の輸出拡大などを推進する同協会は、2023年に設立。製材事業者、集成材メーカー、木材防腐防蟻処理剤メーカー、金物メーカー、建材流通事業者、プレカット工場、ビルダーなど、川上から川下の事業者までが会員となっている。2023年11月に一般社団法人として新たなスタートをきり、このほど初めてのセミナーを開催した。第1部では、同協会理事のライフデザイン・カバヤ エグゼクティブマネージャーの藤本和典氏が「大工・工務店が海外で働くことができる仕組みづくり」と題し、同社のベトナムでの官民連携のプロジェクトを説明。第2部では、同じく協会理事の都築木材松本支店 支店長 園田真吾氏が「北インド等における住宅の作り方」と題し、北インドおよびネパールの住宅事情を紹介した。

ライフデザイン・カバヤ エグゼクティブマネージャーの藤本和典氏

ベトナムの住宅はコンクリート造にレンガを用いることがほとんどで、木造住宅は少ない状況。そんな中、ライフデザイン・カバヤ社はベトナムに注目し、数年前から外務省・JETROなどのパイプを生かしてベトナム建設科学技術庁(IBST)の幹部と関係を構築。現在、政府と協力してベトナム建設市場への木造普及事業を進めている。藤本氏はそうしたこれまでの活動や、今後の見通しを報告した。19年からベトナム人社員大工の育成・職業訓練事業を開始。22年には、ハノイ市内にCLTを用いた木造3階建ての自社実験棟を建築し、高温多湿地での木材及びCLTの耐久性を検証中。昨年、ハノイ市内のIBSTの研究所敷地内にモデルハウスとして木造2階建て約214㎡規模の建物を建築するなど、プロジェクトは順調に進んでいるが、まだ「道半ば」と藤本氏。現在は、建材も技術も日本のものを現地に持ち込み建築を進めているが、今後はベトナムで建材に活用できる人工林を作るなど、官民で協力しながら現地木造産業の強化を図る構えだ。藤本氏は「これからカギになるのは、現地でいかに循環型を作っていくかということ。必ず設備投資、人材育成も必要になってくる。とにかく、様々な方の力を借りたい」と協力を求めた。

都築木材松本支店支店長の園田真吾氏

第2部の講師を務めた都築木材園田氏は、木材の海外貿易を行う同社の約10年前からの市場調査の一環で、インド、ネパールの住宅事情を調べ始めたと説明。2国ともベトナムと同様に木造住宅は希少で、現在も主にRCフレームに組積造の新築住宅が建てられているという。木造産業はない状況だが、中国企業が進出し、RCフレームに木壁を組み入れたバンガローなどを建設している例がある。園田氏は「既に中国企業が手がけている木造バンガローにしても、日本の技術であれば1棟ずつ違うコンセプトで作ることも可能。きめ細かな対応をして日本の技術を生かせれば、既に始まっているマーケットの中に仲間として入れてもらえるかもしれない。日本の木造建築技術が貢献できる場所がある」と展望を語った。また、インドのような木造産業がない国に対して、2×4工法は適しているとも言及。「何もないアメリカの中で生まれたという原点に返れば、世界で受け入れられやすい工法。2×4工法と軸組構法の両方を理解して、評価してもらうというのがいいアプローチだと思う」と語った。

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